「突破力」のある部下を飼いならせ

今の時代、効率的に仕事を進めるだけでは、企業の成長は頭打ちになってしまいます。効率的な仕事と同時に、新たなビジネスチャンスを探し続けなければなりません。

ところが、優秀な社員ほど、「できるか、できないか」を先に考えてしまい、できない理由を探して、挑戦しない。できることしかやらなければ、じり貧のゆでガエルになるのは自明の理。これも日本の企業が世界の中で、プレゼンスを低下させている要因の一つです。

そこで重要なのが「突破力」です。突破力とは、さまざまな困難が想定される環境でも、果敢にその制約条件を突破する力のこと。意外と、組織で優秀と思われていない人が、突破力を持ち合わせていることも少なくないのです。

どんな部署にも「成功するかどうかはわからないが、これはやるべきだ。やりたい」と行動する勇気を持つ人材はいるものです。ミドルリーダー自身がそうした気概を持ち合わせていることが理想的ですが、それを部下が持ち合わせているのなら上手に利用すべきです。

ここで必要なのは、スポンサーシップ。ミッションと照らし合わせてやってはいけないことだけを決め、後は自由に仕事をさせます。ただし、責任を取らない上司のもとで自由に挑戦はできませんので、覚悟が必要です。

多様な部下を扱い、短期的な目標も上げなければならない。おまけにコンプライアンスまで厳しくなったミドルリーダーの仕事は昔以上に難しくなっています。でも、個人ではなく組織で生産性を上げれば、働き方を変えられるはずです。

今、ミドルのリーダーシップが強く問われています。

柴田昌治(しばた・まさはる)
スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表
1979年、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。1986年に、日本企業の風土・体質改革を支援するためスコラ・コンサルトを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。社員が主体的に人と協力し合っていきいきと働ける会社をめざし、社員を主役にする「スポンサーシップ経営」を提唱、支援している。2009年にはシンガポールに会社を設立。著書に、『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『考え抜く社員を増やせ!』『どうやって社員が会社を変えたのか(共著)』(以上、日本経済新聞出版社)、『成果を出す会社はどう考えどう動くのか』(日経BP社)などがある。《取材・構成:長谷川 敦/写真撮影:長谷川博一》(『THE21オンライン』2019年4月号より)

【関連記事THE21オンラインより】
シンガポールで日本企業が「不人気」な理由とは?
「優等生社員のワナ」最終回 「悩めるミドルの結束」が会社を変える
「優等生社員のワナ」第3回 できる人はあえて「調整しない」