前日については、東京時間に一時ドル円が112.163円まで続伸する場面もありましたが、その後はすぐさま111円台後半へ反落したものの、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が「米中両政府は通商問題での合意締結に向けてさらに2回のハイレベル協議を予定」「米中首脳は5月下旬までに合意に署名する可能性がある」と報道したことをきっかけに、再び112.10円台へ反発する動きを見せました。ただ、マーケットはイースター休暇前ということもあり、積極的にポジションを傾ける動きにはならず、その後は再び112円を割り込む動きになっています。
また、CNBCはトランプ大統領と習近平国家主席との会談について、中国側はトランプ大統領の訪日に際して実現させる可能性があると報じており、米国外における米中首脳会談が実現する可能性が浮上しています。米中貿易協議については、いよいよ大詰めを迎えており、貿易協議については、そろそろ日米貿易協議がメインイベントになりそうです。
前日発表された米・2月貿易収支については、前月比3.4%減の493億8200万ドルと、2018年6月以来の低水準となりました。中国からの輸入が急減し赤字が縮小、トランプ大統領の米国第一主義政策が成果を出し始めていることを示唆した格好となっています。この数字に表れているように依然として大きな貿易赤字を抱えているものの、状況は改善に向かっていることは数字に出ているので、日米貿易協議が順調に進む材料としては、この辺りが重要視されそうです。
今後の見通し
19日、22日がイースター休暇になるため、既に昨日の海外時間からボラティリティが一気に低下しています。その中で、ドイツ政府は、2019年の経済成長率の見通しを0.5%に引き下げました。これは、2013年以降では最も低い水準の見通しであり、1月に成長見通しを1.8%から1.0%に引き下げたばかりであるため、ドイツ経済が大幅に悪化していることを示唆しています。EUの主役であるドイツの経済が悪化しているということは、シンプルにユーロの上値が重くなると考えられます。今後、ブレグジット問題が再びクローズアップされる時は、ユーロ売り主導の動きになる可能性がありそうです。
トランプ大統領は、欧州の航空産業に対する補助金を巡りEU製品に関税を課す方針を示していましたが、EUは、対抗措置として総額200億ドルの米国製品に対する関税導入を表明し、暫定的にリストを公表しました。内容としては、航空機、ワイン、冷凍魚などが含まれており、5月31日までに意見公募し、その後改定を行う予定です。対米貿易協議については、完全にEUがマイナス要因を抱える状況になっているため、ボラティリティが低いながらも方向性はユーロ売りに傾きそうです。
休会中の英国議会ですが、調査会社ユーガブが公表した世論調査結果によると、英国の有権者の支持率は新たに生まれたブレグジット党が27%、労働党が22%、保守党が15%、緑の党が10%だったと公表しました。5月23-26日にかけて欧州議会選挙が実施されますが、ブレグジット党が英国内で首位になる見通しであり、議会再開と共に、再びポンドについては、ヘッドラインで一喜一憂する動きになりそうです。
日米貿易協議の詳細発表後はドル売りが強まる想定
戦略通り、ドル円ショートを112.15円にてポジションメイクです。ドル円の112円台は何度もトライするものの、すぐさま111円台に反落するポイントになっているため、今回も滞空時間は短いものになると思われます。日米貿易協議についても、米中貿易協議同様にドル売りが強まる可能性が高いと見ています。引き続き、利食いは111.40円、損切りは112.50円付近に設定します。
海外時間からの流れ
本日発表された豪・雇用統計では、失業率こそ5.0%と市場予想通りでしたが、新規雇用者数が1.5万人増予想に対して、2.57万人増となり、豪ドル買いが一時強まりました。ただ、先日のRBA議事要旨では、「インフレが低下し続け、失業率が上昇すれば利下げが適切」と利下げシナリオが議論されたこともあり、前回の4.9%から5.0%に失業率が悪化したことが意識され、その後は豪ドル売りに傾いています。また、午後には自民党の萩生田光一幹事長代行が「消費増税延期もあり得る」と発言したことで、ドル円は111.80円台まで円買いが強まっています。
今日の予定
本日は、独・4月製造業PMI/サービス業PMI、ユーロ圏・4月製造業PMI/サービス業PMI、英・3月小売売上高指数、米・3月小売売上高、米・4月フィラデルフィア連銀景況指数、米・新規失業保険申請件数、加・2月小売売上高、米・4月マークイット製造業PMI/サービス業PMIなどの経済指標が予定されています。要人発言としては、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。