前日については、注目されていたFOMCにて、「忍耐強い様子見スタンス」の文言が削除され、「今後のデータを監視し景気拡大を維持するため適切に行動する」との文言に置き換えられました。これは、経済指標などにより景気減速が鮮明になれば早期利下げに踏み切ることを示唆しており、政策金利見通しにおいても、17人の政策当局者のうち7人が年末までに0.50%の利下げを見込み、1人が0.25%の利下げを想定していることから、FRBの利下げについては、今後は既定路線として捉えられそうです。
今回の政策決定会合においても、投票メンバー10人のうち9人は金利据え置きに賛成したものの、ブラード・セントルイス連銀総裁は0.25%の利下げを求めて反対票を投じたと報じられています。これは、FRBが段階的な利上げを開始した2015年まで遡っても、初めての反対票ということになります。既に利下げの準備は整っていると考えられるため、徐々に織り込む動きが主導しそうです。
今回のFOMCでは、リスク回避の動きが強まるわけでなく、シンプルなドル売りになったことが特徴的です。エマージング通貨がFOMC発表後は買われ、ユーロドル、ポンドドルなどのドルストレートについても、上昇しています。FRBが利下げに舵を切ると暗に示していることが、株高になったこともあり、ドル以外のリスク資産通貨が買われる動きになったと考えられます。
今後の見通し
英保守党の党首を決める第3回投票では、強硬離脱派のジョンソン前外相が143票を獲得し、今回も首位をキープしました。第2回の投票での獲得数は126票であり、支持を拡大しています。ハント外相が54票、ゴーブ環境相が51票、ジャビド内相が38票でしたが、一躍国民人気が高まったスチュアート国際開発相は27票となり、党首選から振り落とされるという意外な結果になりました。20日には、候補者が4人に絞り込まれた党首選の第4回及び第5回目の投票が実施されます。恐らく強硬離脱派のジョンソン前外相が今回も圧勝する見通しですが、同候補のトーンがやや穏健寄りになってきていることもあり、決選投票までは票が偏ったとしても過度なポンド売りは抑制されそうです。
ドラギECB総裁が、ポルトガルでのECBフォーラムにおける講演の中で「景気や物価が改善しなければ、追加の金融緩和が必要」と発言したことを受け、金利市場が世界的な低下の動きを示しましたが、昨日はドル売りの影響もあり、落ち着きを取り戻し、利回りは上昇しました。ただ、デギンドスECB副総裁は、米CNBCのインタビューに答え、「足元のリスクは下方に傾斜しており、こうしたリスクが顕在化すれば、ECBは行動を起こす」と述べ、さらに、「フォワードガイダンス、長期資金供給オペ(TLTRO)、償還を迎える債券の再投資など、ECBが利用できる政策ツールは多く存在している。量的緩和もそのひとつだ」とも発言していることから、FRBの利下げ路線同様に、ECBも緩和路線に明確に切り替わっていると考えられそうです。
FOMCの声明を受け、年内の利下げについては、ほぼ織り込まれていたと考えられますが、ドット・プロットでは、多くのメンバーが年内に0.50%の利下げを支持していることが明らかになりました。ある程度ネガティブサプライズの内容も含まれましたが、ドル円については107.80円のラインを下抜けることができなかったため、当面はこのラインがサポートとして意識されそうです。ただ、利下げ基調が強まっているなかで積極的なドル買いになるとは考えづらいため、今後は、ドル円の戻り売りがメインのマーケットになりそうです。
107.80円下抜けまでは、ドル円ロング継続
FOMC声明は、弱い内容だったものの、ドル円のサポートである107.80円を下抜ける動きにはなりませんでした。かなり強いサポートであると考えられるため、下落バイアスがかかっているものの、下落前に一旦戻りがあると考え、ロングポジションは様子見とします。108.30円のドル円ロング、利食いは108.90円、損切りは107.80円に設定します。
海外時間からの流れ
FRBは、今回の会合で政策金利を引き下げる予防的な措置を取ることは避けつつ、今後の会合で金融政策を緩和する用意があることを明示しました。早急に利下げをするほど経済見通し、成長見通しは悪化しているわけではありませんが、貿易摩擦の長期化懸念が保険的な利下げに傾いているものと思われます。7月31日の会合で、政策金利を0.25%引き下げると考えています。
今日の予定
本日は、日銀金融政策決定会合、英・5月小売売上高指数、英中銀(BOE)政策金利、米・6月フィラデルフィア連銀景況指数、米・新規失業保険申請件数、米・5月景気先行指数などの経済指標が予定されています。また、黒田・日銀総裁、カーニー・英中銀総裁の定例会見、デギンドス・ECB副総裁、カーニー・英中銀総裁の講演にも注目が集まります。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。