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飲食店開業には様々な準備が必要だ。物件探しやメニュー開発、スタッフ教育、広告など、やらなくてはいけないことは数え切れないほどある。何から手をつけていいか悩む方も多いのではないだろうか。そこでここでは、まず一番最初に取得しなくてはならない資格や届け出について改めてまとめておこう。

飲食店を開業するのに必ず必要になる資格

食品衛生責任者

各都道府県の食品衛生協会が開催している公衆衛生学、食品衛生学など計6時間の講習を受講すれば取得できる資格。受講費は1万円ほど。

全国共通の資格なので、例えば神奈川県で取得して、東京都内で開業するといった場合も基本的には問題ない。また、保健所に店舗の営業許可申請を出す際には、交付された食品衛生責任者手帳などを提示する必要がある。開業する3カ月くらい前までには取得しておきたい。1~2カ月先まで予約が埋まっていることもあるので、早めに確認しておこう。

防火管理者

日本防火・防災協会が全国各地にて講習を開催している。収容人数が30名以上の飲食店を開業する場合には取得が必要。収容人数30名以下の場合は不要とされている。

収容人数が30名以上、延べ面積が300平方メートル以上の場合の甲種講習では、防火管理にかかる訓練及び教育、消防計画など、2日で約10時間の講習を受ける必要がある。収容人数30名以上、延べ面積300平方メートル未満の乙種講習は、甲種の基礎的な知識及び技能を1日約5時間で学ぶ講習となる。

また、受講料は平成30年3月1日より、甲種講習は6500円から7500円に、乙種講習は5500円から6500円に改定されている。

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飲食店の開業に調理師免許は不要?

飲食店開業には必須と思われがちだが実はそうではない。ちなみに「調理師」とは名称独占資格と言われる国家資格であり、有資格者以外が調理師を名乗ることは法令で禁止されている。

メリットとしては、調理師免許があれば、先述の「食品衛生責任者」の講習が免除される点だ。また、「ふぐ調理師」になるためにも必要な資格である。飲食店開業に必ず必要な資格ではないが、安心、信頼面でもメリットがあると言えるだろう。

飲食店開業に必要な申請や届出

飲食店営業許可申請

食品を調理したり、客に飲食させる営業をする場合には、必ず保健所に申請をしなくてはならない。喫茶店営業許可申請というのもあるが、こちらは「酒類以外の飲物、または茶菓を客に飲食させる営業」なので、ほとんどの場合が飲食店営業許可申請になる。

飲食店営業許可は、申請すれば許可されるという単純なものではない。厨房設備や手洗い、換気扇、食器棚など、店舗の設備面においてかなり細かい決まりがある。店舗設計者とともに着工前に所轄の保健所に相談に行くことをおすすめする。

申請時には、店舗の見取り図、手数料(東京では18,300円)、食品衛生責任者手帳などが必要になる。工事完了の2週間から10日前を目安に申請しよう。万が一、申請忘れなどで無許可営業となった場合は、食品衛生法で罰せられてしまうのでご注意を。

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菓子製造業許可申請

いわゆるパン屋やケーキ屋など、菓子等を製造する営業をする際に必要な許可。こちらも設備面で細かい基準が決められている。イメージとしては小さな工場のように、厨房を密室状態に囲う必要があるのだ。通常の飲食店よりも内装工事費が高くなる可能性がある。

ちなみに、カフェやレストランでパンやケーキを提供する場合はどうかというと、菓子製造業にあたらない場合が多い。菓子製造業に該当するのは、テイクアウトを中心で営業する場合、卸業をおこなう場合だ。詳しくは保健所に相談をしてみよう。

深夜酒類提供飲食店営業開始届出書

深夜0時以降も酒類を提供する場合に必要な届出。届け出先は、保健所ではなく警察署になる。お店の周囲の略図や見取り図、営業許可証や賃貸契約書のコピーなど提出物は多い。

ただし、主食と認められる食事を提供している場合は、届出の必要はないとされている。例えば、ラーメン、牛丼、パスタなどを中心に提供している店ならば、届出なしで問題ないということだ。また、勘違いされやすいが、この届出は風俗営業許可とは異なるので、お店で「接待」をしてはいけない。あくまで、深夜にお酒を中心に提供するお店の届出ということを覚えておこう。

開業・廃業等届出書

個人事業で開業する場合に必要な届出。これは税務署の管轄になる。特に事前に準備するものなどはなく、直接窓口まで行って、その場で済ませることもできる。また、最高65万円の控除が受けられる青色申告にする場合には、「青色申告承認申請書」も同時に提出しよう。

開業・廃業等届出書は事業開始から1カ月以内、青色申告承認申請書は2カ月以内に提出しなくてはならない。営業スタートした最初の定休日などに、忘れずに税務署で手続きを行おう。

以上、開業前にかならずおさえておきたい資格と届出をまとめてみた。開業直前で時間がない場合は、行政書士などに依頼する方法もある。余裕があれば、早い段階で一度時間をとって直接保健所などに相談に行ってみることをおすすめする。(提供:Foodist Media

執筆者:大槻洋次郎