前日については、メイ英首相がこれまでの方針を大幅に修正し、議会の膠着状態からの脱却に向け野党・労働党のコービン党首と協議する意向を示しました。メイ英首相は「合意なき離脱」でも構わないとの方針を定めていたものの、「合意なき離脱」を回避するために、最大野党・労働党と国内の意思を一本化できる離脱条件を練る協議に入る考えを強調しました。このメイ英首相の発言により、マーケットも「合意なき離脱」は回避できるのではないかとの思惑が強まり、ポンド円は145.20円付近から146.40円付近まで、ポンドドルでも1.3040ドル付近から1.3150ドル付近まで上値を拡大しました。
ただ、想定の範囲内ではありますが、離脱強硬派のリースモグ議員は「大変不愉快な対応で、国益にならないばかりか、国民投票の意向に反する」と発言し、メイ英首相は与党ではなく野党と手を組む決断をしたと批判しました。ジョンソン元外相も、労働党との妥協は国民への裏切り行為だと非難しています。ただ、民主統一党(DUP、北アイルランド地域政党)は「嘆かわしいブレグジットへの対応後、メイ首相がしたこと(労働党に助けを求たこと)は驚きではない」と発言しており、今回の決断を好意的に捉える向きも少なくないと考えられます。
本日3日は、Meaningful vote、Indicative votesのどちらかが行われる前提でしたが、採決があるかもしれないし、ないかもしれない微妙な状況になっています。ただ、今度の採決が行われるということは、労働党のコービン党首との協議前進し、可決される案が前提であると考えられるため、採決が行われるという状況だけでポンドは期待感で買われるのではないでしょうか。与党と野党が協力するというあまり前例のない状況ではありますが、ようやくEU離脱交渉において方向性がでてきそうです。
今後の見通し
前週末の重要イベントであったトルコ統一地方選ですが、国営アナトリア通信は3月31日ロンドン時間21:21以降選挙報道をとりやめたていましたが、昨日になってイスタンブールの首長選挙において、野党候補が23,945票差で勝利したことを発表しました。AKP党は17,410票に不正があると述べ、約30万票の無効票の再確認も要請する見通しです。イスタンブールでの敗戦はエルドアン政権には大打撃ではあるものの、マーケットが大きく反応していない状況を見ると、エルドアン大統領の独裁政権に対抗できる手段ができたということ、決してマイナスではなかったということかもしれません。今回の選挙の最終結果は、4月10日までに公表される予定です。
米中貿易協議が長期化するなか、日米貿易協議が4月に開始され、15-16日にワシントンで初協議が開催される見通しである事が報じられました。ポイントとしては、米国がサービスを含む広範な分野を対象にするか、為替条項を加えるかどうかというところになってきます。ただ、本日の東京時間にFT紙が「貿易合意に向けた問題の大半を可解消」とのヘッドラインにてリスクオンの動きが強まりました。米中貿易協議が長期化しないようであれば、日米貿易協議もスムーズにいくのではないかとの期待感からドル円を中心としたクロス円は上値を拡大しそうです。
マーケットバイアスがポンド上昇に向きつつある
前日の動きとしては、メイ英首相の緊急会見が予想外のイベントでしたが、結果的には1.3030ドルでの買い戦略、利食い1.3150ドル付近、ほぼ安値と高値を享受できる最高の結果となりました。目先ポンドについては下落方向に目線が向きつつありましたが、ファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも上昇方向へと転換したと考えられます。若干の押し目があると想定し、戦略は1.3080ドルでの押し目買い戦略、利食いについては直近高値の1.3270ドル、損切りについては1.3010ドル下抜けとします。
海外時間からの流れ
メイ英首の緊急会見により、「合意なき離脱」回避に向け、4月12日となっているEU離脱の期限を短期間に限って延長することをEUに要請する方針を示しました。前日は、Indicative votesが全て否決されたことにより「合意なき離脱」をマーケットも覚悟していたものの、一夜にして状況が変わっており、ポンドについては、引き続きヘッドライン相場継続の見通しです。EU側が延長受け入れを可とするかどうかが目先の注目になります。
今日の予定
本日は、トルコ・3月消費者物価指数、英・3月サービス業PMI、米・3月ADP民間雇用者数、米・3月ISM非製造業景況指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が予定されています。(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。