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(画像=PIXTA)

年号が変わり、気分新たに経営にいそしんでいる飲食店経営者も多いだろう。近年は外食市場の競争が激化し、最新の動向をキャッチアップして経営に生かす姿勢が必要不可欠となっている。そこでここでは、令和時代に押さえておきたい3つのキーワードを紹介していく。

1、飲食業界でも「SDGs」を意識した取り組みが活発化

SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称だ。2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択され、2030年までに国際社会全体で達成すべき目標が記されている。その内容は17のゴールと、それを詳細にした169のターゲットから成り立つ。

ゴールには「1、貧困をなくそう」「2、飢餓をゼロに」といった風に、17の項目が続く。日本人にとっては少し遠い話のように感じるかもしれない。しかし、飲食店で使うコーヒー豆ができる工程をさかのぼっていくと、発展途上国で過酷な労働条件下で働く生産者にたどりつくこともある。決して、自分たちと関わりのないことではないのだ。

またSDGsに各業界が取り組むようになった今、企業や店舗が社会貢献をしたり社会的責任を果たそうと行動したりすることは、顧客からもビジネスパートナーからも選ばれるための条件になりつつある。今後は、SDGsに取り組んでいることが当たり前の時代になる可能性は高い。

飲食業界でも取り組みが進んでいる。例えば『和民』や『ミライザカ』などを展開するワタミ株式会社では、宅食事業で利用した弁当容器を回収して再資源化する新たなリサイクルモデルをスタートした。プラスチックゴミによる海洋汚染問題が叫ばれるようになったことから始まったこの取り組みは、SDGsの中の「14、海の豊かさを守ろう」に結び付いている。

SDGsを意識した取り組みは、特別なことである必要はない。日々の節電や節水、従業員が働き甲斐を持てるようにすることなども立派な貢献だ。SDGsを身近なこととして捉え、日々の経営に浸透させていく姿勢が欠かせない。

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(画像=PIXTA)

2、仕入れコスト削減に効果的!? 最新の「養殖技術」

現在、飲食業界では仕入れコストが高騰し経営を圧迫するケースが増えている。そうした中、安定的かつ価格を抑えて食料を供給できる「養殖」に注目が集まっている。特に日本は、諸外国に比べ高いレベルの技術を持つ。2002年に近畿大学水産研究所がクロマグロの完全養殖に成功したのは記憶に新しい。クロマグロの完全養殖は世界に例がなく、初めての快挙だった。

ここ数年でも、新たな養殖ブランドが続々と誕生している。例えば「お嬢サバ」。これはJR西日本が、鳥取県の新たな地域産品をつくろうと陸上養殖に参入し、県と共同研究をして生み出したブランドだ。青魚特有の臭みがなく上質な脂が味わえることと、地下海水を使って陸上養殖して、食中毒の原因になるアニサキスを付きにくくしたことが特徴だ。白子や真子、肝も、生で安心して食べることができる。

「BLUE CREST」も注目の新ブランドだ。「海洋資源の保存」と「マグロの安定供給」という2つの課題を解決しようとマルハニチロ株式会社が生み出した完全養殖マグロで、卵から成魚まで一貫生産を実現し、安定供給を実現した。今後、ますます多くの養殖ブランドがそれぞれの価値を発揮して存在感を増していくに違いない。

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(画像=『THANK』で導入されている「Sota」。(画像=Foodist Media))

3、「AIロボット」が接客する時代に?

深刻な人手不足が続く飲食業界。生産性の向上を図るためにテクノロジーの活用が急務となっており、キャッシュレス決済を活用するなど導入は徐々に進んでいる。そして今、AIロボットの活用を考える店舗も出てきている。

『鶏ポタラーメン THANK(サンク)大門店』は、ヴイストン株式会社が提供する卓上型コミュニケーションロボット「Sota」を導入。ロボットが客の顔を識別し、アプリ登録をしている客には名前を呼んで声をかけるなどのサービスができるという。

東京・虎ノ門の5,000人近くが働く37階建ての高層ビルである城山トラストタワー1階にある『カフェ&デリGGCo.(ジージーコー)』では、オフィスビル内で日本初となるロボットによる搬送サービスの実証実験がスタートした。高層階の人が休憩のために1階まで降りる手間を省けたり、注文を増やせたりすると期待されている。

さらに2020年を目標に、調理現場でロボットを活用する「ロボットレストラン」構想が進められている。機械要素部品大手のTHK株式会社と調理ロボットのコネクテッドロボティクス株式会社が共同で実現に取り組む。構想の根底には、飲食業界の人手不足は、人が増えれば解決できるわけではなく、職場の環境改善が必要だという思いがある。人間の能力と組み合わせることで、AIは「スタッフのひとり」になってくれるかもしれない。

令和時代も客に愛され、成長する店舗になるには、これまでの思いや理念を大切にしつつ、新たな情報に目を向けていくことが欠かせない。ぜひ3つのキーワードをより良い店舗経営のヒントにしてほしい。(提供:Foodist Media

(執筆者:岩﨑美帆)