「本日午後1時の東京外国為替市場は、1ドル113円をつけました」こんなニュースを耳にしたことはあるだろう。しかし、職業として関わらない限りは普段の生活で為替レートの変動が気になって仕方がないという方はあまりいないだろう。だが、実際には私たちの生活に大きく影響を及ぼしていることをご存知だろうか。

訪日外客数の増加で国内消費に影響

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(写真=PIXTA)

訪日外客数が年々増加していることをご存知の方は多いだろう。この訪日外客数の動向も為替レートの変動の影響を受けているのだ。2017年 (1月~12月) に日本を訪れた訪日外客数は2,869万人で前年比19.3%増の過去最高となった。入国ビザの要件緩和などの効果もあるが、2013年のアベノミクスによる円安進行が訪日旅行の割安感に繋がり、訪日外客数が急増した引き金となった要因として大きいと考えられる。円安が進行することで、外国人にとっては日本で安く買い物が出来ることにつながる。大きな魅力の一つとなるわけだ。

観光庁の推計ではインバウンド客は2017年に年間4兆4,161億円を日本で消費した。為替の変動はインバウンド客と日本の消費動向、日本の景気動向にも大きな影響を与えているのだ。

企業業績に影響を与え、給与や賞与にも影響を及ぼす

上述のように為替レートの変動は企業業績にも大きな影響を与える。

特に外需産業に属する企業の場合には、為替レートの変動がよりダイレクトに関係してくる。例えば、日本を代表する輸出企業の自動車業界などは、為替レートが1円円安に振れると数十億円から数百億円の業績上振れが期待される。もちろん一概に「円安=賃金上昇」となるわけでないが、業績が上振れすれば給与や賞与に反映される可能性は高くなるだろう。逆に輸入企業であれば円安が進行すると業績が下振れする可能性がある。

外国為替の変動に対して、売上高や利益がどの程度影響を受けるかを示す影響額を為替感応度と呼び、会社四季報の巻末ページ等で確認することができる。投資を考えている企業の為替感応度を把握することで、業績への影響がありそうかどうかも予想ができるというわけだ。

実は、生活の身近な項目にも影響を与えている

ここまでの紹介でまだ為替レートの変動が自分ごととして実感できない方もいるだろう。より身近な項目としては、食費代や光熱費・ガソリンといったエネルギー代への影響が挙げられる。

では、なぜ為替レートの変動がこうした物価に影響を与えるのだろうか。為替レートが円安に振れると、円の価値が下がり外貨の価値が上がるため、輸入食品の国内での販売価格は上昇する。たとえばドル円が100円から120円の円安になると、それまで円換算にすると100円で買えていた食品が120円を払わないと手に入れることができなくなるというわけだ。

そして、日本は食費やエネルギーを海外からの輸入に頼っていることが影響を受けやすい一因として挙げられる。農林水産省のデータによると2017年度の日本の食糧自給率はカロリーベースで38%となっており、62%を輸入に頼っていることがわかる。また、資源エネルギー庁のデータによると2017年度の日本のエネルギー自給率は9.5%となっており、エネルギーの約90%を輸入に頼っている。日本のエネルギー源の大半は輸入で賄っており、外貨建てで決済されている。したがって、例えば原油価格が変わらなくても円安になれば、ガソリン価格は上昇するというわけだ。

2013年のアベノミクス以降、80円台だったドル円レートは15年には一時125円までの円安に振れた。2017年以降、円安進行による原材料高を理由に値上げが実施されたのは記憶に新しいだろう。例えば、チーズやハム、ベーコンといった食品、ブランド品、輸入家具といった商品を提供する企業が値上げを実施した。あるいは販売価格は変えずに量や個数を減らし、実質値上げをおこなっている企業も存在している。

生活への影響をヘッジするためにはどうすれば良い ?

このように、一見すると自分にとっては関係ないことのように思える為替レートの変動が実は生活に大きく影響していることがわかる。そして、為替レートが「円安に進むのが良い、円高に進むのが悪い」といった単純な判断ができないこともご理解いただけのではないだろうか。仮に円安が進行し、企業業績が改善して給与がアップする人であっても、原材料が高騰すれば生活費への影響は避けることが難しいからだ。

では、為替レートの変動にどう対抗すればよいのか。ひとつの手段として、ここでは外貨を保有することの有効性をご紹介しよう。

仮に円安により物価上昇が進行したとしても、外貨を保有していれば円安・外貨高となり保有している外貨の価値は上昇する。外貨を保有するカタチで資産の目減りを防ぐことができるといえる。同様に、円安が進行することで企業業績が悪化する会社に勤めているのであれば、外貨を保有することで給与は減るが保有する外貨でカバーできるといったように対抗ができる。リスクヘッジの手段として外貨保有を検討してみてはいかがだろうか。(提供:大和ネクスト銀行

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