上場後の利回りの予測

ヘルスケアリートのメリットは、ヘルスケア施設の運営社と長期の賃貸契約を結ぶことで得られる安定した賃貸収入です。また、ヘルスケア施設がそもそも景気のサイクルの影響を受けにくいものであることから、他のJ-REITと比べると収益の振れが比較的少ないことも挙げられます。その一方で、ヘルスケア施設は、従来の商業用不動産や住宅用不動産とは異なり、違ったリスクや問題を持つことがデメリットとなります。こうした物件を取得するときのデューティリジェンス(物件調査)や継続的なモニタリングの難しさが挙げられます。こうしたメリットは享受したいもののヘルスケア施設という全く新しい投資対象になることから、投資家の視点からすれば徐々に投資の裾野をヘルスケア施設にも広げていくような形になるのだと思います。

また、投資法人の視点からしても、最初から低い利回りを設定したのでは資金が調達出来ませんので、高めの利回りを意識し設定をしてくることが考えられます。事実、すでにヘルスケア施設まで投資を拡大しているリートの保有するヘルスケア施設の取得時利回りは、5.8〜7.3%と比較的高めとなっています。こうしたことを総合して考えますと、上場後しばらくは、利回りは比較的高めに推移し、投資家がこの新たな商品に慣れるに従ってJ-REIT全体の平均利回り辺りに収斂してくるのではないでしょうか。


ヘルスケアリートの今後は期待大

高齢化の進展と国策により、注目を集めるヘルスケアリート。従来の商業用不動産や住宅用不動産とはかなり趣の異なるヘルスケア施設をどう扱うかといった難しさから、最初は誰しもが試し運転しながら様子をみるといった感じになるのではないでしょうか。

しかし、安定的な賃貸収入と景気の影響を受けにくいというJ-REIT内のディフェンス銘柄的位置づけは、投資家にとってだけではなく、ポートフォリオ分散の観点から投資法人にとっても魅力的な商品になるのだと思います。そして、すでに導入されている米国でヘルスケアリートのリート全体に占める割合が10%以上あることを考えますと、日本でも導入後ヘルスケアリート市場規模拡大は十分期待出来るものだと思います。そして、それは高齢者社会を迎える日本にとって、重要な役割を果たすことにつながるのだと思います。

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