2015年に相続税法が改正されたことによって相続税を申告する世帯が増え、それに伴い相続税を負担する人数も増えています。
今後も少子高齢化が進み相続税に対する関心が高まっていくと考えられることも踏まえて、今回は最新の相続税の申告状況をお伝えするとともに、相続財産の内訳や金額の傾向等についてお伝えします。
130万人以上の方が被相続人となっている
2017年分の相続税の申告状況を見ると、亡くなった方(被相続人)は約134万人で前年よりも約2.5%増えています。そのうち相続税の申告が必要な被相続人は約11.2万人で、課税割合は8.3%となっています。この割合は2015年の相続税法改正以降同水準となっていて、改正前の4%台と比較して2倍程度に増えています。また相続税額の合計は約2兆円、被相続人一人あたり1,807万円の相続税がかかったことになります。
今後も被相続人の数は増え相続税額の合計も増えていくと想定されますが、税負担をする相続人の数も増えていくことになります。事前に遺産分割の方法はもちろん、納税資金の確保や税負担を軽減するための対策を考えておく必要があります。
現金や有価証券等で納税資金を確保できない場合には、自宅等の不動産を売却することになってしまい、その後の生活基盤を失う可能性もありますので、まずは税負担が生じるのか、その場合の負担額がどれくらいになるのか、納税資金の原資をどのように準備するのか、といった確認・対策をしておくことが大切です。
税制改正以降、相続財産の構成比に変化が
なお2015年の税制改正後と改正前では、相続財産の構成比率に変化が現れました。変化が顕著になったのは現金等と土地になります。現金等は改正前の2014年が全体の26.6%だったのに対して2015年は30.7%、2017年は31.7%となっています。これに対して土地は、2014年が41.5%・2015年が38.0%・2017年が36.5%となっています。
相続財産の金額で見ても最新の2017年では現金等が約5.2兆円に対して土地は約6兆円と、以前よりも金額の差が小さくなっています。土地の相続財産の金額自体は年々増えていますので、現金等の金額が大幅に増えているということが数字からも見て取れます。
こちらは、税制改正によって従来相続税がかからなかった世帯が現金等を保有している割合が多く、結果相続財産に占める割合も増えたと考えることもできます。このような世帯については、生命保険の非課税限度額の活用等、課税対象となる財産を少なくすることで税負担を軽減できる可能性があります。
また、保有している現金の額によっては生前贈与の活用や不動産の購入等を検討することで、次世代により多くの財産を遺すことができます。
不動産が占める割合は依然として大きい
現金等の割合が増えているものの、依然として相続財産に占める土地・家屋を合わせた不動産の割合や金額は大きくなっています。不動産と現金を比較した場合、相続税の評価額の点から考えると、現金を不動産に換えたほうが評価額が下がり、税負担も軽減できる効果がありますが、それぞれの家庭の事情等によって必ずしも不動産に換えられるとは限りません。
また、現金は遺産分割の面では分割しやすい財産となり、不動産と比較して財産を巡って揉め事が起きる可能性は低くなります。不動産については所有している数や評価額と合わせて、複数の相続人がいる場合には遺産分割の方法も事前に考慮しておかないと、相続後に相続人間で争いが発生する可能性があります。このように相続財産として考えた場合、現金・不動産それぞれにメリット・デメリットがありますので、遺産分割・納税資金・税負担軽減の3つを考慮した上で相続対策を考える必要があります。
今回は相続税の申告状況についてお伝えしましたが、財産の額や割合をご自身やご家族の状況に当てはめて考えていただき、今後の相続対策に役立てていただければ幸いです。(提供:相続MEMO)
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