海の向こうでは、米国のS&P500指数が過去最高値を更新するなど、株式市場が強さを取り戻しています。米国と中国の覇権争いが長期化すると警戒される中、景気の減速・悪化に予防的に対応すべく、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和姿勢を明確にし始めたことが要因です。
市場では、FRBが年内に計2~3回の利下げを実施すると予想しており、一方、ECB(欧州中銀)も欧州の景気や物価の状況によっては再び緩和モードに舵を切ると考えられます。このように、主要国の金融当局が金融緩和姿勢を明確にし始めたことで、世界の株式市場は「金融相場」の様相を呈してくると予想されます。
すなわち、債券等の金利低下傾向が強まる中、株式市場では高い配当利回りが期待できる銘柄に脚光が当たりつつあります。そこで、今回の「日本株投資戦略」は再び、高配当利回りが期待できる銘柄に注目しました。ここ数年間、毎年配当を増やし、今期も増配が見こめ、しかも高い配当利回りが期待できる銘柄とは、どのような銘柄でしょうか。
30万円以下で買える連続増配・高配当利回り期待銘柄はコチラ!?
表1は以下の条件を満たす東証1部銘柄を、予想配当利回り(市場予想)の高い順に20銘柄並べたものです。
(1)東証1部上場銘柄であること
(2)時価総額1,000億円以上の銘柄であること
(3)広義の金融および「その他」(REIT)に属す銘柄以外であること
(4)過去3期、1株当たりの配当(1株配当)を増やし、今期も増えると市場が予想している銘柄であること
(5)今期純利益が増益になると市場が予想している銘柄であること
(6)最低投資単位(100株)での売買金額が30万円以下の銘柄であること
配当や株主優待の側面から、株式投資の対象となる銘柄を選ぶ場合「何をやっている会社なのかよくわからないし、長期保有して大丈夫なのか想像がつきにくい」ということがよく問題になります。こうした不安を無視して投資してしまうと、結局は大きな材料がないにもかかわらず、株価が下げた時に売ってしまい、損をしてしまうというパターンにつながりやすくなります。
表1の銘柄は時価総額を一定基準(ここでは1,000億円)以上の大きさに設定していますので、我が国の株式市場を代表する企業が多く含まれています。かつては、このような有名企業の多いポートフォリオは高い配当利回りを期待しにくいのが普通でしたが、今は、十分高い配当利回りを期待できることになります。
無論、多くの方が社名を知っている有名企業であっても、株価変動リスクはあり、株価の値下がりで損失計上につながるリスクから逃れることはできません。しかし、表1に掲載された銘柄は例外なく、最低投資は100株で、比較的限られた資金でも投資が可能です。表の上位10銘柄すべてを100株ずつ投資しても合計金額は約173万円、20銘柄すべてでも約330万円(いずれも6/21(金)終値時点、諸コストを除く単純計算ベース)で済む計算です。
資金を1銘柄に集中するのではなく、多くの銘柄に分散投資し、高い配当利回りに期待しながら、株式相場の本格上昇を待つという投資戦略も有望ではないかと「日本株投資戦略」では、考えています。
なお、表1の銘柄の特徴として、商社や電力など特定の業種への偏りが認められることは確かです。実際の銘柄選択では、そうした点にも注意し、業種分散等にも配慮されることが望ましいと考えられます。
表1:30万円以下で買える連続増配・高配当利回り期待銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(6/21) / 今期市場予想増益率 / 1株配当 / 配当利回り
<8002> / 丸紅 / 728.5 / 5.97% / 35.63 / 4.89%
<8058> / 三菱商事 / 2,891.5 / 11.80% / 137.50 / 4.76%
<7272> / ヤマハ発動機(12) / 1,907 / 1.25% / 90.14 / 4.73%
<1928> / 積水ハウス(1) / 1,796.5 / 7.64% / 81.09 / 4.51%
<8001> / 伊藤忠商事 / 2,072.0 / 2.75% / 89.18 / 4.30%
<7267> / 本田技研工業 / 2,766.0 / 13.62% / 118.35 / 4.28%
<3116> / トヨタ紡織 / 1,385 / 49.75% / 57.09 / 4.12%
<4208> / 宇部興産 / 2,182 / 0.02% / 85.91 / 3.94%
<1893> / 五洋建設 / 519 / 7.28% / 20.00 / 3.85%
<9508> / 九州電力 / 1,068 / 96.71% / 40.00 / 3.75%
<3231> / 野村不動産ホールディングス / 2,334 / 1.72% / 79.50 / 3.41%
<9303> / 住友倉庫 / 1,353 / 25.51% / 46.00 / 3.40%
<6141> / DMG森精機(12) / 1,590 / 13.95% / 53.90 / 3.39%
<3003> / ヒューリック(12) / 868 / 11.42% / 28.71 / 3.31%
<5333> / 日本碍子 / 1,530 / 34.73% / 50.22 / 3.28%
<1942> / 関電工 / 888 / 12.00% / 28.67 / 3.23%
<9502> / 中部電力 / 1,557.0 / 101.38% / 50.00 / 3.21%
<2124> / ジェイエイシーリクルートメント(12) / 2,519 / 19.70% / 80.00 / 3.18%
<6770> / アルプスアルパイン / 1,783 / 62.96% / 54.80 / 3.07%
<8804> / 東京建物(12) / 1,258 / 6.46% / 38.50 / 3.06%
※会社公表データ、およびBloombergデータを用いてSBI証券が作成。市場予想はBloombergが集計した市場コンセンサス。銘柄名の右側のカッコ内の数字は3月決算銘柄以外の決算期を示しています。12月決算銘柄の場合、6/25(火)を権利付最終日として第2四半期末配当が実施される予想となっていますので、注意が必要です。配当利回りは、第2四半期末、期末等すべての配当を受け取った場合に、それが計算時点での株価の何%かを示すものですので、ご注意ください。なお、本田技研工業(7267)は四半期ごとに株主優待を実施しており、6/25(火)が権利付最終日になっています。
なぜ今「配当利回り」が注目されるのか?
冒頭でご説明したように、世界の株式市場は改めて「金融相場」の様相を呈してくると予想されます。債券等の金利低下傾向が強まる中、株式市場では高い配当利回りが期待できる銘柄に脚光が当たりつつあるようです。したがって、配当を受け取ることによってインカム・ゲインを得ることにとどまらず、将来的にキャピタル・ゲインを得る、あるいは増やすことができる可能性も膨らんできつつあると考えられます。
これまでの世界的な緩和的金融政策や世界経済の発展のおかげで、グローバル企業の多くは潤沢な資金をためることができたと考えられます。しかしここにきて、米中の覇権争いの長期化等があり、設備投資を振り向ける先について、慎重な検討を要するようになってきました。そうした中、潤沢な資金としての振り向け先として株主還元の充実が多くの企業で検討されるようになってきました。2018年度は世界で約14,000社が配当または自社株買い等の株主還元を計3兆ドル実施したとみられています。この流れは次第に強まっていくと予想されます。
配当利回りは「1株当たりの配当÷株価」から求められるので、株価が下がった方が高くなりやすい傾向にあります。図1は日経平均株価とその予想配当利回りを比較したものですが、多くの期間において両者は逆相関の関係にあります。しかし、最近は日経平均株価が上昇しているのにもかかわらず、その予想配当利回りが上昇傾向にあります。これは株価上昇ペース以上に、配当の増額ペースが速まっているためと考えることができます。
今後も上場企業の増配傾向が続いた場合に、それに呼応して自らも増配しやすい銘柄は一定の注目を集める可能性があります。今回のスクリーニングにおいて、単に予想配当利回りが高いのみならず、連続増配の実績にこだわってみたのは、そうした理由に基づいています。「日本株投資戦略」では、今後も様々な角度から配当や、それにとどまらず自社株買いを含めた株主還元について情報提供を行っていきたいと考えています。
図1:日経平均株価と予想配当利回り
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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