シンカー:失業率がなかなか低下しなかったのは、賃金を含めた労働条件が大きく改善してきているため、よりよい条件を求めた労働者の動きが大きくなってきているとみられることが理由だろう。労働者の動きが激しくなれば、職の移行期間などもあり、摩擦的な失業率には上昇圧力がかかることになる。新たに求職を始めた労働者も増加してきた。これらの労働者が順調に新たな職を得るまで、摩擦的な失業率が上昇した状態になっていた。このような動きは、労働市場の改善が止まっていたのではなく、企業の雇用者の獲得競争がかなり激しくなったことを意味すると考える。実際に、2月には就業者が大きく増加し、非労働力人口も大きく減少し、再び労働市場が改善した。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

2月の失業率は2.3%と、1月の2.5%から低下した。

2018年5月以来、このサイクルの最低水準まで再び低下した。

昨年から失業率は2.5%前後で安定していた

企業の人手不足感は深刻で、積極的な採用活動が続いていた。

失業率がなかなか低下しなかったのは、賃金を含めた労働条件が大きく改善してきているため、よりよい条件を求めた労働者の動きが大きくなってきているとみられることが理由だろう。

労働者の動きが激しくなれば、職の移行期間などもあり、摩擦的な失業率には上昇圧力がかかることになる。

新たに求職を始めた労働者も増加してきた。

これらの労働者が順調に新たな職を得るまで、摩擦的な失業率が上昇した状態になっていた。

このような動きは、労働市場の改善が止まっていたのではなく、企業の雇用者の獲得競争がかなり激しくなったことを意味すると考える。

実際に、2月には就業者が大きく増加し、非労働力人口も大きく減少し、再び労働市場が改善した。

2月の有効求人倍率は1.63倍と、1月と変化はなく高水準を維持している。

新年度に向けて、事業を拡大する企業からの求人が更に増加するだろう。

確かに、グローバルな政治・景気・マーケットの不透明感などが企業心理を下押し、雇用環境を悪化させるリスクが懸念させる。

しかし、一度失ってしまった雇用を再獲得・再訓練するには大きなコストがかかるため、企業は雇用調整にはなかなか進まないと考える。

人手不足感が賃金上昇を加速させ、生産性向上の必要性が設備投資を拡大させる形は更に鮮明となっていくと考える。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司