高度成長期、そしてバブル期と、不動産価格は全国で上昇した。しかし、バブルが崩壊し、資産の価値は大きく損なった。ところが現在、一部地域ではバブル期をしのぐまで資産価値を高めている。特に注目を集めているのが、首都圏での中古マンション投資だ。今回はその人気の秘密を探ろう。

不動産市況のマクロとミクロ

タワーマンション投資,購入前
(画像=KPG_Payless/Shutterstock.com)

不動産投資は不動産の市況や経済環境に大きく左右される。不動産に関しては、マクロ経済やミクロ経済からの観点で、不動産市況を捉えることが必須で、首都圏で中古マンション投資が注目を集める理由をひも解くカギともなる。

不動産市況を、国土交通省の「地価公示」のデータを基に概観すると、バブル期に全国の地価は大きく上昇したが、バブルの崩壊で下落し、2005年前後に底入れした。その後、リーマン・ショックや東日本大震災での落ち込みはあるものの徐々に上昇し、2014年以降は上昇傾向にある。これがマクロ経済での概観だ。

一方、ミクロ経済では、さらに地域を絞るなどして細かく分析していく。東京の商業地の地価は大きく上昇しているが、地方の商業地域は下落傾向を示しているところが多く、良くても現状維持だ。なお、利便性が高い住宅地は、2013年前後を境に上昇している。不動産市況は、平均値で評価すると、方向性を誤る可能性が大きな時代となった。マクロとミクロを適正に組み合わせて、評価していくことが大切だ。

不動産は優勝劣敗か?

現状の不動産市況は二極化している。需要サイドに資産価値が高まると感じさせる地域では、価格が上昇しており、そうでない地域では、地価の上昇は見られないという「優勝劣敗」の様相だ。

土地の価値は周辺の環境に大きく左右される。駅近、アクセスの良さ、商業施設・公共施設が近いなど利便性の高い地域は、資産価値が大きくなる。結果として、人が集まって需要が増加し、さらに利便性を高める施設が集積するという、プラスのスパイラルが起きる。また、高齢化の進展に伴い、生活上の負荷低減を目的に、利便性の高い地域の人気が高まっている。加えて「コンパクトシティ」という国の構想も、このスパイラルを後押しし、人はますます利便性の高い地域を求めるだろう。

東京オリンピックと新築マンション

前回のオリンピックから56年後の2020年、再び東京でオリンピックが開催される。関連施設のために、豊洲地区では新築や既存の施設の建て替えが行われている。不動産というより、建設費や建設キャパシティーへの影響が大きい。人手不足と建設資材の高騰で、新築物件の建設費は上昇しており、マンション投資でいえば、新築物件の投資は逆風ということになる。また、住居用という実需で見ても、一般的に購入可能な金額の限界に達していると考えられる。これも中古マンションが人気を集める理由のひとつだろう。

土地に関連する事項として、訪日客をターゲットとしたホテル建設は注目だ。訪日外国人旅行者数について、国はオリンピック開催年である2020年に4,000万人、2030年に6,000万人という野心的な計画を立てている。日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客数」によると、2013年以降、急激に訪日客が増加しており、2018年実績で31.2百万人。目標値が達成できるかどうかは微妙だが、相当数の外国人観光客が見込まれている。

ホテル用地は利便性の高い場所が選ばれる。マンション用地と競合する可能性も高いので、ホテルと新築マンションで、用地の取り合いになるかもしれない。これも新築マンションの分譲価格が高騰とする一因だろう。

新築と中古の価格差と中古マンションのメリット

不動産投資物件を選択するうえで、大きな要素は、やはり「価格」だろう。投資金額(購入価額)で収益性は左右される。より価格メリットのある物件を求めたいところだ。

ここ数年の首都圏における新築マンションと中古マンションの価格(単価)の推移をみると、新築が5,000万円代、中古が3,000万円代と、中古マンションは、新築の約60%前後で推移している。中古マンションはすでに建築されているので、立地などの利便性について、物件の評価も定まっている。「利便性の高い場所にある物件が、比較的安価で入手可能」ということが、中古マンションのメリットだろう。好立地の物件を手頃な価格で入手することは、不動産投資における勝利の方程式だ。

今回は不動産を取り巻く環境と、首都圏における新築と中古マンションの価格を比較してみた。これらの要因を分析すると、首都圏で不動産投資を行うには、立地が良く、利便性の高い中古マンションが成功につながるカギを握っている。実際に物件を選択する場合には、ミクロ経済の分析が必要になることを忘れないようにしよう。