前日については、欧州時間に「複数の欧州中央銀行(ECB)政策メンバーは『ECBが経済見通しに楽観的過ぎる』と考えている」とのヘッドラインが流れたことで、ユーロは上値の重い動きとなりました。ユーロドルでは1.13ドル前半から1.1280ドル付近までユーロ売りが強まりました。関係者筋の話として「ECBはさらなる利下げを議論していない」との報道があった際には、一時1.13ドル台を回復する場面もありましたが、その後はじりじりと下値を模索する動きとなり、1.1270ドル台まで下落しています。
議会が休会に入り、ポンドのヘッドラインが激減するなか、英ガーディアン紙がコービン・労働党党首の話として英与野党協議は行き詰っている」と報じたことで、ユーロに続きポンドも上値の重い地合いとなりました。英議会が休会ということに加え、ブレグジット問題が先送りされたことで影響自体は限定的にはなっていますが、ポンドドルでは1.3090ドル付近から1.3040ドル付近まで値を崩しています。また、英労働党はこの報道を否定している模様です。
注目の日米貿易協議については、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が、「日米両国は農畜産品を含む物品貿易の問題や、デジタル貿易の分野で高い基準を確立する必要性について議論した」「2018年にモノの貿易で676憶ドルの赤字となった対日貿易赤字を協議で取り上げた」「近い将来、茂木経済財政相と会談することで合意」などの声明を公表したものの、詳細については後日というニュアンスであったため、為替への影響は限定的になっています。
今後の見通し
本日発表されたNZ・第1四半期消費者物価指数(前期比/前年比)については、市場予想+0.3%/+1.7%に対して+0.1%/+1.5%の結果となり、従来より懸念されていた利下げ観測が再熱したことでNZドルは急落しました。前日については、RBAが公表した4月理事会の議事要旨において、インフレ率が低水準にとどまり失業率が上昇し続けた場合には利下げが適切になるとの見方が示されています。堅調な原油価格の推移により、一旦オセアニア通貨については買い戻し基調が強まっていましたが、豪州、NZ共に利下げ懸念が再熱したことにより、今後は、リスクオフの状況下では、オセアニア通貨がまずは売られるという動きになりそうです。
ただ、本日発表された中国・第1四半期GDP(前年比)が市場予想+6.3%に対して+6.4%、中国・3月鉱工業生産(前年比)が市場予想+5.9%に対して+8.5%、中国・3月小売売上高(前年比)が市場予想+8.4%に対して+8.7%と総じて強い内容となり、ポジティブサプライズとなりました。中国指標が強い状況下では、豪州とNZの弱い経済指標とで強弱まちまちの状況になりそうですが、中国主導でリスクオフになった場合は、オセアニア通貨主導で下落しそうです。現状は、戻り売りの戻りを試している状況にあると考えられます。
日米貿易協議の詳細発表後はドル売りが強まる想定
戦略通り、ドル円ショートを112.15円にてポジションメイクです。ドル円の112円台は何度もトライするものの、すぐさま111円台に反落するポイントになっているため、今回も滞空時間は短いものになると思われます。日米貿易協議についても、米中貿易協議同様にドル売りが強まる可能性が高いと見ています。引き続き、利食いは111.40円、損切りは112.50円付近に設定します。
海外時間からの流れ
前日はRBA議事要旨、本日はNZ・第1四半期消費者物価指数により、RBAとRBNZの利下げ懸念が再熱しています。中国の経済指標がポジティブサプライズとなったことで、一旦AUD、NZD共に買い戻しの動きが強まりそうですが、利下げ懸念が再熱したという状況は、リスク資産通貨にとっては大打撃であると考えられます。一旦は、落ち着きを取り戻しそうですが、米中貿易協議、日米貿易協議などのイベントによりリスクオフの状況になった場合は、まずはAUD、NZDが売られそうです。
今日の予定
本日は、英・3月小売物価指数、ユーロ圏・3月消費者物価指数・確報値、 米・2月貿易収支、加・3月消費者物価指数などの経済指標が予定されています。また、ベージュブックが公表されます。要人発言としては、カーニー・英中銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、ブラード・セントルイス連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。