投資信託を選ぶうえでの指標の一つが「利回り」だろう。実は、利回りの計算方法は金融機関によって違うため注意が必要だ。金融機関が提示する「利回り」が「本当の利回り」かどうかを見抜く方法を解説する。

投資信託でどれだけ利益を得るかを表す指標が「利回り」

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(画像=ronstik/Shutterstock.com)

投資信託に投資した金額に対して、1年あたりに利益を得る割合を「利回り」という。利回りは次のように計算する。

利回り(%)=利益÷投資元本÷運用年数×100

たとえば、100万円の資金を10年間運用して50万円の利益を得たとする。その場合の利回りは次のように計算できる。

利益50万円÷投資元本100万円÷10年間×100=5%

利回りに似た言葉に「利率」がある。利率とは、投資元本に対する利息のみの割合である。利率はお金を貸したり投資したりすることで得る利益であり、次のように計算できる。

利率(%)=1年間の利息÷投資元本×100

利回りは分配金や売却益などの利益がある投資信託などで使われ、利率は利息をもらえる預金などで使われる。

もらった分配金を再投資すると、それがさらに分配金を生む

投資信託のなかには、投資信託の運用で得た利益などの一部を投資家へ還元する「分配金」がもらえるものがある。分配金には「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」がある。普通分配金とは、運用で得た利益を投資家へ支払うものであり、利益扱いのため課税対象になる。元本払戻金は特別分配金と呼ばれることもあり、利益ではなく元本の一部を投資家へ払い戻すもの。元本払戻金は利益ではないため非課税だ。

分配金の受け取り方法は選ぶことができる。そのまま受け取るか、受け取った分配金を再投資することもできる。

投資信託の分配金を再投資することで、それが新たに分配金を生むことになる。この計算方法を「複利」、その効果を「複利効果」という。複利では、資金を効率良く増やすことを期待できる。

たとえば、100万円の資金を運用し、分配金を再投資するケースを考えてみよう。分配金の利回りを年5%とすると、各年の分配金は次のようになる。

1年目……100万円の5%で5万円の分配金を得る
2年目……105万円(100万円+5万円)の5%で5万2,500円を得る
3年目……110万2,500円(105万円+5万2,500円)の5%で5万5,125円を得る
10年目……155万1,328円(147万7,455円+7万3,873万円)の5%で7万7,567円を得る
20年目……252万6,950円(240万6,619円+12万331円)の5%で12万6,348円を得る

資金100万円を年5%の複利で運用した結果は、20年で約265万円(≒252万6,950円+12万6,348円)になる。

再投資せずに分配金を得るのが「単利」だ。資金100万円を年5%の単利で運用すると、20年で200万円(=100万円+5万円×20年)になる。

分配金を再投資することにより、20年で65万円の差が生まれた。この結果から、長期投資では複利効果が大きいことが分かる。

配当金利回りの計算方法は金融機関によって違う

投資信託にかかるコストには、「購入手数料」「信託報酬」「信託財産留保額」「税金」があり、分配金利回りの計算でこれらが含まれるかは金融機関によって変わる。

購入手数料とは、投資信託を買う時にかかる費用で、購入金額の0~3%程度が一般的だ。

信託報酬とは、投資信託を保有している間に支払う費用で、年間で資産総額の0.5~2%程度が差し引かれる。

信託財産留保額とは、投資信託を売却する際にかかる費用で、売却代金から差し引かれる。信託財産留保額は無料の投資信託もあるが、一般的には0~0.3%程度だ。

税金は普通分配金にかかり、税率は20.315%である。

金融機関が紹介している投資信託の配当金利回りを確認するときは、これらのコストが含まれているか確認しておきたい。特に長期に渡って投資信託を保有する場合は、毎年かかる「信託報酬」と「税金」が計算に含まれているかどうかで運用結果が大きく変わることもある。

投資信託の運用コストを考慮した利回りは次のように計算できる。

利回り(%)=(配当金-各種コスト)÷投資元本÷運用年数×100

基準価額の増減を考慮した年間利回りの計算方法とは

投資信託の単位は「口」であり、1口の値段を基準価額という。投資信託の運用成績により基準価額は変動する。

金融機関による投資信託の紹介資料などでは、年間の分配金利回りは次のように計算されていることが多い。

利回り(%)=(1年の分配金-年間コスト)÷1年前の基準価額×100

この計算式から分かるのは、基準価額が下落すると利回りが増加することだ。投資信託を何年も保有している場合に、元本払戻金の支払いなどで基準価額が下落すると利回りが増加して、(実際は損していても)得をしていると誤解することがある。

利回りの計算に基準価額の下落を考慮すると、「基準価額が下落した場合」には分配金から「基準価額の下落分」を引いて、年間の利回りを次のように計算できる。

基準価額が増加した場合

利回り(%)=(1年の分配金-年間コスト)÷1年前の基準価額×100

基準価額が下落した場合

利回り(%)=(1年の分配金-「基準価額の下落分」-年間コスト)÷1年前の基準価額×100

金融機関が配布する投資信託の配当利回りの資料では、基準価額の下落分が利回りの計算に含まれているかどうかを確認してほしい。

文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)/MONEY TIMES

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