JR東日本は、2020年に山手線の田町駅と品川駅の間に新駅を開業する。新駅の設置は西日暮里駅以来、約50年ぶりとなる。ただ、公募した新駅の名称「高輪ゲートウェイ」をめぐり、異論が噴出。駅名の撤回を求める声もあがっている。
名称問題はこじれているものの、周辺地域と連携した街づくりとして注目を集める同エリアの再開発を見ていこう。
公募では130位、「キラキラネーム」として批判炎上
そもそも、JRは駅名を公募で決定するとしていた。その結果、1位が「高輪」(8,398件)、2位が「芝浦」(4,265件)、3位が「芝浜」(3,497件)。いずれも地域の歴史を受け継ぐ名前だ。
一方、駅名として採用された「高輪ゲートウェイ」は130位(36件)にすぎず、その選考過程の不透明さが語感の悪さとともに批判に火をつけた。
高輪という地名は高台で縄手道(まっすぐで長い道)があることからつけられた地名とされ、戦国時代の書物にも「高縄(たかなわ)原」として登場する。現在の「高輪」に落ち着いたのは、江戸時代のようだ。「忠臣蔵」でおなじみの泉岳寺も高輪に存在する。
また、公募で2位、3位だった、芝浦と芝浜も江戸時代から続く地域の地名だ。ちなみに芝浜は有名な古典落語の舞台にもなり、タイトルにも地名が用いられている。
このように山手線の地名は多くが地域に伝わる古くからの名前を採用しているため、「高輪ゲートウェイ」という名前が「キラキラネーム」として批判を受けたのも理解はできる。
たとえば、Jタウンがまとめたネット調査では、「高輪ゲートウェイ」という名称を肯定する意見はたった1%。「名前を変えた方がいい」が全体の95.8%と圧倒的多数を占めた。
こうした声を受けて、「山手線新駅の名称を考える会」は4万7,930筆の反対署名と「山手線新駅の名称に関する緊急提言」を提出。しかし、JR側からは「名称を変更する必要はない」との考えが示されたという。
区域面接9.5ヘクタールに新たな玄関口となる街づくり
名称問題はさておき、新駅周辺の再開発プロジェクトは品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)と呼ばれている。第Ⅰ期の計画地は、東京都港区港南二丁目、芝浦四丁目、高輪二丁目及び三田三丁目各地内で、区域面積は約9.5ヘクタールに及ぶ。この敷地を1街区から4街区までの4つの街区に分けている。
1街区には地上45階、地下3階のビルを建設し、住宅や国際水準の居住施設を誘致し、2街区には地上6階の建物を建設し、文化創造施設や駐車場などとして活用する。
また、泉岳寺駅前に位置する3街区は、地上31階建ての商業施設や病院などが建ち、広場なども開発する。さらに4街区にはホテルやコンベンション、カンファレンス施設などを有する地上30階、地下3階のビルが建つ計画だ。それぞれの街区はデッキで接続し、歩いて移動ができるようになる。
これら大規模な再開発は、「グローバルゲートウェイ品川」のコンセプトのもとで行われ、世界的に著名な建築デザイン事務所「Pickard Chilton(ピカード・チルトン)」および「隈研吾建築都市設計事務所」が起用されている。
グローバル時代にふさわしい日本の新たな玄関口として、駅とその周辺地域が連携した街づくりを、以下のデザイン指針に沿って推進するようだ。
・ 各街区の複数建物を「日本列島の島々」に見立て、「アーキペラーゴ(列島)」を創出する
・ かつて海岸線であった場所の記憶を想起させる滑らかな「フロー(流れ)」のような歩行者ネットワークを整備
・ 低層部は各建物の豊かな緑を連ねることで、都市に緑の丘を構築
・ 高層部は頂部に統一した動きをつくり、分節で強調した建物コーナーを新駅前広場や結節空間に向けることで建物同士のつながりを持たせ、各建物が個性を持ちながらも「群としての一体感」を表現
国際都市東京としての新たな顔に
高輪ゲートウェイ駅付近では東京オリンピックのパブリックビューイングなども開催される計画だといい、国際都市東京としての新たな顔になることは間違いない。
また、駅前は、和を感じられるデザインの新駅と緑豊かで滑らかな曲線を持つ4街区の建物が「360度の広場空間」を形成するという。名称問題は巻き起こっているが、再開発を経て生まれ変わる街には心躍らせるものがあるのではないだろうか。(提供:百計ONLINE)
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