前週末については、米・3月非農業部門雇用者数が市場予想17.7万人増に対して19.6万人増という結果となり、ドル円は一時111.80円台まで上値を拡大しました。ただ、2月の数字は悪天候によるものと事前から指摘されており、裏付けされるかのようにISM製造業・非製造業景気指数、小売売上高、耐久財受注も悪化していました。3月のISM製造業・非製造業「雇用」指数についても、既に改善される結果になっていたことから、今回の雇用統計の結果ではサプライズはないとの見方となり、雇用統計後も、111.60円台を中心とした小動きが継続しました。

ドルの動向については、引き続き米中貿易協議がメインとなりそうです。トランプ大統領がホワイトハウスで記者団に「FRBは量的引き締めを停止し、利下げするべき」「米金融当局は量的緩和にシフトすべき」などと述べたものの、マーケットが全く動きを見せなかったことを考えると、ドルの動きについては、貿易協議が握っていると考えられそうです。新華社通信が米国での貿易協議で大幅な進展とのヘッドラインを習・中国国家主席の発言として公表し、その後も、劉鶴中国副首相の発言として、テキストに関して新たなコンセンサスに達したと報じており、早期の合意があるようであれば、ドル円は上値を拡大するものと思われます。

英国のEU離脱協議については、メイ英首相が、トゥスクEU大統領に書簡を送り、離脱期限を従来の4月12日から6月30日に再延期することを要請しました。ただ、EUは英議会による離脱協定案の承認を延期の条件としているため、延期決定で「合意なき離脱」が回避されるかどうかは不透明なままです。今週は、10日にEU緊急サミットが開催される予定であり、10日までに離脱協定案の承認を取り付けることができるかどうかが焦点ですが、メイ英首相は4回目の本採決に関しては、反対派が可決に転じるとは考えにくいということで、新たな採決には否定的な見解を示しています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日は、上院にて労働党クーパー議員と保守党レトゥイン卿の提出した「Brexit交渉期間の延長について、議会の承認を取り付ける義務がある」という法案の採決が実施される予定です。同法案については、政府から決定権限を奪い取る内容であり、上院の離脱支持議員による反対が予想されますが、可決となればエリザベス女王の勅許が必要になります。また、下院においても追加の修正案について審議、採決が行われるのではないかと言われています。

最も注目されているメイ首相とコービン労働党党首の会談ですが、引き続き継続して協議される予定です。メイ首相は、自らの退任後に欧州懐疑派の首相が誕生したとしても、破棄することが難しい法的拘束力のある「ソフトブレグジット」案をコービン労働党党首に提示する準備があると一部メディアからは伝えられています。同会談が順調に進むようであれば、火曜には離脱協議を得るよう審議、採決が行われるでしょう。そうなると、10日のEU緊急サミットにおいても、メイ英首相が望む6/30までの延期が現実味を帯びてきます。EU側はトゥスクEU大統領が既に12か月程度の長期離脱延期を提案しており、短期離脱が可能になるかどうかはメイ・コービン対談がカギを握っています。

この期に及んでも、マーケットでは根拠のない「合意なき離脱」は回避できるだろうとの思惑が根強く残っています。ただ、根拠のないというところにロング、ショートが混在していることから、今週も引き続きマーケットは乱高下する動きになりそうです。10日にはある程度今後の方向性が示されると思われますが、本日、明日については、引き続きヘッドラインに一喜一憂する動きになりそうです。

今週は、期待感だけでもポンドは大幅上昇する可能性あり

米雇用統計の数字が堅調であったこともあり、1.3100ドルコストのポンドドルは1.3050ドルにて損切り、手仕舞です。ただ、2月後半からポンドドルは1.2900ドルが下値目途として意識されてきており、徐々に1.3000ドルも心理的節目としてサポートされています。ファンダメンタルズ的にも、10日のEU緊急サミットへの期待感もあることから、目先はポンド買いに繋がるのではないでしょうか。1.2980ドル下抜けを撤退目途に、1.3030ドル付近での買い戦略。利食いについては、1.3270ドル付近を想定します。

海外時間からの流れ

経済指標としては、最も重要視されるであろう米雇用統計においても、マーケットを動意づかせることはできませんでした。英国のEU離脱協議が最たるものですが、現状は政治イベントが為替動向を左右するマーケットになっています。欧州経済については、ブレグジット関連の報道が収まるまで、米国経済については、米中貿易協議、日米貿易協議が終わるまでは、政治イベントが引き続き、マーケットを牽引する動きになりそうです。

今日の予定

本日は、独・2月貿易収支/独・2月経常収支、米・2月耐久財受注(確報値)などの経済指標が予定されています。 (提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。