夫婦関係に終わりを告げるとともに、住み慣れた家にもさようなら。家族のためにがんばって会社勤めをし、コツコツとローンを返済して手に入れたマイホームが、離婚による財産分与で相手のものに。悔しくてたまらないという心境に追い討ちをかけるように、弁護士が言います。「確定申告をして税金を払う必要があります。」なぜこのような事態になったのでしょうか?

離婚時に自宅を分与した場合、譲渡所得税がかかる可能性がある

離婚,税金,財産分与
(画像=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

次のような場面を想定してください。ある事情で離婚し、自分の名義で買った自宅には相手が住み続けることになりました。もちろんこの土地と建物の名義は相手のものになります。

自宅を失うだけでも大きな痛手です。しかし場合によっては所得税を納めなければなりません。

所得税は文字どおり、何らかの形で所得が発生したときに納税義務が生じます。一見すると上記の場面では得たものが何もないのに、なぜ納めなければならないのでしょうか?

不動産を売ったとき、その金額が買ったときの金額よりも高かった場合、その差額には所得税がかかります。「不動産を売って儲けたのだから、そこに税金がかかる」わけです。この税金計算上の利益を「譲渡所得」と言います。

例えば3,000万円で買った自宅を4,000万円で売ったとき、差額の1,000万円は譲渡所得となり、原則的として税金が課されます。

離婚による財産分与の場合も、売却と同じように考えます。3,000万円で買った自宅を相手に分与したとき、時価が4,000万円に上がっていたとします。この場合も先ほどと同じように、差額の1,000万円が譲渡所得となり、納税の義務が生じるのです。

離婚の財産分与も売却も、税金計算上は同じように取り扱われます。そのため売却時の自宅の価値が購入時よりも上がっていたら、分与する側が所得税を納めることになるのです。

マイホーム特例を使うなら離婚後に

原則としては上記のように、納税義務が発生します。ただし自宅の売買は税制上の優遇措置があるため、活用すれば税金を支払わなくて済む場合もあります。そのためにはあるポイントが外せません。

優遇措置とは「居住用財産(マイホーム)を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。譲渡所得から3,000万円を差し引くことができるので、大幅な税金の節減になります。地価が高騰するなどしてよほど時価が大きくならない限り、分与する際に所得税がかかることはないでしょう。

この特例にはいくつかの要件がありますが、そのうちのひとつが「親子や夫婦など特別な関係でないこと」です。つまり夫婦間の贈与・売買では使うことができません。

そのため譲渡所得3,000万円の特別控除を使うためには、正式に離婚してから名義を変更する必要があるのです。これが先ほどお伝えした、外せない「あるポイント」です。

贈与税の配偶者特例を使うなら離婚前に

名義の変更が離婚の前か後かによって税金の取り扱いが変わるのは、分与する側だけではありません。分与されるほうの贈与税にも関係します。

自宅の名義変更は夫婦間であっても、原則的に不動産の時価に対して贈与税がかかります。しかし20年以上連れ添った夫婦は、時価から最高2,000万円まで差し引くことができるのです(この他にもさまざまな用件があります)。

ただ、離婚による財産分与には基本的に贈与税がかかりません。かかるのは「分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合」と「離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合」です。

つまりハタから見て多過ぎない額であれば、離婚の財産分与について贈与税はかからないと考えられます。

離婚にはさまざまな理由があるでしょう。上記の配偶者特例を使うのは限られたパターンのはずです。

自宅の名義変更が離婚の前か後かでかかる税金が変わってくる

離婚による財産分与で不動産を手放すと、売却したときと同様に譲渡所得が発生し、そこに税金がかかります。自宅の場合は特例によって3,000万円までかからなくすることはできるのですが、その条件として離婚後に名義変更する必要があります。(提供:相続MEMO


【オススメ記事 相続MEMO】
必ずしも相続する必要はない。相続放棄とは?
相続税。遺産を相続できるのはどんな人?どんな割合?
相続税対策としての贈与を上手に活用しよう
相続対策にも有効!等価交換のメリットとは
遺言書があったらどうなる??その効力と扱い時の注意とは