多くの人が今、自助努力での資産運用を求められるようになった。投資初心者にとって、まず大切なことは「リスクを抑えた投資」を心がけることだろう。その際には、「分散投資」でリスクを限定させた、効率的な資産運用を実践すべきである。そこで今回は、「資産分散」「地域分散」「時間分散」という3つの視点から、分散投資の重要性を解説したい。

1)資産分散とは

資産分散
(画像=PIXTA)

投資リスクを限定するために、まず実践してほしいのが資産分散だ。資産分散とは、異なる値動きをする複数の資産を運用し、リスクを分散させる投資手法である。例えば、好景気を受けて株価が値上がりするときは、債券価格は値下がりする傾向にある。そのため、株式と債券の両方を持つポートフォリオ(資産の組み合わせ)であれば、資産全体の価格変動リスクを低減させられるという考え方だ。

運用資産には国内の株式や債券だけでなく、外国株式や外国債券、国内外のREIT(上場不動産投資信託)など多様な種類があり、その値動きもそれぞれ異なる。これらの資産をバランスよく組み合わせることによって、さまざまな局面でリスクを抑えた投資を実践できるだろう。

投資信託に関しては、運用のプロフェッショナルであるファンドマネージャーが、経済環境や投資情勢を見据え、これらの運用資産のバランスを考慮した運用を手掛ける、「アセットアロケーション型投資信託」というものもある。自分自身でポートフォリオの構築が難しい場合は、このような投資信託で資産運用するのもひとつの手である。

2)地域分散とは

地域分散とは、投資する対象国・地域を日本国内だけに限定せず、異なる地域にも投資することである。例えば、米国、EUといった先進国、ベトナムやインドネシア、ブラジルなどの新興国なども投資対象にし、リスクを分散する。幅広い国々を対象に分散投資を行うと、日本経済が停滞気味で国内投資で十分な利回りが確保できなかったとしても、新興国の成長拡大の果実を享受できる可能性がある。この場合、ある国の資産の値下がりを、他国の資産の値上がりでカバーできるのだ。結果的に、ポートフォリオ全体のリスクを低減させることが可能となる。

ただし、日本以外の外国資産を保有する場合は、為替変動の影響を受けることになるので、その点は十分に注意したい。

3)時間分散とは

時間分散は積み立て投資のように、投資信託などを事前に決めた金額で、長期間にわたり運用することである。決まった投資信託口数で購入するのではなく、購入金額を一定にするところが時間分散の大きなポイントとなる。

簡単な事例で説明しよう。投資信託を毎月2万円で購入する。その投資信託の基準価額が当初2,000円であれば10口購入できる。翌月になって、基準価額が1,000円に値下がりしたとすると、投資信託は20口購入できる。さらに翌々月には、基準価額が2,500円に値上がりしたとすると、8口購入でき、3ヵ月合計で38口の投資信託を保有することになる。もし、基準価額が2,000円のとき、まとめて6万円分の投資信託を購入していたとすると、口数は30口しか買えないことになる。

一般的には、購入金額を一定にして、長期間にわたってコツコツと購入したほうが、リスクを抑えた投資が可能になるとされている。これは「ドル・コスト平均法」とも呼ばれる投資方法で、投資信託の短期的な値動きを気にせず、購入価額を平準化させることができる。時間分散は、特に投資初心者など、投資のタイミングを見計らうのが難しいと感じている人にとって、有効な投資戦略になるはずだ。

今回は「資産分散」「地域分散」「時間分散」という3つの視点から、分散投資の重要性を解説した。着実な資産形成のために、上述した分散投資の方法を参考に、リスクを抑えた投資を実践してみてはどうだろうか。