平成29年の簡易生命表によると、2017年の日本人の平均寿命は、男性81.09歳、女性87.26歳で世界でも上位の長寿国です。健康寿命も長くなり、65歳以後も働いている人が増えています。けれども65歳を迎えると収入があったとしてもそれまでより低くなったり、収入よりも生きがいを重視したいと考える人もいるでしょう。老後の貯金は65歳を迎える前にしっかり考えてできるだけ準備をしておく必要があります。今から対策を始めましょう。
老後の生活の平均的な収入・支出はどれくらい?
総務省の2017年家計調査報告(家計収支編)によると、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯では、公的年金を含む平均収入が20万9,198円となっています。支出の方はというと、26万3,717円です。
実収入 公的年金等収入 その他 不足分 |
209,198 191,880 17,318 54,519 |
消費支出 食料 住居 光熱・水道 家具・家事用品 被服及び履物 保険医療 交通・通信 教育 教養娯楽 その他の消費支出 |
235,477 64,444 13,656 19,267 9,405 6,497 15,512 27,576 15 25,077 54,028 |
税金、社会保険料等 | 28,240 | ||
可処分所得 | 180,958 |
個人や家族が生活するために必要な支出を消費支出といいます。非消費支出とは、直接税や社会保険料など間接的に必要になる支出のこと。実収入から非消費支出を引くと可処分所得になります。収入の大半は公的年金によるもので、5万4,519円の不足分が発生しています。
この他に考えておきたい費用としては、
子供の結婚費用援助:平均約195万円
子供の住宅資金援助:平均約560万円
住宅のリフォーム:平均約230万円
海外旅行:20万~60万円
車の買い替え:200万円
葬儀費用:195万円
などです。
老後のための貯金はどれくらいが安心?
老後のための貯金はどれくらいあれば安心か計算してみましょう。
収入と支出の金額の差から月々5万4,519円が不足分になります。年間にすると5万4.519円×12ヵ月=65万4,228円、90歳までの25年間では65万4,228円×25年=1,635万5,700円です。
生活費以外に考えておきたい費用は、世帯によって異なります。例えば、住宅のリフォーム費用が10年ごとに100万円かかるとすると100万円×3回=300万円が必要になります。国内・海外旅行の費用は旅行する地域や回数によっても違いがあります。自分や自分の世帯がどのように暮したいか考えてみると、大体の金額が把握できます。
海外旅行:50万円×10回=500万円
クルマの買い替え:200万円×3回=600万円
住宅リフォーム費用:100万円×3回=300万円
葬儀費用:200万円
数年おきに海外を旅行したり手入れの行き届いた住宅に住んだりと、とても素敵な老後ですが、必要な資金は総額で、およそ1,640万円+500万円+600万円+300万円+200万円=3,240万円かかることになりますね。
もう一つ考えておきたいのは、医療・介護にかかる費用です。生命保険文化センターが介護経験のある人に行った平成30年度の調査では、介護が必要になった時に住宅の改造や介護用ベッドの購入など一時的に掛かる費用の平均が69万円、月々の費用の平均が7.8万円となっています。介護を行った期間の平均は4年7ヵ月ですので、全期間では69万円+7.8万円×4年7ヵ月(55ヵ月)=498万円、夫婦二人では約1,000万円かかるということになります。
在宅で介護ができる場合と認知症などで施設での介護が必要な場合ではかかる費用にも違いがありますので一概にいくらかかるとは言えませんが、見込んでおきたい費用です。
65歳までにためておきたい金額とは
65歳になるまでにいくら貯めておけばいいのでしょうか? 公的年金だけで生活するとした場合、90歳までの25年間で約1,640万円が不足する計算になりました。世帯で受け取る公的年金のうち老齢厚生年金は、年収と厚生年金に加入していて期間によって金額が異なりますが、まずはこの約1,700万円を目安に準備をしていきましょう。
老後の不安を解消するために今できること
公的年金を受け取る年齢が引き上げられ、男性は昭和36年4月2日以降生まれの人、女性は昭和41年4月2日以降生まれの人から受取りは65歳になります。制度も定年を65歳にするまたは廃止するなど、長く働くことができるように徐々に整えられています。また、退職金は老後の資金として活用できます。会社の制度や退職金についてできる範囲で確認しておきましょう。
65歳以降も収入を得ることができれば生活にゆとりが生まれますし、月に数万円でもいいので働くことで新しい出会いや生きがいが発見できるでしょう。公的年金は受け取りを繰り下げることができますので、繰り下げを行うと月数の0.7%分の年金額が増額になります。
毎月の支出を見直して貯蓄に回し、iDeCoやNISA、つみたてNISAなどの節税もできる制度を活用しましょう。お金を増やすには勉強が必要です。また、お金だけではなく自分や家族の健康を維持する、長く続けられる趣味や娯楽を始める、家族や親戚、知人との交際を続ける・広げる、なども大切な財産です。支出だけではなく生活全体を見直して、老後が楽しめるように気づいた時から始めましょう。
文・藤原洋子(ファイナンシャルプランナー)/fuelle
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