相続税と聞くと、「お金持ちが払う税金で、庶民の自分たちは関係ない」と思っていないだろうか。実はここ数年、相続税の課税対象となる相続人の数が急増している。その主な原因は、2013年の相続税法改正だ。2015年1月1日より、相続税の基礎控除額が5,000万円から3,000万円に引き下げられ、さらに法定相続人の人数による基礎控除額の加算も、1人当たり1,000万円から600万円へと減額された。

その結果、2017年の相続税の課税は12件に1件の割合まで増加。相続税の税率は10%~55%と所得税より高いため、相続税を上手に節税して、子孫たちにできるだけ多くの財産を引き継がせたいというニーズが高まっている。相続税の節税方法は、生命保険を利用する方法など、さまざまな選択肢があるが、今回は不動産を利用した相続対策を紹介しよう。

どのようなものが相続財産となるのか?

被相続人の財産の調べ方
(画像=PIXTA)

相続財産は、土地、建物、現金、預貯金、有価証券など、金銭に換価できるものすべてが対象だ。その他にも「みなし相続財産」という、計算上、相続財産とされるものもある。主なものとしては、死亡後3年以内に支給が確定する退職手当金、相続開始前3年以内に贈与によって取得した財産などが相続財産とみなされる。これにより、生前贈与により相続財産を減らす「駆け込み贈与」での節税はできなくなる。相続対策は、元気なうちから計画的に進めておくことが大切だ。

不動産投資で節税になる仕組みとは

不動産による相続対策のひとつは、現金や預貯金を土地の購入に使い、相続財産としての評価を、不動産の「相続税路線価」で受けることだ。相続税路線価は、売買の基準となる公示価格の80%程度の金額となるため、現金や預貯金で持っているよりも、相続税額を圧縮できるというわけだ。

この自己所有している土地を「自用地」といい、その自用地にアパートなどを建てて、賃貸に供した場合は「貸家建付地」となり、自用地よりも、さらに評価額を圧縮することができる。近年、郊外の土地に多くのアパートが建てられたのも、この仕組みを見込んでのことだ。郊外アパートは入居率の観点から、懸念されることも多いが、サブリースによる家賃収入と相続税の節税効果、その後の物件売却などを含めた費用対効果を、総合的に判断しない限り、正確な評価は行えないだろう。

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度を利用した節税対策

相続対策のためとはいえ、経験のない投資用不動産の経営に対して、心理的な抵抗を覚える人もいるだろう。そこで、非課税制度を利用した節税対策を検討してみてはどうだろうか。

本制度は、20歳以上の人物が2021年12月31日までに、父母や祖父母などの直系尊属から住宅購入資金などを贈与された場合、一定金額まで非課税となる制度である。現預金の一部が法定相続人に移転するわけだから、相続財産の圧縮効果は変わらずに得ることができる。さらに相続人は「住居費の削減」という、確実なメリットを得ることができる。その際、選ぶ物件は、将来的に賃貸や売却が行いやすい、利便性の良い都内や小規模で買い手が付きやすい物件を選ぶことをお勧めする。

相続税は、もはや資産家だけの税金ではなくなった。相続が発生してからでは、打つ手も限られる。手遅れになる前に、自分の財産を守るため、しっかりと意識して行動することが大切だ。また、金銭的な問題を解決する方法を突き詰めると、結果的に「収入を増やす」もしくは「支出を減らす」の二択に絞られる。

家賃収入で収入を増加させる方法もひとつの選択肢だが、相続した不動産を自己の居住に供して、住居費を削減することも、同じように有効なはずだ。確かに収入増加は約束されない。しかし、支出の削減の効果は確実に得られる。どちらを選ぶかは、あなたが置かれた状況で選択すべきだろう。