前日については、早朝からトランプ大統領が、ツイッターで「中国からの輸入品2,000億ドル相当に対する追加関税を10日に10%から25%へ引き上げる」と表明したことを受け、米中通商協議が難航するのではないかとの思惑が強まり、ドル円は一時110.285円まで下値を拡大しました。その後は、中国が今週予定されていた米中通商協議をキャンセルする意向との報道が再度弱含む場面もありましたが、劉副首相の訪米を3日ずらす可能性があるものの、ワシントンには木曜に飛ぶとの報道もあり、結果的には110円後半にてNYクローズを迎えました。
ただ、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が「米政府は10日に対中関税を引き上げる」と述べたほか、ムニューシン米財務長官が「中国との貿易協議の方向は大きく変わった」と発言したことで、ドル円は本日のオープニング早々に110.593円まで急落する動きを見せました。その後はじりじりと買い戻されてはいますが、米中通商協議のヘッドラインには引き続き注意が必要になりそうです。特に、楽観的だと思われていた米中通商協議が一転して米中通商戦争の勃発に発展しかねない状況になっているため、この問題が沈静化しない限りは、ドル円の上値は限定的なものになりそうです。
米中通商協議以外のトピックスで、特徴的だったのがトルコリラの急落です。要因としては、「トルコ最大都市イスタンブールの市長選はやり直しとなる」との報道により、同国の政局不安から通貨リラを売る動きが膨らみました。トルコリラ円では、一時18円半ばの水準から18.021円まで急落しており、統一地方選の余波がここにきて表面化してきています。これでエルドアン大統領率いる与党AKPが逆転勝利するようであれば、トルコリラは再び急落のリスクを負っていると考えられます。
今後の見通し
ドル円については、上述した米中通商協議が、楽観的な見通しから一転貿易摩擦に発展しかねない状況になったこと、トランプ大統領を筆頭としたトランプ政権(トランプ大統領の他に、ペンス副大統領、クドロー米国家経済会議NEC委員長)によるFRBへの利下げ圧力、そして地政学的リスク(北朝鮮による飛翔体発射を受けた朝鮮半島の地政学リスク、イラン近海への米空母派遣を受けた中東の地政学リスク)などが上値を抑える材料になっているため、従来の112円レジスタンスは当然ですが、111円台前半から上値が重くなるかもしれません。
トランプ大統領が、日米通商協議の本格的な交渉を7月の参議院選挙後に先送りしたことにより円安に傾きやすい状況ではありますが、ドル売り円買い要因が多数意識されていることで、戻りはあるものの上値が重いといった相場地合いになっています。戦略的には、戻り売りを中心としたトレードがうまく嵌りやすいのではないでしょうか。長い休暇明けの日経平均株価についても、一時22,000円を割り込む場面もありましたが、連休前に想定されていた暴落シナリオには至ったいないため、引き続き狭いレンジでの戻り売りが基本戦略になりそうです。
110.90円でのドル円ショートメイクに成功
目先反発するとの思惑通り、110.90円にてドル円ショートメイク成功です。112円もそうですが、今度は111円が心理的なレジスタンスラインとして意識されてくるかもしれません。利食い、損切りの水準は変更なく、利食いは110.30円台、損切りが111.10円上抜けとします。
海外時間からの流れ
前日の早朝はトランプ大統領のツイート、そして本日の早朝にはムニューシン米財務長官、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表による発言により、ドル売りになっています。楽観論的な見方をされていた米中通商協議ですが、急転直下の展開になっており、ドル円を筆頭にクロス円は上値を抑えられています。劉副首相の訪米が現段階では予定されているので、下値も限定的になっていますが、本格的に訪米キャンセルの動きになるのであれば、ドル円は110円割れはおろか、109円割れも視野にはいってくるかもしれません。
今日の予定
本日は、豪中銀(RBA) 政策金利、独・3月製造業受注、加・4月Ivey購買部協会指数、米・3月JOLT労働調査などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、カンリフ・英中銀(BOE)副総裁、カプラン・ダラス連銀総裁、クオールズ・FRB副議長、ホールデン・MPC委員の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。