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(画像=iStock.com/Vincent-Ng)

飲食店の売上を左右するものの一つである「立地」。ここぞと決めて出店したはいいが、意外と人通りが少なかったり、ターゲットの生活エリアから外れていたりして苦労している店もあるのではないだろうか。

今回の「飲食店リサーチ」では、店舗の立地に関するアンケート調査を実施。どのくらいの飲食店が現在の立地に満足しているのか、また不満を感じているとしたら何がネックになっているのか。アンケート結果を詳しく見ながら、立地に不満を持つ方に向けて課題解決の糸口を探る。

調査概要

調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:212名
調査期間: 2018年2月6日~2018年2月12日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果はこちら

回答者について

本調査にご協力いただいた回答者のうち71.2%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は61.3%(首都圏の飲食店の割合は77.8%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。

約4割の飲食店が立地に「不満足」と回答

まず、現在の立地について満足しているかどうかを尋ねたところ、「満足(22.2%)」「やや満足(25.0%)」「普通(11.8%)」「やや不満足(30.7%)」「不満足(10.4%)」という結果に。この結果から、約4割の飲食店が現在の立地に何かしらの不満を抱えていることがわかる。

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約4割の飲食店が立地に「不満」を抱えていることがわかった(画像=Foodist Media)

飲食店の立地は一度決めてしまうと簡単に変えることは出来ない。それだけに物件選びには慎重さが求められるわけだが、気をつけるべきポイントが予めわかっていれば失敗する確率も低くなる。実際にはどのようなことに不満を抱いているのか、次のアンケート結果を見てみよう。

最も多い不満は「通行量が少ない」

立地について「不満足」「やや不満足」と回答した人に対し、その理由を尋ねたところ、最も多かったのは「通行量が少ない(59.8%)」こと。人通りが少なく、通りがかりに店を知ってもらう機会が少ないことに課題を感じているようだ。

「通行量が少ない」ことに対して不満を持つ店舗が、どのような対策を行っているかというと、「ネットを活用して集客する」(東京都/ダイニングバー)というように、SNSやグルメサイトを活用してお店を知ってもらう努力をしているケースが多いようだ。

そのほか、「大通りに看板を出している」(東京都/フランス料理)という声も。同様に、人通りが多い場所でチラシを配ったり、クーポンをポスティングするなどして、まずは店の存在を知ってもらうことが大切だといえるだろう。

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(画像=立地に関して最も多い不満は「通行量が少ない」こと(画像=Foodist Media))

視認性が悪い、家賃が高い、駅から遠い……。立地の悩み、どう解決する?

通行量に続き、不満足の理由として多くあがったのが「視認性が悪い(47.1%)」「賃料(坪単価)が高い(40.2%)」「最寄り駅から離れている(27.6%)」という回答。各店、それぞれの課題に対して、どのような対策を取っているのだろうか。

視認性が悪い

「通行量が少ない」ことと同様に、視認性が悪いとお店を知ってもらうチャンスが少なくなる。そのため、「どのような店かわかりやすいように、アイコン的な看板を設置している」(東京都/カフェ)というように、看板やのぼりで店があることをアピールするという声が多くあった。

また、「リピートしてもらえるように、一度来店してくれた客を大事にする」(東京都/居酒屋・ダイニング)というように、来店した客のリピート化に注力することも大切。この場合、次の来店につなげるために、次回利用可能なクーポンやスタンプカードを配布するのもおすすめだ。

家賃が高い

「家賃の高さ」を不満に思う場合、家賃交渉で賃料を下げること以外は、売上を伸ばす、または他の経費を削ることでカバーするしか方法はない。そのため、「客単価を維持するために、アルコール類のクオリティーをキープしている」(東京都/フランス料理)というように、比較的、利益率の高い飲料類の売上をアップさせる施策を立てる店も。

また「徒歩圏内15分以内にある企業にアポを取り、限定サービスなどを提案しています」(大阪/ラーメン)というように、リピーターになってくる可能性が高い近隣企業の従業員に向けて、積極的に営業するケースもあった。

最寄駅から離れている

続いて、駅から離れている立地に不満を感じているケース。「車で来た人がアルコールを飲んでも安心して帰れるように、無料の運転代行サービスを実施している」(奈良/居酒屋・ダイニング)というように、アクセスの悪さをカバーする施策を講じている店舗もみられた。

このほか「通販や配達を行う」(大阪/そば・うどん)という声も。今後は「ファインダイン」「UberEATS」といったデリバリーのアウトソーシングサービスを活用するのも選択肢のひとつとなっていくだろう。

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(画像=iStock.com/jikgoe)

「立地調査」は飲食店開業のリスクを減らすことができる

これから店舗物件を探す人が、ぜひ行ってほしいのが立地調査。希望する物件の近くにどんな人がどれくらい住んでいるのか、出店予定業態のニーズはあるのかなどを事前に調査することでリスク回避ができるほか、その土地にあった集客の戦略を立てることもできる。

今回のアンケートで、物件を探す際に行った調査について尋ねたところ(複数回答可)、「周辺人口や駅乗降者数などのマーケットデータの調査(42.5%)」「近隣店舗の客数の計測(34.4%)」「店前や周辺の通行量の計測(32.1%)」という回答が得られた。このうち、現在の立地に「満足」、もしくは「やや満足」している店舗は、具体的にどのような立地調査を行ったのだろうか。

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(画像=立地調査を行わず出店するケースは約4割(画像=Foodist Media))

通行量調査、マーケット調査

「朝の通勤ラッシュ時、ランチピークタイム時(正午~13時)に、1時間で何人通ったかを計測しました。50名の集客を考えているならば、最低でもラッシュ時もしくはピーク時にその5~10倍歩いている状態でないと、と考えています」(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー) 「時間帯を変えて店前調査をする。また、周辺住民の所得も把握する。自店がターゲットとする客層と同じ客層の店舗があるかないか、また繁盛しているかどうかも調査する」(奈良県/居酒屋・ダイニングバー)

地道に足を使って調査

「とにかく足を使って、しらみつぶしに物件を見て回りました。その過程で店舗に適した立地が明確になったり、見る目が養われたりするのではないかと思います」(千葉県/カフェ) 「とにかく足を使う。物件を数多く見る。一等立地にこだわらない。駅や繁華街から遠い、路面店ではないなどの場合は、その立地・物件での戦略、特に集客を予めイメージしておく」(東京都/バー)

土地の将来性に関する調査

「その土地の周辺環境が数年後にどう変化するかを考えて出店場所を決めました」(愛知県/カフェ) 「今後、人が増えそうな所を見極める」 (大阪府/フランス料理)

いかがだっただろうか? 飲食店の成功には「立地」が大きく関わってくる。店のコンセプトをしっかりと練り上げ、それに適した立地を検討し、十分な調査のうえ契約する店舗物件を選びたいものだ。(提供:Foodist Media

執筆者:戸田千文