引っ越したいけど自宅を手放したくはない。不動産の名義は自分のものにしておきたいけど、税金など維持費の負担が重い。このような人のためにあるのが「マイホーム借上げ制度」です。

JTIの「マイホーム借上げ制度」とは

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(画像=nednapa/Shutterstock.com)

マイホーム借上げ制度とは、一言で言うと自宅専用のサブリース契約です。50歳以上の人が自宅を一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)に貸し、賃料収入を得ることができます。

終のすみかと決めた我が家も、さまざまな事情によって住めなくなることがあります。例えば、転勤や介護などの理由で引っ越したり、自分自身が有料介護老人ホームやサービス付き高齢者住宅などに転居したり。ただの空き家にしておくと、固定資産税などの税金がかかったり、建物が傷みやすくなったりと、経済的にも自宅にとってもよくないことが起こりがちです。特に住宅ローンを払っている人は、住居費の二重払いになってしまいます。

このようなときに多くの所有者の頭に浮かぶのが、自宅を売却することです。しかし資産形成のつもりで買った不動産を簡単に手放したくはない、先祖代々の思い入れのある土地から離れたくない、などの理由で難しいこともあります。

この問題を解決するため、定期借家契約に基づき空いている自宅を賃貸に出せるサービスが「リロケーション」です。所有者に毎月家賃が入るため、維持費や住宅ローンがまかなえ、名義もそのままでいられるというメリットがあります。

サービスの特徴

マイホーム借上げ制度はリロケーション・サービスのひとつで、転貸契約、いわゆるサブリース方式をとります。物件が入居者を募集できる状態であれば、たとえ空室であっても賃料が支払われます。

一般的なサブリースでは所有者が受け取る賃料を業者が一方的に下げ、問題となることがあります。しかしマイホーム借上げ制度の「最低家賃保証型」は契約期間中同じ賃料が支払われるので、安定した収入になります。

この制度ならではの特徴は、賃料収入を担保にお金を借りられることです。引っ越し先のローンや一時金にあてられるほか、契約内容によっては自由な用途に使えるフリーローンも利用できます。自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージローン」のようなものと考えてください。

サブリース業者の中には苦しい経営をしているところもありますが、この制度には国が保証基金を設定しており、万が一のときにも賃料の支払いを受けることができます。

契約方式にはあらかじめ期間を決めておく期間指定型と、所有者が亡くなるまで契約が続く終身型があります。後者の場合でも、入居者との定期借家契約が満了すれば、中途解約して自宅に戻ることが可能です。

貸出の条件

マイホーム借上げ制度はシニア向けの制度となっているため、基本的に対象とされる所有者は50歳以上であることが条件です。

ただし50歳未満であっても利用できる場合があります。経済的な事情で住宅ローンの返済が難しくなったときに使える「再起支援特例」や、3年以上の海外転勤の人に向けた「海外転勤者向け特例」、空き家を相続したものの自分では使わない人が対象となる「相続空き家特例」などがその例です。

物件は一戸建てかマンションかを問いません。長屋建ても対象となります。

契約にあたって、JTIが指定する業者の建物診断を受けなければなりません。水回りなどの劣化診断のほか、旧耐震基準(1981年以前)の建物の場合は耐震診断も必要です。これらの費用は所有者の負担となります。

相続した実家の空き家対策にも

マイホーム借上げ制度は、主に50歳以上の所有者を対象にした、自宅を賃貸に出す制度です。転貸契約によって安定した賃料収入が得られ、国が保証する安心感もあります。親の介護や所有者本人の転居による自宅の活用のほか、相続した実家の空き家対策にも利用できます。空いた自宅の利活用に困っている人は検討してみてはいかがでしょうか。(提供:相続MEMO


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