米シリコンバレーは、世界のハイテク産業の中心地として発展してきました。その成り立ちや現在の姿、今後につながる動きを紹介します。

発祥、半導体やコンピュータ産業の中心地へ

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(画像=zimmytws/Shutterstock.com)

シリコンバレーは、カリフォルニア州サンフランシスコ、ベイエリアの南に位置し、最先端のIT企業が集まる地域の通称とされています。かつては果樹園の広がる農村地帯でしたが、1900年代中頃以降、スタンフォード大学を中心にハイテク産業の地へと変貌を遂げました。名称は半導体に用いられるシリコンに由来しています。

「シリコンバレーの発祥」として広く知られる出来事は、ヒューレット・パッカード(HP)の創業です。1930年代に、スタンフォード大学の地位向上や産学連携の推進を図ったフレデリック・ターマン教授の支援を受け、卒業生2人がこの地でオーディオ発振器メーカーとして創業しました。第二次大戦以降、同大学を中心として軍需産業が盛んになったことも、この地の発展につながりました。

戦後、ターマンは学内の敷地に工業団地を創設し、企業や研究者を誘致します。さらに、トランジスタの発明者の1人であるウィリアム・ショックレー教授がここに半導体の研究所を設立しました。ターマンとショックレーは、「シリコンバレーの父」と称されています。

この研究所からスピンオフしたフェアチャイルドセミコンダクターをはじめとし、インテルなどの半導体企業がこの地に誕生します。1970~80年代には、アップルやシスコ、サン・マイクロシステムズが創業し、半導体からコンピュータ産業の中心地として広く認識されるようになりました。アップルは後に、世界的にスマートフォンが普及する先駆けとなるiPhoneを生み出します。

ソフトウェア、インターネットの地へ

1990年代にはヤフーやグーグルが誕生し、ソフトウェアやインターネットが台頭します。2000年代以降は、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディア企業、さらに自動車企業のテスラやシェアサービスのウーバーがこの地に加わりました。

現在このようにIT企業が集中するシリコンバレーには、優れた人材や技術、アイデアが集まり、資金が投じられ、新興企業が生まれ、成長して、イノベーション、ディスラプション(既存市場を破壊するような新しい動き)が起こる土壌があります。新興企業は大企業の傘下に入るケースや、創業メンバーが新たな事業創出の機会を求めてさらに起業したり、投資家となったりする場合もあります。このエコシステムの中で、シリコンバレーはハイテク産業の革新を主導する中心地として成長を続けています。

AIで世の中を変える

近年、AI(人工知能)が注目を集めていますが、シリコンバレーを代表する存在となった世界的企業各社もAIを製品やサービスに取り入れ、研究開発を進めて、成長してきました。

例えばグーグルは、傘下のAI企業が開発した囲碁プログラムが、当時の囲碁世界王者に勝利したと話題を呼びました。グーグルは今や、検索のほか、多様なアプリケーション、クラウド、データセンターに至るまであらゆる分野にAIを導入しています。大手以外にもシリコンバレー発のAI関連ベンチャーが次々と誕生しており、自動車や医療、金融、小売など多様な分野を革新して、企業の活動や人々の生活を向上させようとしています。

ブロックチェーンなど新技術の台頭で新時代に?

一方で、このように成長を遂げてきたグーグルやアップル、フェイスブックなどが、各種サービスから個人情報を大量に収集して利用するようになり、データに関して世界的に主導権を握って、高い利益を上げている現状を問題視する風潮もあります。ビジネスを動かす原動力となるデータを一部の大手企業が独占的に囲い込み、中央集権的に強い影響力を持っている状況に対し、データの主権を見直す必要があると議論されています。

そのような問題を打開する可能性のある有力なテクノロジーも台頭しています。その1つが、もともとは仮想通貨を支える技術として知られるようになったブロックチェーンです。ブロックチェーンは、ネットワーク上で重要データを分散させて保存することを可能にし、データが改ざんされることなく透明性が維持されます。

ブロックチェーンは多様な分野への応用が期待される有望な技術であることから、大手企業も取り組みを始めていますが、シリコンバレーの優秀な人材がブロックチェーンに関するさらなる機会を求め、大企業から新興企業へ流れているとの見方もあります。

そうした新技術の台頭によって、今後シリコンバレーを中心とした大企業の影響力に歯止めがかかり、現在の勢力図を変えるような新たな動きが生まれるかもしれません。(提供:JPRIME

文・J PRIME編集部


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