フルローンはハードルが高い

今までの話を踏まえると、資産効率を最も活かせるのはフルローンを組んだ時ということになります。フルローンとは自分の手元資金を使うことなく購入資金すべてをローンで賄っている状況のことを言います。フルローンの場合、自分は全く資金を支出していないわけですから「自分の利益のために他人の資金を利用している」究極の状態と言えます。しかし、フルローンはその分、金融機関もたやすく認めてはくれません。金融機関は持続的な返済が可能かどうか、そして返済が滞った場合に担保物件が融資額を上回る額で売却できるかどうか(つまり担保価値)を厳しくチェックするからです。前者は借主の資力ということになります。年収は重要な要素ですが、その他にも他から借り入れがないか、同一企業での勤続年数、資産状況、返済実績があるかという点等が見られます。「年収がいくら以上であれば組める」ということではなく、個別具体的な話となります。担保価値については、金融機関によっては担保評価を物件価格の5割から9割で行います。つまり、価値のある物件をどれだけ安く購入できるかということで、フルローンへの道が開けてくるのです。仮に購入予定物件で担保評価を下回る価格で購入できないような場合には、共同担保(自分が保有している別の物件を担保に差し出す)という方法もあります。


ローンはコントロールが大切

フルローンのメリットは資産効率を究極の状況に持っていくことができるということですが、一方でデメリットとしてキャッシュフローが忙しくなるということが挙げられます。不動産ミニバブルが起きていた時期には、リーマンショックを発端に、飛ぶ鳥を落とすほどの勢いのあった多くの新興ディベロッパーが倒産しました。これはローン割合を増やし、レバレッジを大きくかけていたため、利益面は大きく見えていたものの、リーマンショックにより資金供給が止まり、キャッシュが回らなくなったためです。空室が数か月続いても返済していくことができる程度の資金は手元に残しておきましょう。ローンはうまく利用すれば効率的に資産を増やしていくことが可能となります。フルローンを組むことばかりを考えるのではなく、まずは自分が心地良いと思うローン割合を見つけ、ローンのなくなった保有物件が増えてきたところでフルローンにチャレンジしてみると良いでしょう。保有物件が増えれば、空室リスクも分散されますので、たとえ当該物件が空室になったとしても他の物件の収入で返済をカバーすることができ、その物件においてはフルローンとなるものの、総資産でみた中でのローン割合は小さなものとなり、ローンリスクも抑えられます。

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