前日については、メイ英首相が議会の膠着状態からの脱却に向け野党・労働党のコービン党首と協議する意向を示したことにより、「合意なき離脱」へ向け、前進するのではないかとの思惑が強まり、ポンド円では一時147.20円付近まで上値を拡大しました。ただ、労働党のコービン党首が「メイ首相は議会のこう着状態を脱却する提案を行わなかった」「協議は有効だったが結論は出なかった」と発言しているように、マーケットが期待しているような展開には至りませんでした。ただ、引き続き協議を継続する旨の報道もあることから、ポンドについては一旦膠着状態に入る可能性がありそうです。ポンドが次の一手で動意づく時は、EUが英国の延期申請についてどのような見解を持つかという点になりそうです。
注目度があまり高くはなかったですが、昨日行われた議会採決の内容は、「議会主導のIndicative Voteを来週月曜日にも継続するか」というものでした。結果としては、賛成、反対共に310となり、議長裁量に移ったことで、結果は『否決』となりました。これにより、議会主導のIndicative Vote3は行うことができなくなっており、現在継続しているメイ・コービン対談が非常に重要な立ち位置になっています。本日は、「No Deal Brexitを避けるための法案の審議」が行われる予定です。この法案が可決となると、メイ英首相は法的拘束力のある形でEUに対して離脱延期申請を行う必要がでてきます。
経済指標については、米・3月ADP民間雇用者数が市場予想17.5万人増に対して12.9万人増、米・3月ISM非製造業景況指数が58.0に対して56.1と総じて悪化したものの、ドル円は111.30円付近では反発基調を強めました。ただ、前日の東京時間にFT紙が「貿易合意に向けた問題の大半を可解消」とのヘッドラインを出したことでドル円が活気づいたように、マーケットは米中貿易協議の進展に期待していることが分かります。もともとは楽観論が強く、リスクオンイベントとして捉えられていましたが、一度期待が剥落し、ドル円も110円を割り込みましたが、ここにきて再度期待感が強まっていることを考えると、従来の112円を挟んだ攻防に移行していると考えられそうです。
今後の見通し
本日早朝に、「合意なき離脱を阻止する議案」を可決したことで、再びポンドは底堅い動きになっています。EUの承認が必要であるため、先行き不透明である状況に変わりはありませんが、一旦はポンドは上値追いの動きになりそうです。メイ英首相は来週の臨時EU首脳会議で「中断条項付きで9カ月の離脱延長を要請へ」と一部で報じられており、また、ハモンド英財務相が「来週の臨時EU首脳会議前に本採決を実施する必要はないが、もし可決という結果をメイ首相が持っていけるようならば何かしらのボーナスを得られる可能性も」と非常に楽観的な見方をしていることから、マーケットの緊張感がやや緩みつつあります。ユンケル欧州委員長が「4月12日の合意なき英・欧州連合(EU)離脱シナリオが有力」との考えを持っているため、ユンケル欧州委員長の発言内容が柔和されれば、本格的にポンド買いが強まりそうです。
英国議会の報道ばかりに目が奪われがちですが、明日は米・雇用統計が予定されています。米・3月ADP民間雇用者数が市場予想17.5万人増に対して12.9万人増と悪化した内容になりましたが、影響は限定的となった背景としては、ADP民間雇用者数が実際の雇用統計の数字と直近で乖離してきており、関連性が低くなっているとの指摘があります。景況感の数字は浮き沈みがありますが、米国の労働市場については一貫して強い内容になっていることから、雇用統計主導でドルが下落する可能性は低いと考えられそうです。
マーケットバイアスがポンド上昇に向きつつある
ポンドドル、1.3080ドルまで押し目を付けなかったことで、ポジションメイクならずです。ただ、引き続き、「合意なき離脱を阻止する議案」を可決するなど、ポンドが底堅くなるファンダメンタルズ要因が見られていることもあり、ポンドについては目先は上値追いの動きになりそうです。押し目のラインを若干引き上げ、1.3120ドル付近での買い戦略、損切りは1.3050ドル、利食いは1.3270ドル想定です。
海外時間からの流れ
「議会主導のIndicative Voteを来週月曜日にも継続するか」の法案を否決、「合意なき離脱を阻止する議案」を可決したことで、メイ・コービン対談が重要になってきますが、一部ではこの対談が破綻しても来週に1つでもIndicative Voteか可決されれば10日のEU理事会に持ち込めるとの話も出ています。状況の厳しさは変わりないですが、ポンド下落の材料が出てこない以上は、ポンド買いが引き続き継続するものと思われます。
今日の予定
本日は、独・2月製造業受注、米・新規失業保険申請件数、加・3月Ivey購買部協会指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、メスター・クリーブランド連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。