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(画像=最強食材の「魚卵」がたっぷり味わえる『熊だ』の黄金いくら丼。画像はフォーリンデブはっしーさんのインスタグラムより)

3、派手さより王道を求める「原点回帰」

昨年までの「インスタ映え」は、色彩が多くてけばけばしい印象があった。最近はその反動がきているという。

「今、インスタの写真は、原点回帰、シンプルイズベストの方向に戻ってきています。例えば、最近流行っているものの1つに『固めプリン』があります。喫茶店で出しているようなクラシカルな固めプリン。その威風堂々とした姿が非常にウケているんです。先日、僕の友人が『固めプリンまとめ』をツイッターで発信したら、24万いいねがつきました。これはグルメでは今までに類を見ない驚異的な数字です。他にはつるんとした卵にトマトソースだけをかけたオムライスとか。色数を絞った、昔ながらのシンプルイズベストの絵がすごく受けるようになってきています。過去に、見た目のインパクトだけを重視したものを食べて失敗したユーザーは、『ちゃんと美味しいものを食べたい』という心理が働くので、昔から慣れ親しんでいて、美味しいことがわかっているものに惹かれるのではないでしょうか」

「インスタ映え」という言葉は同じでも、ユーザーや時代の変化により、そのニュアンスは少しずつ変わってきているようだ。

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(画像=6月9日に投稿された『赤坂津々井』のオムライスは、まさにシンプル・イズ・ベスト。見た目はシンプルなのに6,000いいね超え。画像はフォーリンデブはっしーさんのインスタグラムより)

SNSをきっかけに、店の存在を知ってもらう

「多様化している中でも、より大勢が興味を持ちやすいのは今回あげた3つだと思います。全部やる必要はないので、どれかを押さえるだけでもいいし、組み合わせてもいいんです。最初は写真や動画がきっかけでも、良いお店であれば自然とリピーターが増えて、他のメニューを知ってもらう機会も増えていきます。例えば、銀座の『古川』という洋食店は、ドライカレーにエビフライが刺さっているメニューがすごく有名で、そればっかりが投稿されています。僕もその写真を見て食べに行ったんですけど、ハンバーグやクリームシチューが圧倒的に美味しくて大好きになりました。ご飯に合うクリームシチューの中では僕の中で一番です。ハンバーグの盛り付けもすごくきれいで、これが『TikTok』の動画投稿で5万回再生されたんですよ。ですから、まずお店を知ってもらうための入り口として、SNSグルメを活用すると良いと思います」

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(画像=『銀座 古川』のシチュー。画像はフォーリンデブはっしーさんのインスタグラムより)

また、どんなに写真映えが素晴らしくても、リピーターになるかどうかは店側の接客でも変わるという。

「店員や料理人がぶっきらぼうで、食事が淡々と提供されるような店は、美味しくても疎外感があることってありますよね? お店を出るときに店員さんが『お味どうでしたか』『また来てくださいね』ってにこやかに話しかけてくれる店は、それだけで印象が良くなるのが、人の心情だと思います。デジタルな時代だからこそ、アナログなコミュニケーションの価値が上がってきています。最初のきっかけがSNSでも、店側がお客さんと向き合って関係を作ろうとしているお店は、リピーターも増えていくと思います」

SNSやグルメキーワードは時代によって変わるが、「美味しいものを食べたい」「あたたかいサービスを受けたい」という気持ちはいつの時代も共通しているもの。その気持ちに寄り添うことができれば、店のファンを増やすことができるはずだ。(提供:Foodist Media

執筆者:三原明日香