平均寿命の過去のデータを信用してはいけない

退職後の資産形成
(画像=PIXTA)

モーニングスター社の退職調査の責任者は、従来の戦略や仮定が時代遅れである理由を説明している。

モーニングスター社の退職調査責任者であるDavid Blanchett氏によると、顧客の退職計画を支援するアドバイザーは、資産の蓄積だけでなく、予想される負債にも注目すべきだという。

「資産と負債を別々に考えたほうが良い」と、今週シカゴで開催されたMorningstar Investment ConferenceでBlanchett氏が述べている。また「これから、30年、40年の間に資産は何を稼ぐのか、負債や支出ニーズはどうなるだろうか」と続けている。

「退職基金からの4%の脱退規定という従来の考え方は、将来の退職者には適切ではないかもしれない。この規定は米国株式・債券市場の過去のリターンに基づいており、将来のリターン予測に基づいていない。30年以上のインフレによって所得が一定に増加すると仮定しており、これは現実でないだろう」とBlanchett氏が指摘している。

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例えば、米国の大型株では、1926年以降の年間平均利回り10%の利益は期待できず、10年物米国債の年間平均利回りが過去の5.5%を維持する可能性は低いだろう。

したがって、予想リターンを調整する必要がある。今後10年間の米国の大型株の適正な年間収益率は0.95%、モーニングスター社の予測だと、国際株式の年間収益率見通しは5.4%、小型株の年間収益率は2.88%とBlanchett氏が述べている。

これらの予想される低い期待リターンによる最も影響を受けるのは、退職から約5年になる退職者になるだろう。現在の退職金制度では「より低い予想リターンを組み入れなければならない。4%のルールは、過去のデータが示すほど安全ではない」

退職後の計画における支出面(負債)について、アドバイザーが現実的な期待に焦点を当てることを推奨した。インフレ率を上回って、高齢化に伴い消費が増加するとの前提は誤りだ、とBlanchett氏は指摘した。

さらに「支出が改善するため、退職者の支出はインフレ率を上回らないだろう」と続け、高齢になるにつれて医療費が増加するが、旅行やその他の活動や生活費の支出は減少するからである。これは富裕層の退職者にも当てはまるという。

「平均的な退職者は65歳で年間10万ドルを支出しているが、95歳までには75,000ドルを支出している」

退職後の計画で考慮すべきもう1つの重要な点は、退職者が自分の資産より長生きするかどうかという長寿リスクである。ここでも、上昇し続けている平均寿命の従来の分析を用いることについてBlanchett氏は警告している。

「顧客はこれまでの平均的なデータでは対処できないだろう。裕福な米国人に特有のリスクについて考えるべきである。上位1%の男性の平均寿命は今日の約90歳に対し、残りの99%は80歳で、上位50%の所得者の寿命は、下位半分の寿命よりもはるかに速く伸びている」

「あなたのクライアントはどこに位置しているだろうか?」深く分析すべきであると指摘している。

生涯所得保証に関しては、年金だけが対処できて、社会保障を活用することが最もふさわしいだろう。

また最悪の場合、資金が不足しているように見える退職者は、通常であれば裁量的支出を調整可能であることを言及している。

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Bernice Napach
ThinkAdvisorのシニアライターで、金融市場、アセットマネージャー、ロボアドバイザー、大学の企画立案や退職問題を主に書いている。ヤフー・ファイナンス、ブルームバーグTV、CNBC、ロイター、インベスターズ・ビジネス・デイリー、ボンドバイヤーでの勤務経験あり。ニューヨーク・タイムズ、The Street.com、スターレジャー、レコード、バラエティ、ワースの各雑誌で執筆。SUNYストーニーブルック大学で社会福祉の理学士号を取得している。