シンカー:グローバルな景気・マーケットの不透明感などにより、日銀短観では企業の業況感は悪化してきた。一方で、2019年度の大企業全産業の売上高計画は前年度比+1.7%(当社季節調整済)と堅調で、2018年度と同水準のスタートを切っている。業況感の悪化は販売数量の予想を抑制するだろうから、売上高の増加は価格の引き上げが寄与する部分も大きいとみられる。業種別では、製造業よりも、人手不足による賃金上昇のコスト増加の影響が大きい非製造業で売上高の増加見込みが顕著だ。しかし、価格の引き上げは遅れているとみられ、4-6月期への業況感の予想はまだ悪化見込みとなっている。利益率の維持のために、値上げを迫れれている企業が多く、物価上昇圧力が強くなっていく素地があることを示していると考えられる。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

3月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.8%と、2月の同+0.7%から若干上昇した。

3月のコアコア消費者物価指数(除くエネルギーと生鮮食品)は前年同月比+0.4%と、2月から変化はなかった。

コアとコアコアともに、1・2月の季節調整済前月比が+0.1%・+0.2%と強かったため、3月は同0.0%と一時的に上昇にブレーキがかかった。

年度末に在庫を処分するセール、または新生活応援セールなどで、耐久消費財を中心に値下げが行われ、消費が刺激されたとみられる。

今後の注目は、4月の新年度入り後に企業がどのような価格戦略をとるのかである。

グローバルな景気・マーケットの不透明感などにより、日銀短観では企業の業況感は悪化してきた。

一方で、2019年度の大企業全産業の売上高計画は前年度比+1.7%(当社季節調整済)と堅調で、2018年度と同水準のスタートを切っている。

業況感の悪化は販売数量の予想を抑制するだろうから、売上高の増加は価格の引き上げが寄与する部分も大きいとみられる。

業種別では、製造業よりも、人手不足による賃金上昇のコスト増加の影響が大きい非製造業で売上高の増加見込みが顕著だ。

しかし、価格の引き上げは遅れているとみられ、4-6月期への業況感の予想はまだ悪化見込みとなっている。

利益率の維持のために、値上げを迫れれている企業が多く、物価上昇圧力が強くなっていく素地があることを示していると考えられる。

総賃金はしっかりとした拡大が始まっており、値上げが販売数量を減少させる弾力性は過去より低下しているとみられることが、売上高計画の堅調さに表れているのだろう。

確かに、昨年の原油価格の上昇の反動や携帯電話通信料引き下げなどの特殊要因があるため、コア消費者物価指数の前年同月比が伸び悩み、物価上昇圧力の拡大が感じられない状況がしばらく続くだろう。

しかし、2019年の物価上昇率がテクニカルな理由で弱ければ弱いほど、2020年は逆に強くなり、価格弾力性を考慮した企業の価格戦略も広がることもあり、1%を上回る水準に物価上昇率が加速する可能性は十分にあると考える。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司