前日については、アジア市場、欧州市場の多くが休場となっていたため、本格的な動意はNY勢参入後になりました。まずは、米・4月ADP民間雇用者数が市場予想18.0万人増に対して結果は27.5万人増と非常に強い数字となり、ドル円は111.20円台から111.40円台までドル買いが強まりました。ただ、その後に発表された米・4月ISM製造業景況指数が市場予想55.0に対して結果は52.8、米・3月建設支出においては、市場予想±0.0%に対して-0.9%と非常に弱い内容になったことを受け、ドル円は111.10円台まで急落し、その後は111.10-20円台にてFOMC待ちの動きとなりました。

FOMCについては、政策金利は2.25-2.50%に据え置かれましたが、超過準備預金金利(IOER)を従来の2.40%から2.35%に引き下げました。実質FF金利が4月から超過準備預金金利(IOER)を上回っていたこともあり、もしかしたら調整が入るかもしれないとの報道もありましたが、このIOER引き下げに市場はドル売りで反応し、FOMC声明後には前日の安値である111.053円まで下落しました。

ただ、その後のパウエルFRB議長の定例会見にて、同総裁が引き下げたIOERについて「小幅な技術的調整。政策シフトではない」と述べ、「インフレ低下は一時的」「金利はいずれの方向にも動かす強い論拠が見られない」との見解を示したことで、一気にドル買いが強まり、ドル円は111.611円まで急伸し、高値を更新しました。また、トランプ大統領が利下げを迫ったことで注目されていた今後の金利動向については、「短期的な政治の意向は考慮しない」と正面から否定したことで、利下げ懸念が大きく後退し、ドル買いに安心感が出たと思われます。

ドル円は111.611円までドル買いが強まりましたが、利下げ懸念が後退したことにより、株安の動きが強まり、NYクローズについては、111.394円で引けています。ただ、株安によるドル円の下落は、あくまで調整であり、利下げ懸念が後退したということは、素直にドル買いになりやすい地合いになったと考えられます。ドル円は112円がレジスタンスラインとして意識されており、再度上値を試す展開にはなりそうですが、112円を明確に上抜けるかどうかについては、もう一材料必要になりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

FOMC声明、パウエルFRB議長の会見により、FRBの利下げ懸念が後退したことが明確になりました。これで、週末の米雇用統計にマーケットの注目はシフトされたと考えられます。特に、米・4月ADP民間雇用者数が非常に強い数字だったこともあり、非農業部門雇用者数も同程度の数字になるのではないかとの期待もあることから、目先はドル買い方向に傾きそうです。ただ、香港とシンガポール市場は戻ってくるものの、本日も日本、そして中国が休場となることから、海外時間までは狭い値幅に終始しそうです。

海外時間では、スーパーサーズデー(BOE政策金利発表、MPC議事要旨公表、四半期ごとのインフレリポート公表)が予定されています。当然スーパーサーズデーのイベント自体が重要ではありますが、英国議会が再開され、メイ英首相が「来週半ばまでには両党幹部の会合を設けて結論を出したい」との意向を示していることもあり、カーニー・英中銀総裁からBrexitに絡んだ声明が出るようであれば、大きくポンドが動く可能性がありそうです。

カーニー・英中銀総裁は、「英経済のファンダメンタルズは健全」「景気が予想通りに推移すれば段階的な利上げが必要になる」「少なくとも金利が1.5%になるまでQEの縮小はない」と発言していたこともあり、金利主導での動きは限定的になりそうです。あくまでBrexitが絡んだ内容がマーケットを動意づかせるものと思われます。

112円の上値が重い以上、戻り売り戦略に変更なし

111.90円でのドル円のショートポジションについては、目標通り111.10円にて利食い、手仕舞です。112円台での上値の重さが相当意識されていることもあり、基本的には戻り売り戦略が引き続き機能しそうです。FOMC、パウエルFRB議長の定例会見後の戻りが111.60円付近ということもあり、この水準が意識されてくるのではないでしょうか。ドル円111.60円台での戻り売りを戦略とし、次の下落時には111円割れを想定し、利食いは110.70円付近、損切りは112.10円上抜けとします。

海外時間からの流れ

前日発表されたNZ・第1四半期失業率、特に雇用者数増減が前期比-0.2%(予想+0.5%)、前年比で+1.5%(予想+2.2%)になったことを受け、NZドル、そして豪ドルの上値の重さが目立ちます。RBA、RBNZ共に利下げ懸念が出ていることもあり、オセアニア通貨を積極的に買い戻す動きは当面は控えられるのではないでしょうか。次回のRBNZ政策金利発表は5月8日、政策金利後の声明において利下げ懸念が払拭されない限りは、豪ドル、NZドルが売られるマーケットが継続する見通しです。

今日の予定

本日は、独・3月小売売上高、英・4月建設業PMI、英中銀(BOE)政策金利/英中銀四半期インフレ報告、米・新規失業保険申請件数、米・3月耐久財受注(確報値)などの経済指標が予定されています。また、カーニー・英中銀総裁の定例会見が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。