飲食店の経営者にはさまざまなタイプがいる。料理人出身の経営者もいれば、ソムリエやサービスマンを経て開業した人、なかには飲食業未経験で店舗オーナーとなるケースだってあるだろう。飲食店を経営するまでの道のりはさまざまだが、「経営者」となれば、皆が共通して磨かなければいけないスキルがある。それは「数字」をみる力だ。
ここでは飲食店を経営する上で特に大切な「数字」について解説する。数字は苦手という方やこれから飲食店経営に取り組むという方も最低限の数字は把握しておくとよいだろう。
飲食店経営において大切な数字1:売上高
飲食店を経営するうえで、まず把握しなければいけないのが売上高である。年間の売上、1か月の売上、1日の売上などはしっかりと把握しておこう。ただし、売上の変化やそこから課題や問題点を見つけるためには、売上を分解して考える必要がある。では、どのように分解して考えればいいのだろう?
基本の考え方は「客数×客単価」である。例えば売上が減っているのであれば、客数が減っているのか、客単価が減っているのかによって打つべき手も変わってくる。客数が減っているのであれば、お客様が来てくれるような施策が必要となる。一方、客単価が減っているのであれば、来てくれたお客様がより多く注文してくれるような施策が必要となる。
客数と客単価に分解することに慣れてきたら、もう少し分解して考えてみるといいだろう。客数は新規客と既存客に分けることができる。どちらを増やしたいかによって打ち手も変わってくるだろう。また、客単価はさらに数と価格、つまり買い上げ数と1品単価に分解することができる。これらの数字を把握しておくと、より細かい分析が可能となる。
業態や立地によっては、売上を時間帯や曜日で分解することも必要となってくる。ランチとディナーの時間帯で客単価や客数が大きく異なる店舗も多いだろう。例えば客数の変化を考えてみても、ランチの時間帯の客数が減っているのか、ディナーの時間帯の客数が減っているのかなどを把握することで、より効果的な打ち手を考えることができるはずだ。
飲食店経営において大切な数字2:FLコスト
飲食店を経営する上で次に大事な数字がFLコストである。Fとは売上に対する原価率、Lは売上に対する人件費率のことであり、この2つの合計をFLコストと言う。
原価率は飲食業で平均すれば30%程度と言われるが、同じ飲食業でも業態やビジネスモデルによって変わってくる。原価率を20%程度に抑える分、人件費をかけてサービスを重視する店舗もあれば、原価率を50%程度に設定して料理の品質を重視する店舗もある。計画通りの原価率になっているか、予定外に原価率が高い、あるいは低くなっていないかを確認しよう。
人件費に関しては、特にアルバイトの人件費の管理がポイントとなる。売上計画に対して適正なスタッフ配置ができず人件費率が高すぎると、スタッフが多すぎるという判断になる。逆に人件費率が低すぎると、スタッフが少なすぎてお客様に十分なサービスを提供できていない可能性もある。
一般的な飲食店ではFLコストは60%以内におさまると、利益が出ると言われている。逆に65%を超えると赤字の可能性が高くなると言われているので、基準の数字として把握しておくといいだろう。
飲食店経営において大切な数字3:損益分岐点売上高
損益分岐点売上とは利益がゼロとなる売上であり、赤字の店舗はまず損益分岐点売上を超えることが目標となる。ここではその計算方法を説明する。
変動費と固定費という概念を押さえておこう。変動費とは、売上に応じて変わるコストのことである。例えば、原価である。一方の固定費とは、売上が変わっても変わらないコストである。月額固定金額の賃料がこれにあたる。人件費や光熱費なども厳密にいえば売上に応じて変動するコストであるが、飲食店の損益分岐点を計算するにあたっては、変動費=原価、固定費=販売管理費と覚えていいだろう。
損益分岐点売上は以下の式で計算する。
損益分岐点売上=固定費÷(1-変動費率)
変動費率とは売上に占める変動費の割合であり、変動費=原価とするならば変動費率=原価率である。例えば、売上350万、原価105万円、販管費210万円の店舗があるとする。変動費=原価、固定費=販売管理費とすると、
固定費=販売管理費=210万円
変動費率=原価率=原価÷売上=30%
となる。ここから、損益分岐点売上高を計算すると、
損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)=210万円÷(1-30%)=300万円
と計算できる。自店舗の数字を使って損益分岐点売上高を確認しておくといいだろう。
さて、今回は飲食店を経営する上で大切な3つの数字について説明した。飲食店を健全に経営していくためには、数字に基づいた行動が求められる。自店舗の数字をしっかりと把握して、ぜひ次の施策を考えるために活用してほしい。(提供:Foodist Media)
(執筆者:若林和哉)