史上最長の10連休まで残り1週間となりましたが、東京株式市場は総じて堅調な動きになっています。日経平均株価は年初来高値を更新し、昨年12月上旬以来の22,000円台を回復しました。
そうした中、同平均株価に採用され、その変化への寄与度が大きくなりやすい値がさ株の活躍が目立っています。むしろ、それら値がさ株の堅調な動きが日経平均株価をけん引しているとさえ考えられます。特にファーストリテイリング(9983)は4/19(金)まで11営業日連続高となり、日経平均株価を押し上げる役割を果たしました。
ところで、ファーストリテイリングはなぜ、11連騰となったのでしょうか。その大きな理由のひとつは信用取引における需給関係の良さに求められそうです。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、スクリーニングにより、信用取引における需給関係が良いと考えられる銘柄を抽出し、ご紹介することにしました。
意外高が期待される好需給銘柄はコチラ!?
れではさっそく、スクリーニングを行ってみたいと思います。
(1)東証1部上場銘柄であること
(2)時価総額が1千億円以上の銘柄であること
(3)広義の金融(銀行、証券、保険、金融)を除く東証33業種に属す銘柄であること
(4)信用倍率(信用買い残/信用売り残)が2倍未満の銘柄であること
(5)信用売り残が過去1週間で20%超増えた銘柄であること
(6)過去1週間で株価が上昇した銘柄であること
(7)決算期が4月、10月を除く銘柄であること
上記のすべての条件を満たした銘柄を、信用売り残(4/12現在)がその銘柄の浮動株数に対して占める比率が高い順番に並べたものが表1となります。日本株投資戦略では、これらの銘柄について、信用取引における需給関係の良い銘柄であり、今後の値上がりが期待できる銘柄であると考えています。
なお、信用取引を行っていない投資家の方も多いと思います。しかし、信用取引における需給関係の変化は株価に大きな影響を与えることが多く、すべての投資家の方にとり、理解することは重要であると考えられます。
一般的に、取引銘柄や返済期限を取引所が決めている「制度信用取引」では、返済期限が最長6ヵ月となっています。買い建玉を持っている投資家は売り返済により、売り建玉を持っている投資家は原則買い戻しにより、この返済期限以内に決済する必要があります。
すなわち、信用取引で買い建玉が増えている間、その銘柄の株価は上昇しやすくなりますが、それがある程度の残高まで増えると、将来の売り圧力として認識されることになります。逆に、売り建玉は原則、将来買い戻されると想定されるので、将来の株価上昇要因と考えられます。これら、信用取引制度の詳細については、当社WEBサイトでご確認いただければ幸いです。
表1の銘柄は、信用売り残の増加等により、需給関係が良くなっていると「日本株投資戦略」では考えています。なお、決算期が4月、10月の銘柄については、数は少ないと思われますが、権利・配当取りに伴う「つなぎ売り」の増加でランクインしてくる可能性もあり、信用売り残の増加を材料にした銘柄の抽出には不向きと考えられ、除外対象とさせていただきました。
表1:意外高が期待される好需給銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(4/18) / 騰落率(4/11~) / 信用売り残対浮動株比 / 信用倍率(倍) / 信用売り残週間増減
<7581> / サイゼリヤ※ / 2,463 / +5.1% / 2.97% / 0.20 / +813.1%
<2157> / コシダカホールディングス / 1,670 / +4.6% / 0.73% / 0.78 / +166.3%
<6457> / グローリー / 2,840 / +0.9% / 0.64% / 0.83 / +36.7%
<9984> / ソフトバンクグループ※ / 11,535 / +5.4% / 0.53% / 1.05 / +22.3%
<2815> / アリアケジャパン / 6,590 / +1.1% / 0.45% / 1.05 / +21.8%
<3087> / ドトール・日レスホールディングス※ / 2,084 / +2.0% / 0.39% / 0.39 / +26.7%
<7730> / マニー※ / 6,340 / +9.9% / 0.31% / 0.54 / +77.5%
<4203> / 住友ベークライト※ / 4,270 / +2.6% / 0.28% / 0.17 / +42.6%
<7164> / 全国保証 / 3,825 / +1.5% / 0.25% / 0.47 / +41.0%
<9601> / 松竹※ / 12,820 / +7.7% / 0.25% / 0.73 / +44.9%
<8078> / 阪和興業 / 3,330 / +3.9% / 0.23% / 1.70 / +42.5%
<8253> / クレディセゾン / 1,495 / +5.7% / 0.21% / 1.04 / +109.7%
※Bloombergデータ、東証データ等を用いてSBI証券が作成。株価騰落率は4/18終値を4/11終値と比較したもの。信用売り残および買い残(週足)の最新データは4/12(金)現在。信用倍率は4/12現在の信用買い残を売り残で割ったもの。また、信用売り残週間増減は、4/12現在の信用売り残が、4/5現在との比較で何%増えたのかを示した数値。信用売り残が増え、信用売り残高が信用買い残高を上回る売り長の状態では「逆日歩」が発生し、売り方が追加的コストの支払いを要求されることがあります。逆日歩の発生は買い方に有利、売り方に不利な条件となっています。※印の銘柄はレポート作成段階で逆日歩発生の情報が確認されていますので、今後の動向にご注意ください。
ファーストリテイリングの11連騰と東京株式市場
ファーストリテイリング(9983)は前項の条件をすべて満たしており、本来は表1に掲載されるべき銘柄かもしれません。ただ、同社株は4/19(金)までに11連騰となり、その間の上昇率が18.6%に達するなど、常識的に過熱感も強くなっているとみられます。このレポートはむしろ、こうしたファーストリテイリングの値動きを参考にして分析している面も強く、この銘柄自体を参考銘柄とすることは避けさせていただきました。
なお、信用売り残が増え、信用売り残高が信用買い残高を上回る売り長の状態では「逆日歩」が発生し、売り方が追加的コストの支払いを要求されることがあります。逆日歩の発生は買い方に有利、売り方に不利な条件となっています。ファーストリテイリングは、信用売り残が浮動株数の1%超あることに加え、過去1週間で7割超増えていること、逆日歩が発生していること等の事情から、売り方が不利となり、買い戻しを迫られる状況が続いていると考えられます。
信用売りから買い戻しに至る過程で、受渡日が連休を挟むことになると、逆日歩もその分徴収されることになるので、売り方にとり10連休はシビアな問題になります。こうした事情に投機的動きが絡みファーストリテイリングの11連騰につながっているとみられます。反面、連休後はこうした事情が剥落する計算になるため、買戻し需要が低下する可能性もありそうです。
なお、同社とソフトバンクグループ(9984)は日経平均株価の動きに大きく寄与しやすい銘柄でもあります。このため、先物やそれに絡んだ裁定取引の影響も出てきます。株価の動きはこのように、ファンダメンタルズの変化だけでは説明できない部分も大きく、投資家の方は十分ご注意ください。
図1:ファーストリテイリング(9983・日足)~信用取引や裁定取引に絡んだテクニカルな動きも
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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