投資用不動産で資産運用を行う場合、不動産の所有形態は、大別して2つある。建物全体を購入する「一棟買い」と一室を購入する「区分買い」だ。個人投資家の間で、しばしば比較されているのが、アパートの「一棟買い」と、マンションの「区分買い」。それでは、両者の間にどのような違いがあるのだろうか。今回はこの2つの所有形態について、メリットとデメリットを挙げてみよう。
物件の管理と修繕のしやすさ
不動産で資産運用を行う場合、比較的大きな負担となるのが「管理」と「修繕」だろう。マンションの場合、マンション管理組合や管理会社がこれらを行ってくれるが、アパートの場合、基本的に、すべてをオーナーが自分で行わなければならない。不動産会社に委託もできるが、アパートではスケールメリットが生かせないため、マンションよりも費用対効果が悪くなり、注意が必要だ。
なお、区分マンションの管理では、「マンション管理規約」が重要な意味を持つ。購入した部屋のリフォームや、近年話題になっている民泊などへの転用は、管理組合や理事会の許可が必要になる可能性があり、オーナーの一存では、思い切った変更が難しいというデメリットがある。もし、民泊などへの転用も考えているなら、購入前に管理組合などに確認することが、トラブル回避の上で重要だ。
建物の構造の違いによる特徴
建物の構造にはいくつかの種類がある。マンションで多く採用されているのはRC造(鉄筋コンクリート造)とSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)だ。これらはアパートで採用されることが多い木造や軽量鉄骨造に比べて、地震や火災などの災害に強く、適切な管理を行えば、半永久的に使用できるというメリットがある。
日本は地震国であり、今後も大きな地震の発生が懸念されている。災害への強さは不動産投資を行う上で重視したいポイントだ。マンション管理業協会「東日本大震災の被災状況について(続報)」によると、2011年に発生した東日本大震災において、多くの木造家屋で倒壊などの被害が生じたが、マンションでは倒壊などの被害は発生せず、8割のマンションは軽微または損傷なしという状況だったそうだ(東北と関東の平均値)。
資金調達の難易度
投資は本来、全額を自己資金で賄えることが理想だろう。不動産投資では多くの場合、金融機関などからアパートローンを受ける必要がある。ところが、2018年に大きなニュースとなった、不動産融資の際に審査資料を改ざんした問題などにより、金融機関の融資姿勢が変化し、以前よりも融資のハードルは高くなっている。契約者の自己資金、勤務先、雇用形態、年収、購入する建物の構造、築年数などによって、融資実行の是非や融資期間、金利条件は左右される。多くのアパートはマンションよりも法定耐用年数が短いので、融資期間が短くなってしまい、月々の融資返済額が大きくなる可能性がある。そうしたことから、場合によっては融資総額を低く抑える必要がある。
立地と集客の違い
不動産投資は一般的に駅前などの利便性の良い土地で行うのが良いとされているが、アパートとマンションの大きな違いとして、立地場所の違いが挙げられる。マンションは駅前の利便性の良い土地に建てられ、アパートは学校や大きな工場などの「職住近接」を意識して建てられることが多い。購入しようとするアパートが、職場や学校などの対外的な環境条件によって、家賃価格や高い稼働率を維持しているのであれば、これらの移転、閉鎖といった変化が起きた場合、その収益性が一気に低下するリスクをはらんでいる。なお、マンションでも、駅から遠くなるほど、家賃や稼働率を維持するのが難しくなるので、できるだけ駅近の物件を選択することが大切だ。
確かに、アパートの一棟買いは、高収益を得られるチャンスがある。ただ、建物の維持管理・修繕に、比較的高いコストがかかる可能性がある。建物構造、築年数によっては、多めに自己資金を用意する必要がある。一棟買いは、ある程度の不動産投資の経験がある人向けの投資用不動産といえるかもしれない。
一方、マンションの区分買いは、法定耐用年数が長いので、融資がおりやすく、少ない自己資金から始められる。維持管理や修繕に関する負担も比較的小さい。不動産投資の経験が浅い場合や、自己資金があまり用意できない場合は、マンションの区分買いから入る方法がいいかもしれない。