ここ数年、日本でも認知・普及が進むロボットアドバイザー。投資に関するいくつかの質問に答えると、AI(人工知能)がおすすめのポートフォリオを提示してくれるというものだ。これから投資を始めたいという初心者や、忙しくてなかなか時間がないという人などを中心に人気を集めるが、ロボットアドバイザーは資産形成に有効なのだろうか。

ロボットアドバイザーは投資の基本「長期投資」「積立投資」「分散投資」に向いている

ロボットアドバイザー,資産形成
(写真=MY stock/Shutterstock.com)

ロボットアドバイザーには「アドバイス型」と「投資一任型」の2種類がある。前者はポートフォリオの診断など、投資のアドバイスだけを行うタイプ。後者は、売買や運用資産の最適化までAIが自動で行ってくれるタイプだ。日本で人気があるのは主に、後者のタイプになる。

最初の質疑応答でAIに「リスクを取るのが平気な人」と判断されれば、株式などリスクが高い商品の資産配分が高く設定される。一方、低リスクを好むと判断されれば、債券など安定した商品が多くなる。

ロボットアドバイザーを利用するメリットは、「心理的な罠に陥らず、淡々と投資を継続できること」だ。人間はやはり、どこかで自らの選択に迷う場面が出てくるもの。特に、少し投資に慣れて成果が出始めると、「もっと儲けられるのでは」という欲が出てきて、自ら決めたルールを逸脱してしまうこともあるかもしれない。そういう時ほど冷静さを失って失敗しがちなものだ。FX(外国為替証拠金取引)のシステムトレードにも言えるが、ロボットアドバイザーはあらかじめ組まれたアルゴリズムに従って運用するので、人間のような認知のバイアスがない。

また、ロボットアドバイザーに資産運用を任せるということは、長期投資が前提になる。自分で運用していると毎日チェックして、少しでもマイナスになりそうなら利確してしまいたくなるものだが、それでは長期投資には向かないだろう。

成功する投資の基本は「コツコツと継続的に続けること」にある。ロボットアドバイザーは、一発逆転の大勝利は難しいかもしれないが、長期的な継続投資には向いているといえる。

投資のもうひとつの基本は「分散投資」だ。「卵はひとつのカゴに盛ってはいけない」という相場格言を聞いたことがあるかもしれない。リスクヘッジのために、資金は一カ所に投入せず、投資時期や投資国、投資対象を分散させるのがセオリーだ。初心者はなかなか資産ポートフォリオの分配加減がわからないものだが、ロボットアドバイザーはAIが自動的に決定してくれる。

「手数料1%」をどう見るかで賛否両論

ただ、ロボットアドバイザーを利用する際に着目すべきなのは手数料だ。主要サービスを比較すると、手数料は預かり資産の1%前後というものが多いようだ。この「1%」の手数料をどう見るかで、ロボットアドバイザーが資産形成に有効かどうか、判断が分かれるだろう。

たとえば、オンライン証券やFXの手数料は、近年かなり安くなってきている。取引条件によっては手数料無料という業者もあるほどだ。

また、ロボットアドバイザーと比較対象になりやすい投資信託は、プロのファンドマネージャーに投資を委託するだけに、他の商品よりも手数料が高くなりがちだが、最近は信託報酬が低い「インデックスファンド」などもある。

それらを踏まえると、手数料が低い金融商品を中心に自らポートフォリオを考えて投資する人、いわゆるセミプロ以上の投資経験者にとって、ロボットアドバイザーの手数料1%は高く映るだろう。

ただ、こういう人はある程度の投資の知識や経験があり、ポートフォリオの検討や資産のリバランス(組み換え)などに労力を割けるという前提がある。
そもそも投資に関する情報を日々、ブログやSNSで発信しているくらいなのだから、時間的余裕もあるのだろう。

一方、まったくの投資初心者や、仕事が忙しくて投資に労力は割けないが銀行口座に資金を寝かせておくよりは多少運用してみたいという層にとっては、自動で資産配分の決定から売買までやってくれるロボットアドバイザーは検討する価値があるかもしれない。(提供:百計ONLINE

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