前日については、EU臨時サミットにて英国のEU離脱を10月31日まで延期することで合意したことで、「合意なき離脱」の可能性が低下し、目先の不安材料も先延ばしされたことで市場心理がプラスに作用するかと思われましたが、離脱時期こそ市場コンセンサスから変更がありましたが、離脱延期は想定の範囲内であったこと、離脱の詳細は不透明で混乱が長期化するとの見方もあり、ポンドの動きは限定的なものになりました。

次の重要局面は欧州議会選挙であり、それまでに英国が合意することができず、議会通過をできなかった場合は、英国は選挙に参加する必要が出てきます。政府と労働党の協議はまだ続いており、妥協点が見つかるとすれば関税同盟残留の道かもしれませんが、依然として落としどころが見つからない状況になっています。二大政党にとって欧州議会選挙参加のコストは高く、欧州議会選挙前に決着をつけることが非常に重要になりますが、これまでの経緯を考えると10月31日まで問題は先延ばしになりそうです。

欧州議会選挙前に合意案の議会通過を実現できない場合には、メイ英首相の辞職は避けられないとの見方が一般的であり、こうなると今度はまた違った火種で議会が紛糾することが容易に想像できます。国民投票の再実施など、新展開を迎えるまでは上下に動きづらいというのが正直なところでしょうか。現在のメイ首相案よりもソフト路線に舵を取ると、保守党の分裂は不可避であり、離脱強硬派が抗議する形で政府職などから辞任することが考えられます。メイ英首相の後任に離脱強硬派が就任する流れとなった場合は、中道右派の穏健派の議員たちが辞職するかもしれません。ただ、Statutory Instrument(制定法的文書)を下院で通過させれば、4月23日まで英国議会は休暇に入るため、ポンドの次の動きは5月以降になりそうです。

今後の見通し

英国のEU離脱問題が延期で一旦幕を閉じそうなため、マーケットがゴルディロックス(適温相場、動かない相場)になることが懸念されます。この状況下を打破する材料としては、ユーロのTLTRO3、もしくは日米貿易協議の2点に絞られそうです。TLTRO3については、先日のECB理事会にてドラギECB総裁が今後説明する旨の発言があったため、具体的な策こそ不明ですが、マーケットの起爆剤となるポテンシャルは秘めていると思われます。一部報道では、ティアリング(マイナス金利の適応の弾力化、階層化)には懐疑的である旨の報道があり、TLTRO2の路線を踏襲する可能性が高そうです。経済見通しの悪化に加え、TLTRO3の導入でユーロ軟化の動きが強まっていましたが、TLTROを寛容なものにするのであれば、周辺国へはプラスに作用しそうなため、ユーロは買い戻しの動きがでてくるかもしれません。

日米貿易協議については、来年秋の大統領選再選が最重要課題と考えているトランプ大統領にとって、今回の対日交渉は「鉄鋼、自動車、豚肉業界の支持を得るためのツールになる」と考えている節があり、強硬な要求を突き付ける可能性があります。日本は物品貿易協定(TAG)において、関税分野や通関手続きに交渉範囲を狭めたい意向ですが。米国側は交渉目的として「自動車の非関税障壁への対応」「デジタル貿易」「為替」など22項目を列挙していると言われています。交渉は初期段階から難航することが想定されるため、英国のEU離脱問題に続きまたしても政治イベントがマーケットの中心になりそうですが、マーケットが動く材料としては、この2点が挙げられそうです。

本戦略以降は、ポンドからは一旦離れた方がよさそうだ

EU臨時サミットにて英国のEU離脱延期が合意されたことにより、「合意なき離脱」懸念こそ後退しましたが、これまでのようなポンドの買い戻しには至っておらず、イベント狙いのポンドロング戦略も今後は難しくなりそうです。1.3030ドルでのポンドドルロング、利食いについては、1.3270ドル付近、1.2980ドル下抜けを撤退目途の方針に変更はありませんが、本戦略以降はポンドからは離れる予定です。

海外時間からの流れ

イベントが集中した4月10日を経て、マーケットが膠着状態に入りました。来週15日から日米通商交渉がはじまることで、それまでは動きづらい地合いになりそうです。週末に通商交渉についての観測記事が出てくる可能性があるため、この点には注意でしょうか。物品貿易協定(TAG)という言葉自体、日本だけで使用していることを考えると、日米間の温度差があることが浮き彫りになっているため、楽観論、特に為替条項に関する楽観論が崩れた時は、ドル売り円買いが強まりそうです。本日については、基本はポジション調整、どちらかにポジションを大きく傾ける可能性は低そうですが、あるとすれば、週末の報道に対するリスクヘッジでドル売りがやや出てくるかもしれません。

今日の予定

本日は、米・4月ミシガン大学消費者信頼感指数などの経済指標が予定されています。 (提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。