海外に不動産を所有し、不動産投資家・ブロガーとしても有名で、現在、ノムコム・プロでもコラムを連載中の赤井誠さんに、これから海外不動産投資へ進出したいと考える方へどのような点に注意すればいいか、赤井さんご自身はどのように投資を行っているかをお聞きします。

赤井さんが海外不動産投資をはじめた2つの理由

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(写真=不動産投資家・赤井誠さん)

――赤井さんは国内の不動産投資で成功されていますが、その上で、海外不動産投資へと進出されたのには、なにか理由があるのでしょうか。

私の場合は、国内の不動産収入だけで所得は十分と考えています。それでも、海外に進出したのには次の2つの理由があります。ひとつ目は、これから日本国内は少子化や景気の先行きが不透明なため、より安定的に運用できるドルで資産を持とうと考えたためです。これは、10億円以上の資産を所有したあたりから考えはじめたことです。

それに、世界経済という規模で考えれば、日本円よりもドルの方が圧倒的に強い。そのため、アメリカに不動産をもって運用することで、ドルによるキャッシュフローを生み出そうとしたんです。このような背景があり、最終的にハワイの物件を購入することにしました。

もうひとつの理由は、私自身、海外旅行が好きということが挙げられます。1年のうち、3カ月程度は海外で過ごすため、よく行く国に別荘代わりに物件を持ちたいと思っていたんですね。

アジア圏に旅行に行けば、開発ラッシュや街の喧騒など、日本では味わえない勢いを感じられます。その雰囲気はすごく刺激になります。また、物件を所有しているハワイは、気候がよく滞在していて楽しい国です。このような、「ここ住みたい」「また行きたい」そう思った場所に投資をすることにしています。もちろん、事前にしっかりとリサーチをして、損となる投資は行わないというのが前提になりますが。

ここまでお話してきた2つの理由を合わせますと、利益を追いかけすぎず、仕事をからめてその国に遊びに行く、楽しんで投資をする。そのために海外不動産投資へと進出したという感じでしょうか。

同じ不動産投資でも、利益狙いの新興国、節税中心の欧米に大別される

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(写真=PIXTA)

――同じように海外への不動産投資をはじめたいと感じながら、情報が少ないためにメリットが分かりづらいという方も多数いると思います。実際に海外への不動産投資を行う赤井さんが感じるメリットとはどのようなものでしょうか。

海外不動産投資は、“楽しむ”という部分をのぞけば、大きく2つの方向性に分けられると考えています。

ひとつは、アジアなどの新興国を対象にした不動産投資です。こちらは、これから開発が進んでいくエリアの一等地に新築を購入して保有時は賃貸によるキャッシュフローを、将来的にその価値が上がりきったところでキャピタルゲイン(売買差益)を狙うという目的です。

例えば、タイのバンコクなどは、高度経済成長期の日本のように、街に出ればたくさんの人が行き来し、50階建てに近いような超高層ビルから10階建て程度のコンパクトな建物まで、さまざまな用途の建築物がいたるところで建築されています。こういった風景を眺めていると、物件の価値などが大きく変わる可能性を含んでいる、ビジネスとして大きなチャンスがあると感じますね。

もうひとつの不動産投資の方向性は、欧米諸国を対象にしたものです。古い建築物であっても、都心部などの資産価値の高い物件を購入する。欧米では地震がないため古い建物をリノベーションして長い間活用しています。日本では古い建物の場合、減価償却期間が非常に短く、その違いを利用して短期間での減価償却を目的とする、節税を中心にした投資ということがほとんどだと思います。こういった場所に物件を持つ場合は、冒頭に述べたような“楽しみながら”という部分もからめながら“節税”することが目的となるでしょう。

ただし、いくら節税目的といえども、建物の価値が大きく下がってしまっては意味がありません。ハワイを例にあげると、世界最大級のリゾート地ということでほとんどの物件の資産価値が上昇傾向にあります。そのため、投資物件としての魅力も高いので、大きなデメリットを感じることは少ないかもしれません。

アジアに投資するにせよ、欧米諸国に投資するにせよまずは、ご自身の投資の目的を整理して、合致した国に投資を行うことを考えたほうがいいでしょう。その方の資産の中身や重視することによって、どちらに投資した方がメリットが大きいかは変わってくると思います。

バンコクの不動産マーケット事情。東京の感覚とはかなり違う

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タイ・バンコクの高層ビル郡(写真=PIXTA)

――赤井さんは、実際にタイとハワイに物件を購入されています。国内のアパート・マンション経営と大きく違うのはどのような部分でしょうか。

現地における賃料の相場に大きな違いがあります。バンコクの一等地を例に考えると、月20〜30万円ほどで100平米近いマンションに居住することもできるし、15万円くらいあれば60平米くらいの2LDKに居住することもできます。東京の一等地などから比べると、同じ都心という環境でも賃料の相場が大きく違うことで、普通の人でも容易に借りられるということで借り主のイメージが変わることは意識しておいたほうがいいでしょう。

また、これらの物件は地元の人たちに向けたものではなく、現地法人に出向している欧米人、日本人たちに向けた物件という部分もポイントです。バンコクの大卒の初任給は、日本円で6万円くらいと言われています。また、ウェイトレスなどのサービス業に従事する人であれば月2〜3万円程度です。そのため、現地の賃借人を対象にすると、不動産投資をしてもそれほど収益性は見込めません。

アジア圏などで不動産投資を行うのであれば、現地に居住する外国人に向けた物件に投資を行う必要もあると思います。現地に居住する外国人は、所属企業から家賃補助を受けている場合が多いので、少し高めの賃料の物件でも積極的に入居してくれる場合が多いです。そういった背景も加味すると、より効率的な投資を行えると思います。

そのほか、日本と違い、大家に強い権限があるというのも違う点です。国内であれば、家賃滞納者の部屋の鍵を大家が勝手に変えたりすれば大きな問題になったりしますよね。海外の場合は、大家が退去を迫ったり、更新時に賃料を倍にしたりといったことは珍しくありません。

逆にハワイは日本の東京の一等地と比べて同等かそれ以上の家賃がかかる物件も少なくありません。そのため、民泊はもちろん、マンスリーでもかなりの高い家賃収入を得ることができます。ただ、こちらもハウスルールや法律により規制がありますので、注意が必要です。

こういった文化や法律的な違いも国ごとに変わるので、投資にかかわる要素として事前に調べておくのがよいと思います。

プレビルドを除けば物件購入までの流れは日本に近い

――タイとハワイでは、不動産購入に関する流れはどのようなものになるのでしょうか。

新築物件では、購入までの大きな流れは日本と大きく変わらないと思います。ただし、プレビルド(建設されていない状態での購入)が多い点に要注意です。それを除けば、デベロッパーに問い合わせをして、物件を見学し購入する。その国の制度に従って手付金や頭金を入れて、完成したら残りの費用を支払うという日本の商慣習と似たフローになっています。

こういった物件購入の場合、実際に現地に行って、過去にそのデベロッパーが建設した物件を確認して、どのような設備を設置しているか、あるいは、建築材にどのような素材を使用しているかなどはよく調べて購入しています。

また、アメリカの中古物件は少し複雑で、仲介業者を通して物件を探して、合意すればエスクロー会社という第三者に金額を支払い、シロアリ検査などを経て、問題がなく取引が問題なく完了すれば売り主にお金が支払われます。

これは、中立な機関を通してお金のやりとりをすることで、持ち逃げなどのトラブルを防ぐことを目的にしています。日本よりも手順は多くなりますが、トラブルに巻き込まれる可能性が少なくなるなど、メリットも大きい制度です。

――海外不動産をこれから購入するという方に「購入にあたって注意したほうがいい」という点はありますか?

アジア圏の新興国で物件を購入するときは、中古・新築物件ともに“どこが造って、どこが管理しているか”が重要だと考えています。なぜなら、新興国の物件の中には、RC造であっても鉄筋が少なかったり、ラーメン構造の柱が細すぎたり、建物の構造がいい加減なものも多々あるんですね。これは、建築に対する基準がまだしっかりと浸透していないためではないかと考えられます。

日本国内でいえば、築50年の物件であっても、維持・管理のために随時点検や整備を行っていますが、新興国でいえば、10年もすれば不具合が多発するような物件が多いというのも事実です。そこで重要なのが「どこが造ったか」です。地元の大手や海外資本の企業以外の、中小企業の物件では、工事途中の倒産やずさんな管理がよく見られます。現地に行くと、骨組みの途中で終わっている物件も散見されます。

全ての中小企業の物件がダメという訳ではありませんが、アジア圏の新興国であれば、古い物件への投資というのは、よほど信頼できるデベロッパーが造ったものでないかぎり避けたほうが無難でしょう。

新築の場合は、一等地の物件を購入して賃貸に出すか、周囲の開発が完了してきたときの売却などを狙うことになると思います。この場合も、どんなデベロッパーが建築しているかが重要です。理想は、建築だけではなく、管理業務もカバーしている大手のデベロッパーから購入することです。こういった会社に依頼しないと、のちにトラブルが多かったり、その対応が不十分であったりする場合があります。信頼できる大手と契約することが大切です。

人生を楽しむために海外不動産投資をしていく

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――最後に、赤井さんが海外不動産投資で大切にされていることをお聞かせください。

現在、国内の所有物件の家賃収入だけで1億円を超えるため、海外への不動産投資では収益性ばかりを追ってはいません。日本人の多くがそうだと思いますが、私自身、これまで仕事を第一に考えていたために、人生を楽しむ余裕がありませんでした。現在は経営も安定していて、今後もこの状況が続くと見込まれますので、より人生を楽しむということにフォーカスしています。

その中で、節税効果やキャピタルゲインが見込めて、別荘を持つ感覚で所有できる海外不動産は、非常に魅力的です。ただ、誰でもそうだと思うのですが、損をすることはイヤなんですね。そのために、マーケットなどについてある程度の知識を得てから物件を購入しています。

実際に、私が知る海外不動産を持つ富裕層の中には、10年間しっかりと遊びに使った上で倍の金額で不動産を売却しているという人も少なくないんですね。海外に渡航する期間が長くても、日本国内の物件であれば管理会社に業務を任せてもほとんどの場合問題がありません。さらに、遠くにいてもインターネットを使ってほとんどの仕事はできるため、今後もより人生を謳歌するという意味で、海外不動産投資も続けていきたいと考えています。(提供:Wealth Lounge

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