結果の概要:5月の個人所得、消費支出ともに堅調な伸びが持続

米国,個人所得・消費支出
(画像=PIXTA)

6月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は5月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.5%(前月:+0.5%)となり、2ヵ月連続で堅調な伸びを維持、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%も上回った(図表1)。個人消費支出は、前月比+0.4%(前月改定値:+0.6%)と堅調な伸びとなったものの、+0.3%から大幅に上方修正された前月、市場予想の+0.5%を下回った。一方、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.2%(前月改定値:+0.2%)と横這いから上方修正された前月に一致、市場予想(+0.4%)は下回った(図表5)。貯蓄率(1)は6.1%(前月:6.1%)と前月から横這いとなった。

価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:+0.3%)と前月を下回った一方、市場予想(+0.2%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.2%(前月:+0.2%)と、こちらは前月、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.5%(前月改定値:+1.6%)と+1.5%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想(+1.5%)には一致した。コア指数は+1.6%(前月:+1.6%)と、こちらは前月に一致した一方、市場予想(+1.5%)を上回った(図表7)。

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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

結果の評価:前月に続き堅調な消費の伸びを確認、4-6月期個人消費は加速する見込み

名目個人消費(前月比)は4月の+0.6%に続き、5月も+0.4%と前月に続いて消費が堅調であることが確認された(図表1)。また、実質ベースでも、非常に高い伸びとなった3月の+0.8%から2ヵ月連続で前月比+0.2%のペースを維持した。このため、実質GDPにおける個人消費は1-3月期が前期比年率+0.9%と低調な伸びに留まったが、4-6月期は同3%台後半に加速するペースとなっている。

米国,個人所得・消費支出
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先日発表された6月のコンファレンスボードの消費者信頼感指数が大幅な悪化を示していたことは懸念されるが、株式市場が堅調となっているほか、後述するように6月の実質可処分所得が前月比+0.3%と堅調な伸びを維持しており、個人消費は足元で堅調を維持しているとみられる。さらに、6月29日の米中首脳会談で当面は中国からの輸入品に対する追加関税が見送られたことも消費の追い風となろう。

物価は(前年同月比)は、総合指数が18年11月以降、コア指数も19年1月以降はFRBが物価目標とする2%を下回る状況が持続している。もっとも、物価の基調を示すコア指数は4月から2ヵ月連続で+1.6%と3月の+1.5%を底に反発がみられており、足元でインフレ率の低下には歯止めがかかっている。

所得動向:利息配当収入が大幅に増加

5月の個人所得(前月比)の内訳をみると、賃金・給与が+0.2%(前月:+0.3%)と18年11月(同横這い)以来の低い伸びとなった一方、利息配当収入が+1.6%(前月:+1.6%)と大幅な伸びとなった前月並みの水準を維持し、所得を押上げた(図表2)。また、非農業部門の所得の伸びを背景に自営業者所得が+0.8%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速した。

一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、5月が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みの高い伸びを維持した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースも+0.3%(前月:+0.1)と前月から伸びが加速した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

消費動向:非耐久財消費が減少

5月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.5%(前月:+0.8%)、サービス消費も+0.4%(前月:+0.5%)と堅調ながら、いずれも前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費では、耐久財が+1.7%(前月:▲0.1%)と前月から大幅なプラスに転じたものの、非耐久財が▲0.1%(前月:+1.2%)と前月からマイナスに転じ、財消費の足を引っ張った。

耐久財では、家具・家電が+0.5%(前月:+0.6%)と前月から小幅ながら伸びが鈍化した一方、娯楽財・スポーツカーが+1.0%(前月:▲0.2%)、自動車・自動車部品が+3.3%(前月:▲0.6%)と前月から大幅なプラスに転じた。

一方、非耐久財では衣料・靴が+0.3%(前月:+0.4%)、食料・飲料が横這い(前月:+0.3%)と前月から伸びが鈍化したほか、ガソリン・エネルギーが▲3.2%(前月:+8.8%)と高い伸びとなった前月の反動もあってマイナスに転じた。

サービス消費は、医療が+0.5%(前月:+0.4%)、外食・宿泊が+0.8%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速した一方、住宅・公共料金が+0.4%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化したほか、娯楽サービスが▲0.5%(前月:+0.5%)と前月からマイナスに転じた。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

価格指数:前月比では、エネルギー価格が4ヵ月ぶりに物価を押下げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲0.6%(前月:+2.9%)と4ヵ月ぶりに物価を押下げた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.3%(前月:▲0.3%)と、こちらは18年10月(▲0.1%)以来のマイナスとなった前月からプラスに転じ物価を押上げた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+0.1%(前月:+1.7%)と3ヵ月連続でプラスとなったものの、プラス幅は前月から大幅に縮小した(図表7)。食料品価格指数は+1.3%(前月:+0.8%)と17年7月以来23ヵ月連続のプラスとなった。

米国,個人所得・消費支出
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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