不動産を無償で譲る。そのようなことはアカの他人同士では滅多にありませんが、親子やつながりの深い親戚などであれば珍しくありません。相続対策として有効になることもあります。注意したいのは、もらった側に税金がかかる場合があることです。それも1つではありません。贈与にかかるコストは不動産をあげる人も、もらう人も知っておく必要があります。

負担が大きい贈与税

不動産,贈与,税金
(写真=She-Hulk/Shutterstock.com)

誰しも「贈与税」という言葉を耳にしたことはあるでしょう。不動産に限らず、他人から物をもらったときにかかる税金です。「贈与」という名前がついていますが、プレゼントをあげたほうではなく受け取ったほうが納めなければなりません。

贈与税の計算方法は次のとおりです。まずもらったものの価格(相続税評価額)から110万円を差し引き(基礎控除)、金額ごとに定められた税率をかけ、控除額を差し引きます。

税金計算は1年分をひとまとめにして行います。例えばある年の1月に父親から1,000万円、同年12月に母親から500万円の土地をもらったら、次のように計算します。

(【父親からの贈与】1,000万円+【母親からの贈与】500万円−【基礎控除額】110万円)×【税率】40%−【控除額】190万円=366万円

税率と控除額は、あげる人が両親や祖父母などの直系尊属の場合、それ以外の人よりも低めです。とはいえ相続税よりは高めに設定されています。

20年間以上連れ添った夫(妻)に自宅用の土地や建物をあげる場合は、基礎控除額の110万円に加えて2,000万円が非課税となります。

上記の、基礎控除額110万円は非課税になるというのは、は暦年課税という基本的な方法ですが、あげる人が亡くなるときに相続税の課税価額として持ち戻し計算する相続時精算課税という方法もあります。

不動産取得税は相続の場合だと発生しないが……

土地や建物などの不動産を手に入れた人は、不動産取得税を納める必要があります。お金を払って買った場合はもちろん、タダでもらった場合でも同じです。ただし相続の場合は発生しません。

2021年までの税率は不動産の価格に対して、土地か住宅の場合は3%、住宅以外の建物の場合は4%です。ここでいう価格とは実際に売買した代金や時価などではなく、市町村の固定資産税課税台帳に登録された評価額のことです。

住宅用の土地の場合は不動産の価格を半分として計算します(2021年まで)。つまり実質的に税率が約1.5%になるわけです。

納税の手続きは、都道府県税事務所から届く通知に従って行います。そのため贈与を受けたときに申告しておかなければなりません。

登録免許税は贈与に冷たい?

登録免許税は、いわば登記の手数料です。もらった不動産を自分の名義に変更する際、手続きを行う法務局に納税します。

贈与の登録免許税は他の取得方法に比べて高いといえます。税率は土地と建物のどちらも不動産価格の2%です。売買の場合も原則は2%ですが、2021年までの期間限定で土地は1.5%、住宅は0.3%と優遇されています。相続は0.4%です。

不動産の価格は不動産取得税と同じく、固定資産課税の計算に用いる金額を使います。

なぜ贈与以外がこのように優遇されているのかというと、売買においては不動産の取引を活発にするため、そして相続は必ずしも意図したものとは限らないためなのでしょう。

仮に1,500万円の住宅用地を親からもらった場合、3つの税金は次のように計算します(分かりやすくするため、相続税評価額と固定資産課税台帳上の価格は同じとします)。

・贈与税 上記の計算より366万円
・不動産取得税
  (1,500万円÷【住宅用地のため優遇措置を適用】2)×1.5%=11万2,500円
・登録免許税
   1,500万円×2%=30万円

この土地をもらった人は、合計で約407万円の納税が必要になるわけです。

不動産の贈与を受けたときの税金は高め

一定額以上の不動産をもらうと、贈与税、不動産取得税、登録免許税の3つがかかります。税率はいずれも相続税よりも高く、特に贈与税の負担は大きいものです。不動産の相続や贈与は計画的に考えましょう。(提供:相続MEMO

【オススメ記事 相続MEMO】
必ずしも相続する必要はない。相続放棄とは?
相続税。遺産を相続できるのはどんな人?どんな割合?
相続税対策としての贈与を上手に活用しよう
相続対策にも有効!等価交換のメリットとは
遺言書があったらどうなる??その効力と扱い時の注意とは