前週末については、EUサミット2日目ということで、何かしらの声明があるかと期待されましたが、ブレグジット関連の検討は1日目だけで終了し、既にメイ英首相も帰国したとのことで、目新しい材料は出てきませんでした。代わりに、海外時間の主役となったのがトルコリラです。トルコ中銀が金融政策の突然の引き締め(1週間レポオークションの停止)に動いたことで、同国の株式相場が急落したことが主要な材料ですが、米大手銀が出したレポートによりトルコリラが急落したとも伝えられており、意図的なトルコリラ売りであれば、本日はまずはリラの買い戻しが主導しそうです。因みに、トルコ当局は、トルコの銀行の評判を傷つけたとある米大手銀を非難し、司法市場評議会(CMB)も同様に非難しています。また、BDDK(銀行調整監視機構)も、複数の銀行が顧客に外貨を買わせた疑いで調査を始めたとも報道されています。

ユーロについては、独・3月製造業/サービス業PMI、ユーロ圏・3月製造業/サービス業PMIが悪化したことを受け、欧州の先行き不透明感が強まり、ユーロ売りが加速しました。また、独・10年債利回りが2016年10月以来となるマイナス金利を付けたことも相場の重しとなりました。ユーロ円では一時123.828円、ユーロドルでは1.12738ドルまで下値を拡大しており、今後はリスクオフマーケットではユーロ売りが強まるかもしれません。

ドル円については、米・10年債利回りが2.416%まで低下したこともあり、一時109.745円まで下落しました。また、米国の2019会計年度(2018年10月-2019年9月)の財政赤字が1兆ドルを超える可能性が警戒されています。さらには、今週28-29日に北京で米中通商協議が行われると報じられているものの、米政府当局者が中国との通商協議は早期合意の可能性は高くないと述べていることもあり、ドル円については、戻り売り基調が強まる地合いになりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今週については、ポンドのブレグジットの行方がまず注目されますが、エマージング通貨にとっても非常に重要な週になります。ます、南ランドですが、29日に格付け会社ムーディーズが南ア債の格付けを発表します。ムーディーズは、3大格付け会社の中で唯一南ア債をジャンク扱いにしておらず、格付けを変更するのかだけではなく、今後の見通しに変更があるかにも注目が集まります。3大格付け会社が全てジャンク級の扱い(トリプルジャンク)になるようであれば、南アランドは急落する可能性があります。国営電力会社エスコムが発表した計画停電の再開が、南ア景気回復の足枷になるとの見方もあり、南アの格付けについては上値抑制材料になりそうです。

31日には、トルコの統一地方選挙が控えています。この選挙では三大都市(アンカラ、イスタンブール、イズミル)の市長、各県知事が一斉に選ばれます。今回の統一地方選では、景気悪化に加えて事実上の連立パートナーであった民族主義者行動党(MHP)の提携解消があるため、AKPは獲得数を減少する方向です。よって、AKPは獲得数を減らすものの、大敗はしないという展開がメインシナリオですが、このメインシナリオが崩れるようであれば、再び引き締め政策でなく緩和政策に舵を切る可能性があり、その場合はトルコリラの下落が懸念されます。

英国のEU離脱案については、トゥスクEU大統領は会見で全ての選択肢が英国側には残っているとの発言をしましたが、これにより英国側には、Brexit撤回、再びBrexitを国民投票で問う、メイ首相案、メイ首相案+関税同盟、メイ首相案+関税同盟+単一市場アクセス、標準的FTA、合意なき離脱、と7つの選択肢が残されていることになります。大きな進捗なく、再び先行き不透明感が強まる場合はポンド売り、「合意なき離脱」以外の選択肢を決定すればポンド買いという流れになりそうです。

ポンドの流れがしっかりするまでは、一旦ドル円のレンジ取引

145.30円でのポンド円ロング、144.80円下抜けで損切り、手仕舞です。週末では、ブレグジット関連について何かしらの発言があるかと思いましたが、既にメイ英首相が帰国ということもあり、拍子抜けの動きとなりました。上値も限定的となり、ポジション調整主体の動きで損切りです。今週は、株価主導のドル円、ブレグジット関連のポンド、そしてエマージング通貨の動きが注目ですが、まずはドル円に着手したいと思います。110円台でのドル円ショートを想定していたため、110.10円にて売り、利食いについては109.30円台、損きりについては110.40円上抜けを想定します。

海外時間からの流れ

英国については、一部英紙が「閣僚が25日にもメイ英首相の退任を要求し、リディントン内閣府担当相に首相の職務を代行させる案を検討している」などと報じるなど、依然として混沌としていますが、まずは英国議会の採決待ちという状況に変わりはなさそうです。3/29の期限が最低でも4/12に先延ばしになったことでこれまでのような緊迫した状況ではないですが、より選択肢は狭まってきており、状況によってはポンドの急落、急騰の場面がありそうです。

今日の予定

本日は、独・3月IFO景況指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、エバンス・シカゴ連銀総裁、原田・日銀審議委員、コスタ・ポルトガル中銀総裁、クーレ・ECB専務理事、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁などの講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。