米中間の貿易摩擦が激しさを増す中、企業が生産拠点を中国外へ移転する動きが加速している。第1候補はインドやベトナムだが、フィリピンやインドネシアといった東南アジア諸国も有力だ。現地に進出する日系企業に商機が広がる可能性もある。
米中摩擦に絡んでは、中国周辺で漁夫の利を得る国々もある。米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の生産を担うEMS(電子製品の受託製造業者)世界最大手の鴻海(ホンハイ)精密工業は、これまでの中国に代わり最新モデルをインドで製造する方針を示唆。首都ハノイが地理的に中国と近いベトナムは、中国からの生産シフトを背景に経済が好調だ。
そして、次の受け皿となりそうなのがフィリピンだ。米中間の対立の影響を強く受ける台湾では、中国で操業している企業の約65%が東南アジア諸国への移転を検討しているという調査結果もある。中でも電気機器や靴のメーカーがフィリピンを有力視しているという。台湾企業がフィリピンの港湾に総額900万ドル(約10億円)以上の投資を検討しているとも伝わるなど、同国への関心は増している。
米国との関係を踏まえても、フィリピンは輸出拠点として好条件を備える。英語が公用語な上、中国と領有権をめぐって対立する南シナ海での防衛をポンペオ米国務長官が約束するなど安全保障でも連携を深めている。また13日に投開票されたフィリピンの中間選挙では、ドゥテルテ大統領の与党が優勢と、政治面でも安定感が増した。
直近1~3月期のフィリピンの実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比5.6%増と約4年ぶりの低成長にとどまったが、要因は政府の予算執行の遅れ。一方で足元の民間消費は堅調であり、政府支出の加速が見込まれる今後は、海外からの投資拡大も相まって経済が好調に推移する公算が大きい。
フィリピンに進出する企業では、Ubicomホールディングス(3937)を狙いたい。同社は企業の業務を受託するアウトソーシング事業に勢いがあり、前3月期には海外の自動車大手やゲームソフトメーカーなど15社から新規案件を受注した。前期の連結営業利益は5.6億円(前々期比75%増)に拡大し、今期も6.7億円への伸長を見込む。新商品を投入した医療用のクラウドサービスも見逃せない。
株価は2018年8月の安値816円を底に、長期の上昇トレンドを維持している(22日終値は1615円)。17年8月に付けた実質最高値1990円奪回は近く、早期の新局面入りが見込まれる。このほか、アイ・ピー・エス(=ips、4390・M)は現地で法人向けのインターネットプロバイダーサービスを手掛け、長大(9624)はバイオマスプラント事業を展開する。
インドネシアへの関心も高い。同国は今後5年間で45兆円規模のインフラ投資案も浮上し、首都ジャカルタの移転も閣議決定した(時期は未定)。現地のインフラ工事に実績があるのは東亜建設工業、(1885)や五洋建設(1893)、安藤ハザマ(1719)など。
潜在成長力が大きいカンボジアでは、ブロードバンドセキュリティ(=BBSec、4398・JQ)、リネットジャパングループ(=リネットJ、3556・M)をマークしたい。(5月24日株式新聞掲載記事)
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