前日については、10日にEU臨時サミットを控えていることもあり、英与野党協議(メイ・コービン会談)が注目されていましたが、EU臨時サミット前の合意は断念し、双方は11日に再び協議を再開する旨の声明を出しました。本来であれば、12日が離脱期日であるため、ポンドの急落があってもおかしくない状況ではあるものの、一部メディアが伝えたものによると、EU首脳声明草案には「EUは一定の条件下で英国のEU離脱期限を再延期することで合意する方針」であることがコンセンサスだと言われています。また、条件には欧州議会選挙への参加などが含まれており、諸々の条件が順守されなかった場合、英国は6月1日付で離脱する公算であり、欧州議会選挙への参加を実現すれば、事実上長期延期は可能である旨の報道がありました。これにより、12日に「合意なき離脱」になる可能性は一気に低下したとマーケットは判断したこともあり、まずはEU臨時サミットの状況を見届けようとの思惑から様子見の動きになったと考えられます。

トゥスクEU大統領は、英国のEU離脱を「1年を超えない範囲で長期再延期する案」を加盟国に提示しました。誰もが望まない「合意なき離脱」回避を大前提にした方針ですが、引き続きマクロン仏大統領などは再延期に慎重であり、「明日の臨時EU首脳会議で加盟国が一致した結論を出せるかは不透明だ」との発言もしています。ただ、EUの要であるメルケル独首相が「英国の合意なきEU離脱を避けるために全力を尽くす」との声明を出していることもあり、最終的には延期となる見方が一般的になっています。

海外時間で一時ポンドが乱高下する場面もありましたが、要因としては英国離脱派議員が「メルケル独首相は、アイルランド国境巡る安全策に5年の期限設けることに前向き」との発言をしたことから、予想外のポジティブサプライズにポンド買いが強まりましたが、すぐさま独関係者から否定されたことで急落という、完全にミスリード(タイムリミットは保守党の離脱強硬派などが求めているものであり、タイムリミット設定が本当にされるのであれば、メイ首相案がすんなりと可決される可能性が高いため)が招いた乱高下であり、マーケットは基本的にはEU臨時サミットの声明待ちの姿勢を強めていると考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

EU臨時サミットばかりがクローズアップされていますが、本日はECB理事会、そして、FOMC議事要旨が予定されています。ECBは3月の会合でTLTRO3の実施を発表しましたが、詳細については後日決定されることから、実際には6月以降にずれ込みそうなため、今回の会合ではあまり重要視はされない公算です。本日については、ユーロ圏の経済見通しに関する評価が注目されそうですが、国際通貨基金(IMF)が2019年の世界の成長率予想を従来の3.5%から3.3%へと下方修正し、ユーロ圏成長予想も従来の1.6%から1.3%に下方修正されており、ネガティブサプライズと呼べるようなトピックは出てこないのではないでしょうか。ドラギECB総裁の定例会見にて、超過準備の階層化を含む追加緩和の手段について記者団から質問がありそうですが、ユーロが動く材料としては、この質問に対してのドラギECB総裁の見解くらいでしょうか。基本的には、前回のような注目度はないと考えられます。

FOMC議事要旨では、引き続きハト派スタンスを押し出した3月のFOMCの議事要旨であり、今後の政策金利見通しが焦点になりそうです。パウエルFRB議長が「もし必要であればバランスシートに対して追加的な調整をする」と発言していたため、バランスシートに関する詳細が出てくるようであれば、ドルが動意づく可能性がありそうです。

不確定要素が多いですが、昨日はトランプ大統領が「EUから輸入する110億ドルの製品に関税を導入する」と表明し、貿易摩擦激化への懸念が高まったことでNYダウが一時230ドル超下落する場面がありました。国際通貨基金(IMF)が世界の成長予想を下方修正した時でも、それほど株安には繋がりませんでしたが、現状は、貿易協議関連の報道がドルの動きに大きく寄与するため、引き続きトランプ大統領の発言には要注意でしょうか。逆に考えれば、トランプ大統領の発言がなければ、基本的にはドル円、クロス円などは、下値が限定的であると考えられます。

離脱延期は短期的にはポンド買い材料

引き続き、本日のEU臨時サミットまでは様子見姿勢が強まりそうです。ただ、離脱延期がコンセンサスになってはいますが、離脱延期が濃厚となれば、市場心理として安心感が広がるため、目先はポンド買いが強まると考えられます。ポンドドル1.3030ドルでのロング、利食いについては、1.3270ドル付近、1.2980ドル下抜けを撤退目途の戦略は継続します。

海外時間からの流れ

昨日は、さまざまなヘッドラインが飛び交いましたが、総体的にはEU側が英国の離脱延期を認め、延期の期日を本日の臨時サミットにて話し合うというのがコンセンサスになっています。ただ、これまでは「合意なき離脱」を回避できる報道については、シンプルにポンド買いに繋がっていましたが、今週に入ってからは慎重な動きになっているのが特徴的です。「合意なき離脱」の回避をマーケットが織り込むようであれば、明確なプランがでないと今までのようなポンド買いにはならないかもしれません。ただ、今週という非常に短期のスパンで考えれば、EU離脱時期が4/12から延期されれば、一旦はポンド買いが強まる公算です。

今日の予定

本日は、英・2月貿易収支/英・統計局2月度GDP月次推計発表、欧州中銀(ECB)政策金利発表、米・3月消費者物価指数、FOMC議事要旨などの経済指標が予定されています。また、EU臨時サミットが開催されます。 (提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。