シンガポールは日本以上のペースで高齢化が進行しています。国際連盟によると、シンガポールの高齢化率(国民65歳以上の人口が占める割合)は、2016年に12.4%となり、14年後の2030年には24%まで伸びるだろうと試算されています。

日本の高齢化率は2016年には12%でしたが、22年後の2012年には24%に到達しています。こう考えるとシンガポールは非常に早い高齢化が進んでいると言えます。

そんなシンガポールでは、高齢化対策や医療費抑制を目指し、最新技術を積極的に導入し、官民が協力してイノベーションを起こそうと取り組みを進めています。

ブロックチェーンベースの保険ソリューションを開発

シンガポール,医療
(写真=J.Score Style編集部)

シンガポールに拠点を置く「LumenLab」が、ブロックチェーンベースの自動化保険ソリューション「Vitana」を開発し、現在試験的に進めています。これは、妊娠中の糖尿病患者を対象に、データに基づいて保険の支払いを決定するパラメトリック保険商品です。パラメトリック保険とは計測されたデータによって動的に保険料を決定する保険のことです。

ブロックチェーン技術により、安全かつ低コストで被保険者の損害額などを把握することが可能になったことで、不払い問題を軽減し透明性を高めることができます。Vitanaの場合は、スマートフォンに専用のアプリを入れることで症状を感知したり、スマートコントラクトによる自動決済が可能です。

シンガポールでは、医療情報がシステムごとに分けられており、互いに連携させることが難しく問題視されていました。Vitanaはこの状況を打開し、妊婦と新生児の命を守ることを目指しています。

ブロックチェーン技術で遠隔医療が実現可能に

また、同じくシンガポールに拠点を置く「Bowhead health」は、ブロックチェーン技術を活用することで、遠隔医療を実現しようとしています。同社はブロックチェーン搭載のデバイスを開発し、利用者が自宅にいても医師がインターネット経由で健康状態をチェックすることを可能にしています。

具体的には血液や唾液のサンプルをデバイスで読み取って検査し、その結果を医師が確認し利用者にアドバイスします。ブロックチェーン技術を利用することで、一連のプロセスでプライバシーを守りつつデータを安全にやり取りできるのです。

医療費増大や医師不足の解消にも期待できる

シンガポールでは急速な高齢化や医療費増大が社会問題となっていますが、それをチャンスと捉え課題解決を目指すブロックチェーンプロジェクトが、これら以外にも次々と生まれています。

では日本でこの知見をどのように生かせるでしょうか。

事例として取り上げたケースで特徴的な点は「パラメトリック性」「自動化」「リモート」の3点があげられるでしょう。均質的な基準ではなく動的に保険料が決定されるような方法は、IoTの進展も相まってより精度を上げていくでしょう。また、そのように収集されたデータに応じて自動的に支払いやデータ送信することで、リアルタイムな処理も可能です。

リモートというキーワードはIT技術が生まれてからつねに言われてきましたが、ブロックチェーン技術によってより多くの複雑なことができるようになりました。例えば、高齢者の多くは外出することが次第に困難になり、病院に行くことが難しくなる傾向にあります。また、途上国であるほど病院や医師が不足していて、これらの問題を解決できるのです。

先ほどの事例のBowheadは、ブロックチェーン技術を利用することで、プライバシーを守りつつ、遠隔医療を可能にしています。このような特徴を応用することで、状況に合わせた柔軟な仕組みが構築でき、ひいてはイノベーションを起こすことも可能だと考えられます。

超高齢社会の日本にもブロックチェーン技術が必要

日本の医療費は年々増加を続け、平成28年度で約42兆1,381億円となっています。これは、日本国民一人あたり約33万円を1年間で負担していることになります。また今日、世界各国が直面している高齢化は、人類が経験したことのないレベルのものであり、日本はその先陣を切っています。その意味では、日本の高齢化や医療費の増大は、私たち一人ひとりに着実に影響を与えています。

以上のように考えれば、これから迎える超高齢化時代では、効率的な支出による医療費の圧縮が求められてきます。ブロックチェーン技術を活用すれば、一人ひとりの状況に合わせカスタマイズされたダイナミックな医療制度が構築できるでしょう。多くの人々が健康状態を検知する何かしらのデバイスを持ち、各個人に合わせた医療や保険が行われるような未来が待っているのかもしれません。(提供:J.Score Style

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