(本記事は、金村秀一氏の著書『生産性が3倍になる!右肩上がりの会社が必ずやっている現場ルール』=自由国民社出版、2019年3月30日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
成果主義はただの「放任」
「成果さえ出せば、プロセスは気にしない。数字を取るためなら何をしてもいい」と言う上司がいます。いわゆる「成果主義」「結果主義」と言われる人たちです。
それは「自分で考えて、結果を出しなさい」と言うことでもあります。そのように任せることは、部下の裁量を重視して自由にやらせる、懐の広い、優しい上司の見本のように見えるかもしれません。
けれど、実際には、それはただの「放任」にすぎません。そして、それを行なう上司は単に「手抜き」をしているだけだと私は思います。
なぜなら、部下の自主性に任せるのは、かなりレベルの高い方法だからです。
社会人には「レベル」があり、それに基づいた指導の方法があります。
レベル1は、新入社員から1、2年目のヒラ社員グループ。レベル2が主任クラス、レベル3が課長クラス、レベル4がマネージャークラスと続きます。年数と経験を積むうちにステージも徐々に上がっていきます。
このうち、「成果主義」を取っていいのは、ある程度の経験と成功体験を積んだ「レベル4」のマネージャークラス以降です。ゴールだけをセットしてプロセスは自由に。そのほうがお互いにストレスもありませんし、可能性が広がります。
けれど、そこまでのレベルに達していない人たちに対しては、もっと具体的な指示が必要です。「何を、何日までに、上司に戻せるか?」までをきちんと指導する必要があるのです。
私は、社会人を「年齢」ではなく「社会人何年目か?」で見ています。たとえば、社会人になったばかりの23歳なら、社会人年齢は「1歳」、24歳の人は社会人年齢「2歳」です。私は今44歳ですが、社会人年齢「23歳」です。年齢を見るといい歳ですが、「社会人年齢」でいけば、まだまだ若造ですね(笑)
子育てに重ねて考えていただきたいのですが、1歳や2歳の子どもにいきなり「勝手にやってごらんなさい」と言いますか? まずは、自分がお手本となってやって見せたり、手取り足取り教えてあげたりするのではないでしょうか。仕事もそれと同じように段階を踏むことが大切です。
成果主義という名の放任は、会社の成長を妨げる要因のひとつでもあります。私の会社が成長し続けている理由のひとつは、この放任主義をやめたことにあります。「誰が何をするべきか?」をしっかりと教え、入社すぐの新人でもできるような体制づくりをしたからと言えるでしょう。
「真剣」にはなっても「深刻」にはなるな
成功し続ける会社には、ある共通した「秘訣」があります。
それは、「社長や上司が元気で明るい」ということです。
社長や上司は「真剣」に考えてもいいですが、「深刻」には決してなってはいけません。
成功している上司は、「真剣」に考えています。 うまくいっていない上司は、「深刻」に考えがちです。
「真剣」と「深刻」。この言葉には大きな違いがあります。
「深刻」というのは、「感情」に任せるとも言えます。人間は、何か重大な物事が起こると、種を保存しようとする機能が働いて、本能的にネガティブなことを考え最悪の事態を回避しようとするところがあります。それは「守りに入る」とも言い換えられます。「守り=失敗は許されない」から、いきおい後ろ向きになります。その結果、表情も硬くなり、暗くなってしまいます。
一方、「真剣」というのは、意志の力で考えているところがあります。起こったことを自分の力でなんとかしたい。ではどうすればいいだろう?と前向きに力が作用します。未来への対策を講じて動くので、結果として明るく、ワクワクする気持ちにもなっていきます。
真面目な方は特に深刻になりやすい傾向にあります。何か事が起こると、会社がつぶれないようにと深刻に考える。そのうち心がすり減ってしまい、心を病んでしまうこともあるでしょう。「深刻」に考えるのをやめて、「真剣」に考えるようにしたところ、会社の業績が上がっただけでなく、なんと「うつ病」まで治ってしまったという方もいらっしゃいます。
会社についての相談を受けたとき、私が「それについてはこうやったほうがいいのではないですか?」と前向きな意見を言うと、「でも、うまくいなかったら……」とまず尻込みをする方がいらっしゃいます。まさに「深刻」に考えている状態です。
そこで、私は「前向きなことをやってうまくいかなくても、今のまま続けていても、どちらにしても会社はダメになる」とお伝えします。すると、多くの方がしばらく考えたのちに、「そうですよね。どっちみちダメになるのならば、やってみてもいいですよね」という気持ちに思い至るようです。「深刻」から「真剣」になった瞬間です。それで実際に事を起こすと、たいていの場合、うまくいきます。特にこれまで守りに徹していた方が、急に攻めに転じると成功する確率も高いのです。
こうして、上司が元気になると、会社全体が元気に明るくなります。人間も動物ですから、明るいところに集まります。
会社が明るくなると、社員は定着するので離職率は低くなります。さらに人が集まるので、その中からいい人材を採用することができるようになります。
私の主宰する経営塾では、「上司の元気は会社の元気」をうたい、元気になるプログラムを実践しています。参加してそこでエネルギーを高めて会社に戻っていくというパターンです。
何があっても感情に流されず、できる方法を考える。
できる上司は、メンタルをきちんとコントロールする力があります。どうか、深刻にならずに真剣に考える習慣をつけてください。
部下に「イエス」と言わせる技術
たとえば、ある仕事を部下のAさんに依頼したいと考えています。Aさんは今、別の仕事をいくつか抱えています。さらに頼もうと思っている仕事は未経験でハードルが少し高いものです。
「Aさん、この仕事、お願いできるかな?」と言ったところ、案の定、Aさんは「すみません、今、仕事をいくつか抱えているので、ちょっと難しいです」と断りを入れてきました。
そのような場合、あなたならどう答えますか?
私なら、「知っているよ」と言います。
「知ってる知ってる。できなくて当然だと思うのだけれど、やってほしいんだ。できそう?」とお願いします。もしくは、「知ってる知ってる。その上でね、お願いしているんだ。たぶんこの会社で僕以外にこの仕事ができるのは、あなたしかいないと思うから」とお願いします。
部下は「中途半端に引き受けて、きちんとできなかったらどうしよう。自分の責任問題につながるのではないか」と心配しているところがあります。そこで、ハードルを下げてあげるのです。できなくて当たり前だし、もしできなかったら頼んだマネージャーのせい。もしできたら、やった部下の手柄。これは部下にとって決して悪い条件ではありませんよね。
部下にはあまりプレッシャーを与えすぎず、少しでも「やってみようかな」という気持ちになってもらえることが大切です。
先の、「受け止めない、上手にかわす」ということにもつながりますが、一度断られても、その言葉を真向からとらえないことです。いったんかわして、再度チャレンジです。
私なら最後に「イエスかハイで答えてくれればいいから」と言います。ダメ押しのひと言です。
根回し、談合、買収……上等!
社内での風通しをよくするために、うまく事を運ばせるためには、社内での根回しや談合、買収はおおいにやるべきだと思います。といっても、ニュースやドラマで見られるようなドロドロしたものではありません。
私は、何かお願いしたいことがあるとき、コンビニでスイーツを1個買ってきます。そして、部下のところに行って、「ありがとう」と言います。「何がですか?」と言われたら、「まあ、とりあえず食べてよ」と、持ってきたスイーツを差し出します。その部下がスイーツを一口食べたら、「今、スイーツ、食べたね」とほほ笑みながら、「実は……これをお願いしたいんだ」とお願い事を切り出します。部下は、「これ、毒まんじゅうですね」と言いながらも、受けてくれます。「お、正解!」と伝えて、取引は成立です。
もし、部下が「私はスイーツは食べません」と突き返してきた場合には?
「あ、おせんべいがよかった? それともコーヒーだったか」と切り返します。もし「そうではありません。モノじゃないんです」と言われたら、「量が足りなかった?」と聞きます。たいていの場合、部下が折れて、「はい、わかりました」と半分笑いながら受けてくれます。
ここまでやって、断られたことはゼロです。勝率100%の方法と言えるでしょう。
実は私は非常に頑固なところがあって、「この仕事はこの人にやってほしい」と思ったら絶対に曲げません。たとえ相手に断られたとしても、「じゃあ、別の人にお願いしようか」とは考えず、どうしたら、この仕事をこの人に受けてもらえるか?の手数を模索します。手を変え、品を変え、なんとかして相手に引き受けてくれるように仕向けるのです。
この方法を取ると、相手は怒ることもなく、むしろ笑いながら仕事を引き受けてくれます。
こういった軽い根回しや談合、買収は、組織を円滑に回すうえでおすすめです。
アメリカに行ったときに気づいたのですが、外国ではこれに似たようなことを実に自然に行なっています。ホームパーティを頻繁に催し、飲みながらコミュニケーションを深め、そこでさりげなく根回ししているのです。ほかにはパワーランチなどをうまく使いながら、「今度、これをやるからお願いしたい」と事前に話をつけています。
組織をうまくまとめる秘訣は、手数であり根回しです。
飲みニケーションをおおいに活用せよ
最近の20代、30代の人たちは、職場の同僚や上司たちと飲みにいかないそうですね。飲み会など非生産的で時代遅れだと考える方もいるでしょう。でも、それはもったいないことだと私は感じています。飲みニケーションをおおいに活用しましょう。
お酒の席のいいところは、役職の上下に関係なく、普段話しづらいことを言い合えることにあります。いつもは強いことを言っている上司がふと弱音をこぼしたりして、「ああ、上司もけっこう悪戦苦闘しているんだな」ということに気づいてもらえるチャンスでもあるのです。
ただし、上司としてひとつだけ注意していただきたいことがあります。
それは、「話し過ぎない」ということです。つい、あれもこれも言いたくなり、お酒の力も借りてくどくどと説教しがちですが、それでは煙たがられるだけです。
話し過ぎを防止するいい方法があります。言いたいことを話す際に「タイマー」を使うのです。たとえば、話す前にタイマーを3分後に鳴るようセットします。終了音が鳴ったときに、ちょうど言いたいことをすべて言い切り、「以上です!」という言葉とともにぐびっとお酒を飲めたら、もう完璧です。
そのほか、囲碁の対局で使用する時計と同じ仕組みの「お手軽対局時計」というアプリがあります。お互いに決まった持ち時間を設定し、話した分だけ時間が減っていく仕組みになっています。ふたりで話をする場合、これを活用すれば、片方の人だけ話過ぎるということは防げるでしょう。
ところで、私はもっぱら、飲み会では聞き役に徹することにしています。なぜなら、お酒の場で真面目な話をしても、きちんと聞いている部下は残念ながらほとんどいないからです。あるとき、ひとりで話をしているのがなんだかむなしくなりました。以来、部下の意見を仕入れる場と考えています。
お酒の席のいいところのもうひとつは、みんなとコミュニケーションを取ることで翌日からの活力となる「ガソリン」の補給ができることです。「明日から頑張るか!」という気持ちになれるのです。
かといって、部下に過度な期待をするのは控えましょう。翌日からいきなり10点満点になることはまずありません。前日まで3点だったら、次の日から4点になればしめたものです。つい、上司は早く満点を取れ!と気持ちが急いてしまいがちですが、それは性急というものです。まずは現状維持以上を目指しましょう。もし、前日まで遅刻ばかりだった人が遅刻しなくなったら、それだけでもすごい進歩です。「当たり前のことができただけじゃないか」と思うかもしれませんが、「遅刻を克服したのだから天才だ!」とほめてあげましょう。
飲みに行くことに抵抗がある場合には、お茶する時間を取るだけでもいいでしょう。ざっくばらんに他愛のないことを話す時間は極力取ることが大切です。
金村秀一
ウィルウェイグループ代表取締役社長。成功し続ける社長のための経営塾『100年塾』塾長。1973年東京生まれ。東京国際大学卒。1995年弱冠21歳の時に創業。企業のWEB制作や顧客管理、マーケティングサポート、飲食業界、人材派遣業界など会社の成長ステージに合わせて事業を展開し、創業社長として今期25年目を迎える。経営計画書と環境整備を主軸とした経営により、労働生産性は中小企業の3倍と高い生産性を実現。少数精鋭の強みを生かしながら、過去最高益を更新し続けている。これまで四半世紀の経営経験から得たノウハウと、右肩上がりの高収益企業を創造する経営計画書による経営の仕組みを、社員30人未満の小さな会社の社長を対象とした経営塾『100年塾』で2012年から主宰。全国各地であらゆる業種の組織改善・業務向上の指導を行う。現役社長が直接指導する経営手法は多くの社長たちから反響を呼び、お客様満足度は92・6%、全国各地での講演・セミナー開催は年間90回を超える。主な著書に『赤字社員だらけでも営業利益20%をたたき出した社長の経営ノート』(角川中経出版)、『社員29人以下の会社を強くする50の習慣』(明日香出版)など、累計3万部を超える。
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