前日については、トランプ大統領のツイートから始まった米中通商協議への先行き不透明感ですが、同大統領が「劉・中国副首相は通商協議を修復させるプランを持っている」と発言すると110.25円付近までドル円が買い戻されましたが、米通商代表部(USTR)が「2,000億ドル相当の中国輸入品に対する関税を10日に現行の10%から25%に引き上げる」と官報で正式通知すると、再びドル円は失速する動きとなりました。中国商務省が「米国の対中関税が発効すれば、中国は報復措置を講じる可能性がある」との声明を発表したこともあり、110円付近で一旦は様子見姿勢が継続しています。

プラスの見方としては、トランプ大統領が「劉中国副首相は通商協議を修復させるプランを持っている」と発言していること、もう一つは、サンダース大統領報道官が「中国から米国との合意に前向きな示唆があった」と発言していることですが、中国共産党の機関紙「人民日報」の系列紙では「中国は協議を一時的に中断する用意がある」との報道もあることから、焦点は明日ということになり、本日は動きづらい地合いになりそうです。

ポンドについては、「英国の欧州連合(EU)離脱を巡る与野党協議が決裂寸前」との一部報道もあり、ポンドが売られました。再びBrexit交渉への不安が露呈したこともあり、今後はポンドの上値の重さが目立つ展開になるかもしれません。また、今月23?26日に実施される欧州議会選ですが、英与野党協議で妥結の目処が立たず、英政府は参加を表明しています。この時点で、当初のメイ英首相のプランが崩れていることもあり、状況は引き続き厳しいものであると暗に示唆してるものと思われます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

やはり、米中通商協議の行方が今後のマーケットの中心になりそうです。米中通商協議が合意に至らなかった場合、米国側は、10日金曜日の米国東部時間の午前0時1分(日本時間10日午後1時1分)に、2,000億ドルの輸入品に対して対中制裁関税を10%から25%に引き上げると警告しています。そして、中国は、その1分後に報復関税を発動すると警告しており、このシナリオ通りの展開になるのであれば、やはりドル円は急落、109円割れ水準も現実味を帯びてくるかもしれません。ただ、合意になるようであれば、ドル円は110円後半に向かう動きになるのではないでしょうか。

米中通商協議以外での重要ポイントとしては、南アフリカの総選挙になりそうです。かつて、アパルトヘイト(人種隔離政策の撤廃運動)を率いた与党は、経済格差や汚職への不満からかつてない逆風にさらされており、過半数は維持できるものと考えらえていますが、現在の60%程度の議席から50%程度まで落ち込むのではないかとの懸念があります。結果については、11日までには判明する見通しです。

米中通商協議が合意に至った場合も、トランプ大統領はイランに対する新たな制裁措置を導入する大統領令に署名しており、イランが態度を根本的に変えなければ一段の措置を取ると警告しています。ホワイトハウスの声明によると、署名された大統領令は鉄鉱石、鉄鋼、アルミニウム、銅を標的とするものであり、非石油部門では最大の収益元で輸出収入の約10%を占めている模様です。

日本時間10日午後1時1分まではドル円は難しい

日本時間10日午後1時1分に対中制裁関税を10%から25%に引き上げるかどうかが判明しますが、それまではドル円の地合いは難しいものになりそうです。目先売られやすい通貨を考えると、与野党協議に不安のあるポンドが筆頭候補になりそうです。ポンド円が143.30円付近が目先レジスタンスになっているため、この水準まで引き付けての戻り売り、利食いは142.30円台、損切りは143.80円上抜けとします。

海外時間からの流れ

RBNZ(NZ中銀)の金融政策委員会(MPC)は、直近の金融政策声明において政策金利を25bps引き下げて1.50%とすることを発表しました。一部では、8月に再度25bps引き下げるのではないかとの見方もあり、NZドルは勿論のこと、豪ドルについて上値の重い展開が想定されます。

今日の予定

本日は、米・3月貿易収支、米・新規失業保険申請件数、加・3月貿易収支、加・3月新築住宅価格指数などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、パウエル・FRB議長、ボスティック・アトランタ連銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。