前日については、ポンドが全面安になりました。27日にメイ英首相のEU離脱案に代わる選択肢を探す投票を行いましたが、全ての提案が反対多数となったことでポンドは先行き不透明感が強まっています。また、メイ英首相が離脱案が承認されれば辞任する考えを表明したものの、離脱強硬派を説得するには至っていません。完全に手詰まりのなか、本日29日には、3回目のメイ英首相のEU離脱案の採決が行われます。今回の採決では、離脱後の新協定の大枠を定めた政治宣言は今回の投票に含まれませんが、3回目の採決が賛成多数になる見通しは依然として立っていないため、同イベントはポンド売り材料になる可能性があります。
ユーロについては、ドラギECB総裁が27日に「必要なら利上げをさらに遅らせる用意がある」との発言を行ったことで上値が重くなっていますが、EU当局者によると、ドラギECB総裁は前週のEU首脳会議において「金融市場は英国の合意なきEU離脱のリスクをまだ完全には織り込んでおらず、過小評価している」と語っていたと報じられており、基本的にはユーロショートのスタンスには変わりなさそうです。
今後の見通し
英議会のバーコウ議長が、EU離脱協定案の議会投票の要請を受け入れたことを明らかにしましたが、ボリス・ジョンソン前外相はメディアのインタビューに対し、「メイ首相のEU離脱案は終焉した」と発言し、メイ政権に閣外協力している北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)のフォスター党首も「同党の10名の議員はメイ首相のEU離脱協提案に反対する方針」との見解を示しており、メイ首相案が可決される可能性はかなり低いと考えられます。
ドルについては、28-29日の米中通商協議において、米政府当局者が「中国との通商協議は早期合意の可能性は高くない、知的財産権問題で行き詰まっている」と述べ、中国側も米国の要求に難色を示しているため、協議は難航していると報じられています。来週は4月3日からワシントンで米中通商協議が開催されますが、既にクドロー国家経済会議(NEC)委員長が、「数週間あるいは数カ月間にもわたって中国と交渉を続ける用意がある」と述べていることで、話し合いが長期化するとの見方が強まっており、同イベントはドル買いには繋がらない公算です。中国側が米知的財産の取り扱い改善、米企業に対する市場アクセス開放、通商合意の履行メカニズムに関して難色を示していると報じられており、ヘッドラインなどで一時的にドル売りが強まる場面に今後は注意が必要になりそうです。
本日(翌30日早朝予定)は、ムーディーズによる南アフリカの格付けが予定されています。事前予想では、エコノミストの大半が格付け据え置きで見通し安定的になると予想、通しがネガティブに引き落とされる予想もありますが、懸念されている「ジャンク級」にはならないのではないかとの見通しになっています。ただ、事前予想とは違い「ジャンク級」との判断になると、南アランドが急落する可能性がありますので、この点には注意が必要です。
また、3/31にはトルコの地方選挙が控えています。前日には、エルドアン大統領がサプライズ発表を行うとのアナウンスを出しましたが、結果的には「利下げしないと、インフレは収まらない」といった内容であり、影響は限定的となりました。エルドアン大統領のイベントを消化したこともあり、マーケットは地方選の動向にシフトすると思われます。事前情報では、拮抗しているとの報道もあり、エルドアン陣営が地方選挙に負けるとトルコリラ売りに繋がる可能性があるため、月曜早朝のレートにも注意が必要になりそうです。
3回目のメイ英首相のEU離脱案の採決は、ポンド売りイベントと見る
一度は1.3150ドルでのポジションメイク、1.3250ドルでの手仕舞に成功しましたが、今回の1.3150ドルのポンドドルロングは、1.3100ドル下抜けにて損切りです。本日は、ファンダメンタルズ的にはポンド売りになりそうな3回目のメイ英首相のEU離脱案の採決が予定されており、1.3120ドル付近まで反発すようであればポンドドルのショートでの戦略とします。損切りは1.3190ドル上抜け、利食いについては1.3000ドルを下抜けるかどうかを見極めてから考えたいと思います。
海外時間からの流れ
メイ英首相スポークスマンが「北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)はメイ首相のEU離脱案に反対するだろう」と発言しているように、3回目のメイ英首相のEU離脱案の採決には持ち込みましたが、現状では再び否決されるとの見方が圧倒的になっています。否決されることを前提に、ヘッドラインにて「合意なき離脱」の可能性が示唆されるようであれば、ポンド売りが加速する可能性がありそうです。
今日の予定
本日は、独・2月小売売上高指数、独・3月失業率、英・第4四半期GDP(確報値)、米・1月個人所得/個人支出、米・3月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)などの経済指標が予定されています。要人発言としては、クオールズ・FRB副議長などの講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。