前週末については、注目されていた米雇用統計において、米・4月非農業部門雇用者数が市場予想19.0万人増に対して26.3万人増、失業率が3.8%予想に対して3.6%になったことで一時ドル買いが強まり、ドル円は一時111.65円付近まで上昇しました。ただ、米・4月平均時給(前月比/前年比)が市場予想+0.3%/+3.3%に対し結果は+0.2%/+3.2%になったことで、金利上昇は長くは続かず、2.57%まで上昇した10年債利回りについても、2.53%まで下落しました。その後に発表された米・4月ISM非製造業景況指数については、57.0予想が55.5という結果になったことで、10年債利回りは2.51%まで下落し、ドル円の上値が抑えられる動きになりました。
米雇用統計以外にも、ペンス米副大統領が「インフレは存在せず経済は活況。今こそ利下げを検討するべき」と発言し、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長も利下げを主張しました。トランプ大統領を筆頭にトランプ政権が利下げを事実上要求するような動きになっていることから、ドル円については、どうしても上値が限定的になっています。
週明けのアジア市場は、ドル円を筆頭にクロス円が下窓を開けてスタートしました。原因は、米中通商協議に関するトランプ大統領のツイートです。中国からの輸入品2,000億ドル相当に対する関税率を10日に現行の10%から25%へと引き上げるとツイートしたこと、さらには、このツイートを受け、NYダウ先物が450ドル超下落したことも、リスク回避の円買いをサポートしたものと思われます。ただ、トランプ大統領が日米通商協議の本格的な交渉を7月の参議院選挙後に先送りしたことで、日米貿易協議によるリスク回避の動きが当面ないとの思惑があり、更なる円買いの動きには至っていません。
今後の見通し
週末に行われた英統一地方選では、大方の予想では保守党が大敗するとの報道でしたが、保守党については事前報道以上の数字である951議席を失いました。事前予想からサプライズだったのは保守党が失う議席の多くを獲得すると期待された労働党です。労働党については、110議席を失う結果となり、一方、自由民主党は537議席増になっています。二大政党が失った議席は自由民主党や緑の党といった親EUの政党などに流れており、足元のBrexitの混乱は保守党だけではなく、二大政党にあるとの有権者の厳しい意見が反映された形となりました。超党派協議に関しては、政府と労働党の協議が 「関税同盟残留のような形」での合意に近づいているとの報道が散見されており、先行き不透明感が強かったBrexit関連の報道も、やや落ち着きを見せています。
明日より、東京市場が長い長い休みを経てオープンします。前週末に、北朝鮮による飛翔体発射を受けた朝鮮半島の地政学リスクの再燃が意識される可能性、そしてトランプ大統領のツイートによるリスク回避の動きが強まっていることもあり、大きく下落方向に乖離して日経平均先物がスタートするようであれば、ゴールデンウィーク中は比較的落ち着いた動きが続きましたが、リスク回避の円買いが強まる可能性は十分ありそうです。
米財務省は、毎年4月の中旬頃に為替政策報告書を発表しているものの、今年は未だ発表されていません。日米貿易協議に向けて延長されていると考えられていましたが、10日の対中関税発動に向けて発表されるようであれば、こちらも思わぬ円買い材料を提供するかもしれません。ゴールデンウィーク中は落ち着いた動きの中でも、下落要因が次々と出てきており、本格的にマーケット参加者が戻ってくると、ポジションの手仕舞を含め、一旦はリスク回避の方向にバイアスがかかっていると考えていいかもしれません。
想定外の材料ではあるが、110.70円でドル円ショート利食い
111.60円でのドル円ショート、狙い通り110.70円にて手仕舞い、利食いです。本来であれば日米貿易協議に関する報道で111円割れを想定していましたが、想定外の米中通商協議に関するトランプ大統領のツイートで111円割れを示現しました。ただ、ドル円の上値が明確に重かったことを背景としたドル円ショートなので、テクニカル的な戦略としては正解だと考えています。
引き続き戻り売り戦略が機能するとの考えから、一旦は本日の下窓を埋める動きを想定し、110.90円付近まで引き付けての戻り売り戦略。今回は下値がそれほど伸びないとの考えから、利食いは110.30円台、損切りが111.10円上抜けを想定します。
海外時間からの流れ
トランプ大統領の対中制裁関税発動のツイートを受け、中国は今週予定されていた米中通商協議をキャンセルする意向と報じられており、リスク回避の円買いが強まっています。一時ドル円は110.80円台まで戻りを試したものの、この報道により再びドル円、クロス円の上値が重くなっています。
本日発表された中国・4月Caixinサービス業PMIについては、市場予想54.2に対して結果は54.5となり、ネガティブサプライズにはならず、指標前には一時豪ドル円で76.80円まで下値を拡大しましたが、徐々に買い戻される動きになっています。
今日の予定
本日は、ユーロ圏・4月サービス業PMI、ユーロ圏・3月小売売上高などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、ポロッツ・加中銀(BOC)総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。