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勉強会をきっかけに考案された『SESSION』の新メニュー(画像=Foodist Media)

福岡でフレンチ、イタリアン、中華、和食——さまざまなジャンルの料理人が月に一度集まり、深夜に勉強会が開催されている。その会場となっているのが、博多駅にほどちかい中華料理店『巴蜀(はしょく)』の厨房だ。この勉強会を開催するにあたっての想いや、参加者の声を聞いた。

最初は中華料理の料理人が集まる勉強会だった!

始まりは2年ほど前。『巴蜀』の荻野シェフが、ハクビシンを仕入れたことに始まる。ハクビシンの下処理でも大変なのは、数時間かかる毛抜きの作業。「ハクビシンをさばくのは珍しいことなので、興味のある料理人に集まってもらって、一緒に毛抜きの作業からやってみようというのがきっかけでした」と、荻野シェフは当時を振り返る。

それから、月に2、3回、肉のさばき方、処理の仕方を中心に勉強会を開催していたが、「穴熊」をテーマに開催するときに、フランス料理のシェフから「興味があるので参加したい」と連絡があり、ここから異業種が集う勉強会になったという。そのとき参加したのが、『レスタッシュ』の平賀シェフ、『ジェファン』の原田シェフ、『オテルグレージュ』の総料理長・兵頭シェフの3人だった。

「私たちは毛抜きの仕方を知っているけれど、肉をさばくことに関してはフランス料理の皆さんの方が長けています。なので、毛抜きは私たち中華の料理人たちが教えるので、フランス料理の皆さんには、さばき方を教えていただく。そんな感じで、中華以外の料理人も参加するようになったんです」

ここに、ホテルニューオータニ博多の和食処『千羽鶴』の中島料理長、イタリアン『クッカーニャ』の緒方シェフ、フランス料理『ローブランシュ』の白水シェフらが加わり、ジャンルの幅もさらに広がった。

中華のパイの作り方、熊の手の調理法、ハモの骨切り、すっぽんのさばき方……講師は持ち回りで、これまでに取り扱ったテーマは多岐にわたる。

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勉強会の題材になった熊の手(写真提供:『SESSION』本堀料理長)(画像=Foodist Media)

学びたいという意欲や欲求が強い料理人たちが集結

「ジャンルもですが、参加者の立ち位置が様々なのも面白いですね。街場のオーナーシェフもいれば、ホテルの料理長もいるし、店舗を任されている料理人もいます。料理長ともなれば、教わる機会が減ってしまうんですけど、こうやって新しいことを知ることは単純に楽しいですし、それぞれの分野で実践に生かせることばかりではないですが、この勉強会に参加できて本当によかったと思っています」と、オテルグレージュの総料理長、兵頭シェフは言う。

この勉強会が開催されるのは、それぞれの仕事が終わった深夜の時間帯。

「日中にやると仕込みなどで時間の制限が出てくるけれど、この時間ならじっくり時間をかけることができます。とはいえ、仕事が終わったあとに参加するのは、簡単なことではありません。それでも参加したい!という人だけが集まっていますので、皆さんすごく意欲的で、刺激になりますね」と、兵頭シェフ。

現在は持ち回りで講師をしており、参加できるのは講師として教えることのできる技量のある料理人に限られている。

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(画像=iStock.com/Volodymyr Goinyk)

互いに刺激し合いながら、福岡を盛り上げていきたい

「私は自分の店で別の勉強会をしていたんです。でも、日程の調整が難しく、どのように継続していくかと悩んでいたときに、荻野さんの勉強会の話を知り、参加させてもらうことになりました」と話すのは、『広東コンテンポラリーチャイニーズ SESSION』の本堀料理長だ。

広東料理だけをやってきた本堀シェフにとって、フランス料理や和食の技術はとても勉強になっているという。「すっぽんがテーマだったときにイタリアンのシェフから、すっぽんとサフランの相性がいいという話を聞いて、すっぽんと紅花を合わせてみたらすごくよくて。さっそくメニューに取り入れました」と、この勉強会をきっかけに新メニューも生まれているという。

また、今後、講師として教えることになったときは、中華では当たり前のようにやってきたことも、他ジャンルの料理人に対しては、なぜそれをするのか、どんな意味があるのかを伝えなければならず、そのための準備もしっかりしておく必要があると考えているそう。

「兵頭さんは九州・福岡のフランス料理の底上げを意識されていますし、本堀さんは中国料理をより発展させていきたいと考えていらっしゃいます。それぞれが目的を持って、互いに刺激し合いながら、福岡をもっと盛り上げていきたいですね」と、荻野シェフ。

ジャンルを越えた料理人たちの交流によって、福岡の街はさらに面白くなっていく。(提供:Foodist Media

(執筆者:寺脇あゆ子)