丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

不動産経営は、立地によってターゲットが変わります。学生街や大学の近くにアパート(またはマンション)を建てるなら、学生専用物件にするのも選択肢の一つですが、その場合のメリット・デメリットとは?

目次

  1. 学生向けアパートを経営するメリット
    1. 大学近くの立地なら学生の需要が見込める
    2. 保証体制を厚くすれば安全性は高い
    3. 家賃滞納の可能性は低い
    4. 収益性の高い間取りが魅力
    5. 在学中は入居が見込める
    6. 毎年新入生が入るので需要が続く
  2. 学生向けアパートを経営するデメリット
    1. 学生の入居は期間限定
    2. 学生の入れ替わりを予測した募集活動ができる
    3. 学校の移転リスクがある
    4. 原状回復のサイクルが短い
    5. 周辺に競合物件が多い
    6. 繁忙期に入居者がいないと空室期間が長引く
  3. 学生向けアパートの空室対策とは?
    1. 1.不動産仲介会社との連携強化
    2. 2.保護者をターゲットにする
    3. 3.学生の動きをリサーチする
  4. 学生はどんなポイントで部屋を決めているのか
    1. インターネットに接続できるか
    2. バス・トイレが別になっているか
    3. 防犯体制がしっかりしているか
    4. 学生のニーズやトレンドに合っているか
  5. 学生向けアパート経営を成功させる3つの戦略
    1. 入居者を確保できる立地を選ぶ
    2. 家賃を安くして入居率を高める
    3. 学生以外の需要にも目を向ける
  6. 学生向けアパート経営に向いている人
  7. ランキングで見る大学が多い都道府県
  8. 学生向けアパート経営に関するよくある質問
    1. Q1:学生向けアパート経営のメリットは?
    2. Q2:学生向けアパート経営のデメリットは?
    3. Q3:大学が多い都道府県は?

学生向けアパートを経営するメリット

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(画像=Photographee.eu/Shutterstock.com)

学生向けアパートは、学生をメインユーザーにするがゆえのメリットが多くあります。大学や専門学校が点在する学生街に物件を所有できれば、大きなビジネスチャンスになります。

立地によってはメリット多い、学生専用アパート経営

大学近くの立地なら学生の需要が見込める

所有する土地が学生街や大学がある地域にあれば、そこで入居者を学生に限定したアパートを経営すると安定的な需要が見込めるでしょう。

学生が選べる住居の種類としては学生専用アパート・マンションのほかに、学生会館、学生寮、下宿、シェアハウスなどがあります。それらは門限や居住ルールなどがあり、また一緒に住む人との人間関係が生じます。したがって、学生同士の交流を望まず、気楽に暮らしたい学生は単身で暮らせるアパート・マンションを選ぶことになるでしょう。

また、ほとんどの学生は単身で入居するので、アパートをワンルーム限定にすることで多くの部屋数を確保できるメリットもあります。

学生は通学のための交通費も節約することが多いので、大学の近くで住居やアルバイトを探すケースが多いです。いかにその需要を取り込めるかが勝負の分かれ目になります。

保証体制を厚くすれば安全性は高い

かつては、賃貸物件に学生や高齢者が入居するのは難しい時代がありました。連帯保証人を頼める人がいないケースが最大の理由です。地方から単身上京してきた学生であれば、より困難でしょう。しかし、近年は保証会社を利用することで、保証人設定のハードルはかなり低くなりました。

学生の収入は、ほとんどの場合アルバイトと親からの仕送りです。会社員のように毎月定額の給料が入るわけではないので、収入は不安定になりがちです。保証会社を利用していれば、家賃の滞納やトラブルがあった際は、保証会社が代わりに対応してくれるので安心です。

保証会社の審査では、収入に占める家賃の割合を見るのが一般的です。その意味でも、家賃はあまり高くしすぎないほうがいいでしょう。

家賃滞納の可能性は低い

学生が入居する際は親が賃貸借契約を結ぶケースが多いため、家賃を滞納する可能性が低いというメリットがあります。学生本人が契約する場合は、家賃保証会社と契約することを入居の条件にすれば安全性が高くなります。

収益性の高い間取りが魅力

学生向けアパートの間取りは、ワンルーム・1Kがほとんどです。そのため、ファミリーマンションなどに比べて1つの物件に多くの戸数を確保することができます。ワンルームの専有面積はファミリー向けの3分の1程度ですが、家賃も3分の1になるわけではありません。家賃の平方メートル単価はワンルームのほうが高いため、収益性では有利です。

在学中は入居が見込める

学生は、在学期間が終わるまで入居が見込めます。入学時に入居すれば短期大学で約2年間、4年制大学で約4年間安定的な家賃収入を確保できます。入居時期も3~4月に集中するので、入居者募集の宣伝がしやすいというメリットもあります。

毎年新入生が入るので需要が続く

学生向けアパートは、物件周辺に大学や専門学校がある限り毎年新入生が入ってくるので、需要が続くのが大きなメリットです。退去の時期もはっきりしているため、入居者募集がしやすいのもオーナーにとっては魅力でしょう。

学生向けアパートを経営するデメリット

一方で、学生向けアパートならではといったデメリットもあります。必ずしも有利な点ばかりでないことを心得ておかなければなりません。

立地によってはメリット多い、学生専用アパート経営

学生の入居は期間限定

学生専用物件の最大のデメリットは、入居期間が決まっていることです。一般の大学であれば学生は4年で卒業するので、その時期が来れば同学年の学生は一斉に退居することになり、空室リスクが心配です。短大であれば2年間と、さらにサイクルは短くなります。

また総合大学だと、キャンパスが複数の地域に分散していることがあります。専攻学科によっては2年で他のキャンパスに移動するケースもあるでしょう。このように、学生ごとに卒業時期や移動時期を把握しなければならず、管理が複雑になります。

学生の入れ替わりを予測した募集活動ができる

ただし、上記のデメリットをメリットに変えることもできます。学生は原則として卒業年の2~3月に退居します。また新入生や他キャンパスから移動してくる学生も2~3月に転居先を探すことになるので、この入れ替わりの時期に集中して募集活動を行なえば、次の入居者を見つけることは社会人相手よりは容易と言えます。

募集方法としては、有力不動産賃貸チェーンがWebで学生向けの賃貸物件検索サイトを運営していますので、そこに掲載されれば大学ごとにピンポイントで探している学生からの応募が期待できます。ただし掲載物件数も多いので、選んでもらえるようなセールスポイントをアピールする工夫が必要です。

期間限定ではあるものの、メリットも多い学生専用アパート経営。社会に巣立っていく学生を応援するという、社会的使命を感じられる事業とも言えます。学生の役に立ちながら、自らの不動産経営も成り立てば、オーナーとしてやりがいを持って事業を営めるでしょう。

学校の移転リスクがある

学生向けアパートを持つ場合、不安なのは学校の移転リスクです。特に規模の大きい大学が移転すれば、その影響は大きいでしょう。学生獲得競争で東京都心にキャンバスを構える大学が増えつつありますが、今後は地方に目を向ける大学が出てくるかもしれません。また、少子化による学生の減少で、大学のキャンバスが統廃合される可能性もあり、このような流動的な要素も気がかりです。

原状回復のサイクルが短い

学生向けアパートは、原則として1人の入居者が最長で4年間入居します。一般の入居者であれば数十年にわたって住んでくれることもありますが、学生向けは入退去のサイクルが早いため、その都度原状回復のオーナー負担分やハウスクリーニングなどの費用がかかります。新規入居者からもらえる礼金は、原状回復費用で相殺されると考えたほうがよいでしょう。

周辺に競合物件が多い

学生向けアパートなので、大学や専門学校があるエリアは競合物件も多くなります。供給過多になれば空室が増えるリスクがあり、競合物件に対抗するために家賃を下げなければならない場合もあるでしょう。家賃を下げたくない場合はインターネット接続環境やモニター付きインターホンなど、設備で他物件との差別化を図る必要があります。

繁忙期に入居者がいないと空室期間が長引く

学生は原則として4月に入学しますので、2~3月が入居の決まる繁忙期です。したがって、その期間に入居者が決まらなければ空室期間が長引くリスクがあります。長ければ1年間空室になるおそれもあるので、次章で挙げる空室対策が必要です。

学生向けアパートの空室対策とは?

需要が安定している学生向けアパートとはいえ、以下のような空室対策は行う必要があります。

  1. 不動産仲介会社との連携強化
  2. 保護者をターゲットにする
  3. 学生の動きをリサーチする

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

1.不動産仲介会社との連携強化

不動産経営では、不動産仲介会社との連携が欠かせません。不動産仲介会社の中には、地域の大学と提携している会社もあります。合格発表前から入居予約を受け付ける積極的な会社もあるので、学生向けアパートの経営を考える場合は、仲介依頼先の有力候補になるでしょう。

2.保護者をターゲットにする

学生の保護者にとっては、実家を出た子どもがどのような場所に住むかは大きな関心事です。保護者が入居費用を出す場合は、入居先も保護者が決定するケースが多いです。子どもが安心して暮らせる住環境であるか、防犯体制はしっかりしているかなど、保護者のチェックの目が厳しくなります。そのため、保護者から選ばれる物件にするのが入居者獲得の近道といえるでしょう。

3.学生の動きをリサーチする

社会情勢の変化に合わせて、学生の動向をリサーチすることも大切です。特に2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大によって一時オンライン授業が中心になるなど、大学の環境にも変化が見られます。

・積極的に留学生を受け入れる
「外国人の入居者は受け入れない」という不動産オーナーもいるでしょう。しかし、今後の日本の人口減少を考えると、外国人留学生の受け入れも空室対策として有効といえます。

独立行政法人日本学生支援機構の「外国人留学生在籍状況調査」によると、2021年5月1日現在の外国人留学生は24万2,444人で、前年から3万7,153人(13.3%)減っています(下図参照)。これは、新型コロナウイルスの感染拡大によって来日できない学生が増えたことが影響しています。今後コロナの感染状況が落ち着けば、再び外国人留学生が増加することも期待できるでしょう。

・定期借家契約を検討する
学生を4年間つなぎとめるために、「定期借家契約」を結ぶという方法もあります。4年制大学の学生と4年間の定期借家契約を結べば、原則として契約期間の途中で退去される心配がありません。また、退去日が確定しているため、早めに次の入居者を見つけることもできます。家賃は普通借家契約より1~2割程度低く設定されるため、学生にもメリットがあります。

学生はどんなポイントで部屋を決めているのか

オーナーが気になるのは、「学生がどのようなポイントを重視して物件を選ぶか」でしょう。以下の4つは特に重要なポイントと思われますので、購入を検討している物件が該当するかチェックしてください。

立地によってはメリット多い、学生専用アパート経営

インターネットに接続できるか

今やインターネットは生活に欠かせません。特に学生はレポートの作成などでインターネットを利用することが多いため、フリーWi-Fiの環境が必須です。初期費用やランニングコストはかかるものの、家賃をインターネット込みの料金に設定すればオーナーの負担はそれほど大きくならないでしょう。

バス・トイレが別になっているか

「バス・トイレ付き」の物件の中でも学生に人気があるのが、バスとトイレが別になっている物件です。築古物件ではバス・トイレ・洗面所が同じ空間にあるユニットバスも多く見られるので、バスとトイレを分けることで他物件との差別化が図れます。

防犯体制がしっかりしているか

女性を中心に、防犯体制への関心が高まっています。社会情勢が不安定になると、空き巣など侵入犯罪への不安も大きくなります。子どもにひとり暮らしをさせる保護者も、内覧の際にセキュリティを厳しくチェックするでしょう。主な防犯設備には防犯カメラやスマートロック、オートロック、モニター付きインターホンなどがあります。

学生のニーズやトレンドに合っているか

学生のニーズやトレンドに合った物件にすることも、選ばれるための大切な要素です。学生は洋室を好む傾向があるので和室を洋室にリフォームする、屋外の洗濯機置き場を室内に変更する、エアコン付きの部屋にするなど、利便性とお得感を高めると学生に選ばれる可能性が高くなります。ただし、工事が大掛かりになる場合は不動産管理会社に相談してから決めるようにしましょう。

学生向けアパート経営を成功させる3つの戦略

安定した需要が見込める学生向けアパート経営ですが、必ず満室になるわけではありません。空室を避け、より多くの入居者を獲得するための戦略も必要です。

入居者を確保できる立地を選ぶ

入居者を確保するためには、大学や専門学校があるエリアやその隣の駅周辺など、学校まで通学しやすい場所の物件を選ぶ必要があります。また、学生の生活に必要なコンビニやコインランドリー、ファストフード店などが近くにある物件を選ぶことで、学生の選択肢に入りやすくなります。学生以外に単身の会社員も取り込むためには、駅から徒歩圏にあることも重要なポイントです。

家賃を安くして入居率を高める

学生の多くはアルバイトで生計を立てているため、できる限り家賃の安い家に住みたいと思うものです。競合物件の家賃をリサーチして所有物件より安いようであれば、同じレベルまで下げることで競争力が高まります。その上で、無理のない範囲で設備を充実させ、他物件との差別化を図るのも有効な戦略です。

学生以外の需要にも目を向ける

学生向けアパートといっても、学生だけを対象にする必要はありません。単身会社員も有力なユーザーです。学生は3~4月に多くの入退去がありますが、会社員は転勤や引っ越しなどで年度の途中でも需要が発生することがあります。そのため、「学生・単身者向き」など幅を持たせた広告表記にすると入居者獲得のチャンスが広がります。

学生向けアパート経営に向いている人

学生向けアパートは入居時期が一定であるため、入居者が決まらないと空室が長く続くというリスクがあります。したがって、積極的にリスクを負って経営できる人に向いています。また、アパートは原則として一棟経営なので、物件の管理をマメにでき、学生とコミュニケーションを取ることが得意な人にとっては楽しく経営できる物件形態といえます。

ランキングで見る大学が多い都道府県

学生向けアパートを経営するなら、大学の数が多いエリアを選ぶに越したことはありません。2021(令和3)年度の学校基本調査によると、大学(大学院含む)の多い都道府県トップ10は下表のとおりです。

▽令和3年度都道府県別大学数ランキング

順位都道府県大学数学生数(人)
1東京都14376万3,018
2大阪府5625万268
3愛知県5219万2,790
4北海道379万240
5兵庫県3612万5,817
6京都府3416万3,312
6福岡県3412万2,597
8神奈川県3118万3,943
9千葉県2711万6,270
10埼玉県2711万4,113

人口が多い都道府県は、大学数・学生数も多いことがわかります。学校数・学生数ともに、やはり東京都が突出して多いのが目立ちます。北海道は面積が大きいため学校数は上位ですが、学生数は10万人未満です。逆に、学校数では8位の神奈川県は、学生数では4位です。学校数が多いエリアを狙うか、学生数の多いエリアを狙うかで、物件選びは変わります。

学生向けアパート経営に関するよくある質問

Q1:学生向けアパート経営のメリットは?

学生向けアパート経営の最大のメリットは、入居者の需要が安定していることです。4年制大学の学生なら最長4年間の入居が見込めます。1Kの間取りが中心であり、一棟あたりの部屋数を多く取れるので、満室になれば高収益が期待できます。入居者が卒業しても、入れ替わりで新入生の入居者が見込めるので、需要が途切れることがない点もメリットです。

Q2:学生向けアパート経営のデメリットは?

学生向けアパート経営のデメリットは、入居契約の繁忙期である2~3月に入居者が決まらないと最長で1年間空室が続くリスクがあることです。そのため「学生・単身者向き」など、会社員の入居者も受け入れるような戦略を取ることで、リスクを軽減できます。学生をメインにしながらも、希望があれば一般の入居者も受け入れるという柔軟な姿勢が求められます。

Q3:大学が多い都道府県は?

大学が最も多い都道府県は東京都で、143校(学生数76万3,018人)です。2位以下も大都市圏が並び、大阪府56校、愛知県52校と続きます。神奈川県は学校数では8位ですが、学生数では4位です。学校数を重視するか学生数を重視するかで、選ぶべきエリアは変わります。いずれにしても、人口が多い都道府県は学校数、学生数ともに多いと考えてよいでしょう。

(提供:YANUSY

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