前週末のドル円については、米・4月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)が市場予想98.0を下回る96.9になったことで、一時111.80円台まで下押しする場面がありましたが、JPモルガン・チェースやウェルズ・ファーゴの決算が好調な結果になったことが意識されたこともあり、米10年債利回りが2.5651%前後まで上昇、さらには、NYダウも290ドル超上昇したことで、ドル円は一時112.09円まで上値を拡大しました。

ユーロについては、中国・3月貿易収支が市場予想を大幅に上回る内容になったことから、世界的な景気減速への警戒感が後退したこともあり、中国と貿易関係において比較的結び付きの強いユーロは上昇しました。ユーロドルでは、一時1.13236ドルまで上値を拡大しましたが、EUの執行機関である欧州委員会は米輸入品に対して報復関税リストを作成との一部報道が伝わると、欧米の貿易摩擦懸念からじりじりと上値が重くなりました。なお、ワシントンで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、「世界経済を巡るリスクが高まる中、景気減速が長引かないようにタイムリーな政策が必要」との認識で一致しました。ただ、共同声明の発表はありませんでした。

トルコリラについては、アルバイラク財務相が10日に発表した経済支援策(経済計画)について、格付け会社ムーディーズは「具体性や計画性がない」と指摘したことで軟調に推移しました。これまでも、幾度となく経済計画は発表するものの、具体的な軟化を成し遂げた成果というのは特になく、格付け会社からこの部分を指摘されたのだと思われます。トルコでは、イスタンブール市長選を巡る混乱、ロシア製ミサイル調達問題など、まだまだ問題が山積みであることもあり、上値が抑えられたかたちになっています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今後については、日米貿易協議がマーケットの中心になりそうです。茂木経済財政相は、7月の参議院選挙を控えて、自動車や農産物などの「物品交渉」を先行させて交渉範囲を限定する予備的協議(日米物品貿易協定TAG)にして、最終的な合意は参議院選挙後に先送りする意向を示しています。しかし、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、「為替」を含む22項目の協議を示唆しており、自動車関税25%、為替条項など強硬姿勢で臨む可能性があります。週末には、ムニューシン米財務長官が日米通商協議に「為替条項」を盛り込む発言をしており、現時点では日米の温度差はかなりあると考えられており、状況次第では、リスク回避のイベントになるかもしれません。

週末にドラギECB総裁が「他国における中央銀行の独立性に懸念を抱いている。特に世界で最も重要な国においてだ」と発言しており、明確にトランプ政権が利下げ圧力をかけているFRBを指したものだと考えられます。通常このような声明を出すのは異例中の異例ですが、トランプ政権が中央銀行の独立性に口を挟んでいることは間違いありませんし、状況によっては、再びFRBの利上げサイクルが回帰されるかもしれないとの見方もあるようです。

本戦略以降は、ポンドからは一旦離れる予定

EU臨時サミットで英国のEU離脱延期が合意されたことにより、ボンドのボラティリティも一気に低下しています。1.3030ドルのポンドドルのロングですが、1.3270ドル付近までの上昇を期待しましたが、1.3120ドルまで引き下げます。また、逆指値についても1.3060ドルの利食いの逆指値を入れたいと思います。

海外時間からの流れ

英国のEU離脱延期が決まり、マーケット全体のボラティリティが低くなっています。その中で、堅調な株価の恩恵を受けているのがドル円です。米中貿易協議こそ順調に進んでいますが、欧米貿易摩擦については状況が悪化し、今後は日米貿易協議が控えています。状況によっては、株価下落によるリスク回避の動きが強まる可能性があるため、この点には注意が必要でしょう。また、フランスの政府への抗議デモ「黄色いベスト運動」が22週目に入り、収まる気配を見せていません。マクロン仏大統領が近く新たな政策を発表する予定との報道もあり、効果的な策であればユーロ買いが強まりそうです。

今日の予定

本日は、トルコ・1月失業率、米・4月NY連銀製造業景気指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ハスケル・MPC委員、エバンス・シカゴ連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。