過去に提出した相続税の申告書について、その内容を再確認した上で、改めて申告書を提出することで、支払った相続税の一部が還付される可能性があります。「更正の請求」と呼ばれている手続きとなりますが、今回はこの更正の請求の概要やどのような場合に還付される可能性があるのか、等についてお伝えします。

更正の請求の概要

相続税,更正の請求
(画像=Syda Productions/Shutterstock.com)

毎年公表される相続税の課税・申告状況には、相続財産の内訳や相続税の総額、被相続人や相続人の人数等、様々な金額や数値が掲載されています。その中に相続税の「還付税額と相続人の数」も記載されています。2017年度は総額約13億円・622人の相続人の方が相続税の還付を受けています。

相続税の還付は「更正の請求」を行うことで可能となりますが、その請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内となっています。あらためて相続税の申告書を提出すると税務署でその内容が確認・検討され、納め過ぎの税金があると認められた場合には税金が還付されます。

請求をしようと考えた場合には、まずは先に提出をした申告書の内容を確認することが必要となります。多くの場合は税理士等の専門家に依頼をして、還付を受けられるかどうかの判断を仰いだうえで請求をするかどうかを決めることになります。

また「セカンドオピニオン」の意味合いも含めて、先に申告を依頼した税理士等とは違う専門家に依頼をするのが一般的です。

どのような場合に請求をしたほうが良いのか

更正の請求は、先の申告の際に相続財産の評価額を、本来よりも多く申告した可能性のある財産があり、本来の評価額で再計算をすることで相続税額が少なくなる場合に行います。相続財産のうち、現金・有価証券等については評価額を多く申告する可能性はあまり高くありません。

相続財産の中で本来よりも評価額が多くなっているもの、逆を言えば先の申告よりも評価額を下げられる可能性があるものとしては不動産、特に土地となります。

土地は相続財産に占める割合が高くなるケースもあり、その分、相続財産全体の評価額が多くなり、相続税も多く払っている場合に請求が行われるケースが多くなっています。土地についての評価方法を見直すことによって相続税評価額を下げ、本来支払うべき相続税額も下げ、先に支払った相続税との差額の還付請求を行うという流れになります。

具体的には、自宅・アパート等の「利用区分」が適正に区分されているか、また、その地積の算出方法は適正かを確認する、不整形な土地について再調査・再評価を行い減額割合を見直す、セットバックが必要な土地かを確認する、無道路地に該当する土地かを確認する、等、調査の項目は多岐にわたります。被相続人が所有していた土地が多いほど調査の項目は多くなりますが、その分、新しい評価額で申告書を提出できる可能性も高くなります。

請求が認められれば税金の還付が

調査を依頼し、申告書の提出をした後、税務署が申告書の内容の確認・審査を行います。その後、各相続人へ更正決定の「通知書」が届くまでに3~6か月程度かかります。更正の請求が認められれば多く収めた税金との差額が各相続人に還付されます。

ただし、土地の評価については専門家によって解釈が違う場合があり、その内容が税務署に認められない場合がありますので、評価の難しい土地については申告書の提出前に過去の判例や税務署の見解等を確認した上で、提出をするかどうかの判断を専門家に仰ぐ必要があります。

とはいえ、明らかに評価の方法が間違っている場合には本来払う必要のない税金を納めていることになりますので、特に被相続人の財産に多くの土地があった場合や、相続財産に占める土地の評価額の割合が大きかった場合には、あらためて専門家に調査を依頼してみてはいかがでしょうか。(提供:相続MEMO


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